耳の機能について

耳の機能は音を感じる(聴覚)とバランスを感じる(平衡感覚)があります。
音は、音の波(空気の振動)として、外耳道から入り鼓膜・耳小骨(中耳)を振動させ、蝸牛(カタツムリ型の器官)で電気信号に変換され、脳へと伝えられ音として感じることができます。この経路のいずれかが悪くなると、耳の症状を生じます。
先程述べたように、耳(内耳)には三半規管・卵形嚢・球形嚢と呼ばれるバランスを感じる機能もあります。
耳の機能について

特にこれらの症状がある方は注意です。近くの耳鼻科を受診してください。

  • 突然耳が聞こえなくなった
  • 聞こえが悪くなるのとほぼ同時に、めまいや耳鳴りが出てきた
  • 人の声が聞き取りにくい

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耳の詰まり感(耳閉感)

耳閉感は「じへいかん」と読みます。人によって表現の仕方は様々ですが、「耳の詰まった感じ」「水が入った感じ」「塞がっている感じ」「トンネルや飛行機に乗った時のような感じ」など表現されます。

主に考えられる疾患

外耳炎、耳垢栓塞/外耳道異物、中耳炎、難聴、メニエール病、突発性難聴、耳管機能不全、鼻咽腔腫瘍、顎関節症など

耳の痛み(耳痛)

耳の知覚神経は主に三叉神経や迷走神経であり、これらは耳のみならず副鼻腔、歯、顎関節、咽頭にも分布しています。したがって、耳以外が原因でも耳の痛みとして感じることがあります(非耳性耳痛)。

主に考えられる疾患

外耳炎、中耳炎、耳性帯状疱疹、外耳道異物、リンパ節炎、扁桃炎(扁桃周囲膿瘍)、咽頭炎、虫歯、顎関節症など

耳の痒み

外耳道の皮膚が原因となっていることが多いです。

主に考えられる疾患

外耳炎、アレルギーなど

耳だれ(耳漏)

外耳道から排泄されるものの総称になります。

主に考えられる疾患

外耳炎、中耳炎など

聞こえが悪い(難聴)

難聴には、外耳〜中耳に原因がある伝音難聴と、内耳から脳側に原因がある感音難聴に分けられます。発症の様式(急性・慢性)、随伴症状などから病態を把握し、それぞれに応じた治療を行っていきます。

主に考えられる疾患

難聴(突発性難聴、加齢性難聴など)、中耳炎(急性中耳炎など)

耳鳴り

耳鳴りは、大きく自覚的耳鳴(体内に音源がないのに自覚する)と他覚的耳鳴(血管雑音や関節の音など本人以外でも聴取可能)に分けられます。一般的に自覚的耳鳴を耳鳴りと呼ばれています。
詳細は〜耳の疾患〜の「耳鳴り」を参照ください。

主に考えられる疾患

外耳炎、中耳炎、難聴、メニエール病など

めまい

一言に「めまい」と言っても、自分は動いてないのに天井や周囲がぐるぐる回転するように感じる回転性めまい、体がフワフワ浮いているような感じの浮動性めまいがあります。その他に、立ち上がったり、起き上がったりした時にクラッとするというようないわゆる立ちくらみもめまいと表現されることもあります。めまいにに加えて、激しい頭痛、嘔吐、嘔気、手足の痺れ感や力が入らない様子があれば、すぐに近くの脳神経外科/内科や救急病院を受診しましょう。

主に考えられる疾患

良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、難聴、脳血管障害、聴神経腫瘍

耳垢(みみあか)、耳掃除について

耳垢は、外耳道皮膚から剥がれ落ちたものや分泌腺からの分泌物、ホコリなどが混ざったもので、耳を守っていると考えられています。通常は自然に排泄されるため、頻回な耳掃除は必要ありません。
耳垢の種類として乾いた耳垢(乾性耳垢)とベタベタした耳垢(湿性耳垢)があり、分泌腺による影響が大きいと言われています。日本人の多くは乾性耳垢と言われており、耳掃除の必要性は低いです。しかし、外耳道の発達が不十分な子供、お年寄り、湿性耳垢の場合は耳垢が詰まりやすく、定期的な掃除が必要になることもあります。耳垢が詰まる(耳垢栓塞)と、難聴・耳閉感・耳鳴りを起こしますので、気軽に耳鼻科に受診して下さい。
乾燥していた耳垢が湿っぽくなった、持続的・断続的な痛みがあるなどの症状がある時は耳鼻科を受診してください。

外耳炎

耳の入り口から鼓膜までの間(外耳道)の炎症です。耳かきのしすぎ(これが多いです)や水が耳に入ったことがきっかけで炎症が起きることがあります。また、ウイルス・カビ(真菌)などが原因で外耳道炎が起きることもあります。
症状や所見次第では、定期的な処置や投薬治療が必要になることがあります。

中耳炎

中耳腔(鼓膜の奥)に起きる炎症のことですが、一言に中耳炎と言っても下記のように幾つもの種類があり治療法が異なる場合があります。

急性中耳炎

主に風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などがきっかけとなり、耳管(中耳と鼻を繋いでいる管)を通じて、鼻方向から中耳方向へ細菌やウイルスが入り込み、感染を起こすことで急性の炎症を起こしてしまいます(膿が溜まります)。お子さんに多い中耳炎になります。

よくある症状

発熱、耳の痛み、耳だれ、耳の閉塞感、難聴。
ただし、お子さんの場合は症状を訴えることが出来ないため、不機嫌になる、耳をよく触る、耳を触られるのを嫌がる、夜眠れない・夜泣きが普段よりひどいなどの“サイン”を出すことがあります。

治療

軽症の場合は、自然に改善することもあるため、痛み止めで経過をみることもあります。中等症以上であれば抗生剤治療が必要になります。お子さんの場合は、小児急性中耳炎ガイドラインに準じて治療を行います。
高熱や耳の痛みが強い場合は、症状改善のために鼓膜切開を行うことがあります。
しかし、鼓膜切開は治る速さに影響しないという報告もあり、臨床所見・症状などから慎重に判断します。
また、原因除去のため鼻処置や咽頭処置などを併用します。

予防

特にお子さんの中耳炎は鼻炎(鼻風邪)が原因となることが多いです。鼻炎予防のため、通常の感染対策(手洗い・うがい)に加え、鼻水がたまらないようにしてあげることが大切です。鼻かみが十分に出来ないお子さんは、拭いとってあげたり鼻吸引をしてあげて下さい。ご自宅で鼻吸引出来ない場合は、耳鼻科に受診して下さい。鼻水が続く場合は、鼻水を抑える飲み薬が有効なこともあります。また、肺炎球菌ワクチン接種でも急性中耳炎の予防や重症化予防になります。

滲出性中耳炎

中耳腔に滲出液が溜まった状態です。これは耳と鼻を繋いでいる管(耳管)の機能が悪くなっていることが原因ではないかと推測されています。大部分は風邪など急性中耳炎からの移行が多いですが、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、アデノイド肥大などが原因となっていることもあります。また、成人の滲出性中耳炎は鼻や上咽頭(鼻の突き当たりの部分)の腫瘍が原因となっていることがあります。

よくある症状

耳の閉塞感、難聴。
急性中耳炎と異なり痛みはありません。従って、症状をうまく表現できないお子さんは気付かれ難いことがあります。テレビのボリュームを大きくしたり、名前を呼んでも反応が鈍い、聞き返すことが多い、耳をよく気にしているなどの様子があれば耳鼻科へご相談ください。

治療

まずは原因の除去に努めます。喉や鼻が悪い場合は、内服や鼻処置、鼻洗浄、ネブライザー治療、耳管通気で喉や鼻の状態を良くしてあげ、水が抜けやすくしてあげます。2-3ヶ月これらの治療を行なっても改善が乏しい場合は、鼓膜切開やチューブ留置を行い、鼓膜側から滲出液を外に出るようにしてあげます。
お子さんの場合は、耳管機能が改善する小学校中〜高学年までの長期間の治療が必要になることがあります。
放置してしまったり、自己判断で治療を中断してしまい、滲出性中耳炎が長引いてしまった場合、難治性の中耳炎(真珠腫性中耳炎、癒着性中耳炎)になり、全身麻酔での手術が必要になることがあります。

予防

急性中耳炎や風邪からの移行が多いので、まずは急性中耳炎(急性中耳炎の予防参照)や風邪をひかないようにしましょう。また、鼻疾患(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎)が原因になっていることもありますので、鼻疾患があればこちらの治療も予防には重要になります。

慢性中耳炎

急性中耳炎や滲出性中耳炎などを繰り返したりして、中耳に慢性的な炎症が起き、鼓膜の穴が塞がらず残ってしまった状態です。鼓膜の穴が残ることで難聴になったり、耳だれが持続したりします。

よくある症状

難聴、耳だれ、急性中耳炎と異なり痛みはありません。

治療

耳漏がある場合は、耳処置や内服で加療します。炎症が治まった後も鼓膜の穴が残存している場合は、手術が必要になります。

癒着性中耳炎

滲出性中耳炎などで慢性の炎症が持続していたり、耳管の機能が不十分で中耳腔に空気が十分に入らず、鼓膜が中耳腔の壁にくっついてしまった状態です。

よくある症状

難聴

治療

耳管通気などを行いますが、滲出性中耳炎を併発していれば鼓膜チューブ留置を行うことがあります。治療抵抗性の場合や骨破壊を認める場合は手術が必要になります。

予防

急性中耳炎や滲出性中耳炎をしっかり治療することが大切です。ご自身で治療を中断せずに、耳鼻科医が完治と判断するまで定期的に受診しましょう。

真珠腫性中耳炎

鼓膜の一部が中耳に入り込み、そこに垢が溜まっていくことで生じる中耳炎です。垢の溜まった袋が「真珠」のように見えるためこのような名前がついています。また、「腫」とありますが腫瘍ではありません、しかし、進行すると周囲の骨を溶かして広がっていきます。

よくある症状

進行した場合は感染・骨破壊による難聴や耳漏を生じます、更に進行し、三半規管破壊によるめまい、顔面神経損傷よる顔面神経麻痺、髄膜炎や脳膿瘍などの重い合併症を引き起こすことがあります。

治療

手術が基本になります。耳の手術を積極的に行なっている総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

予防

真珠腫性中耳炎は、小さい頃に滲出性中耳炎や急性中耳炎を繰り返した人がなりやすいと言われています。滲出性中耳炎や急性中耳炎になってしまった場合は、中途半端に治療を中断せずに、しっかりと治すことが予防のために大切になります。

好酸球性中耳炎

他の中耳炎と異なり、好酸球(アレルギーに関連すると考えられている白血球の成分のうちの一つ)が中耳粘膜に浸潤し、炎症を引き起こし、膠(にかわ)状の滲出液が溜まる中耳炎です。気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎に合併することが多いですが、原因は現時点でもはっきりしていません。

よくある症状

耳閉感、耳鳴、難聴(喘息発作がひどいとに症状が増悪することがあります)

治療

鼓膜切開やチューブ留置を行い、滲出液を除去します。また、ステロイドの中耳内(鼓室内)への投与や全身投与(内服)が効果的であることががあります。しかし、再発することが非常に多い中耳炎ですので長期間にわたって受診をしていただく必要があります。更に、気管支喘息を併発していることも多いため、(呼吸器)内科とも連携し治療を行なっていくことが重要になります。

難聴

加齢性(老人性)難聴

加齢により内耳の部分の聞こえの神経細胞の機能低下などが起きること難聴が生じます。

よくある症状

両方の耳でほぼ同時に、高音域の聞こえの低下から始まることが多いです。「モスキート音」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは非常に高い周波数の音のことで、加齢と共に聞こえが悪くなります。
また、声は聞こえるが何を話しているか聞き分けにくくなります。
難聴により脳への音刺激が少なくなることで、逆に一部の脳の活動が増強することで耳鳴りがしてくると言われています。

治療

残念ながら、根本的な治療はありません。補聴器を用いて音を補ってあげることが大切になります。難聴で聞こえないため、静かな状態に慣れてしまっているため、補聴器使用開始時はうるさく感じますが、時間をかけて慣れていく必要があります。また、比較的軽症の時から使用することで、難聴の進行や認知症の予防につながる可能性があると期待されています。

予防

生活習慣を見直し、規則正しい生活を送りましょう。特に高血圧・糖尿病など生活習慣病がある人は、かかりつけ医でしっかりと治療してもらいましょう。また、大きな音も聞こえに影響するため大きな音を聞くことは控えましょう。

突発性難聴

突然発症する原因不明の難聴のことです。内耳の障害によるものですが、原因はウイルス、血液循環障害、ストレスなどさまざまなことが言われていますが、はっきりしていません。

よくある症状

突然の片方の難聴(稀に両側)、耳鳴り、耳閉感、めまい。

治療

ステロイドホルモン、循環改善薬、ビタミン剤の内服を行います。高度であれば入院点滴治療が必要になります。一般的に、治療後の聴力は1/3が元に戻り、1/3が改善程度、1/3が回復しないと言われており、発症早期に治療開始することが重要と言われています。

予防

ストレスが原因とも生活習慣病が危険因子になるとも言われています。規則正しい生活を心がけましょう。

騒音性難聴・音響外傷(音響性難聴)・ヘッドホン(イヤホン)難聴

騒音性難聴とは、工場の機械音などで比較的大きな音の環境に長期間さらされることで起きる難聴のことです。緩徐に進行することが多いです。聴力検査をすると比較的高い音(特に4000Hz)の聞こえから悪くなっていきます。
音響外傷(音響性難聴)とは、コンサートなど短期間に強大な音(120dB以上)を聞くことで起きる聞こえの障害のことです。大きな音を聞いた直後〜数時間後に発症します。ヘッドホン(イヤホン)難聴も大きな音を聞き続けることで生じ、音響外傷に近いと考えられています。

よくある症状

耳鳴り、難聴、耳閉感

治療

有効な治療法はない。音響外傷に関しては、突発性難聴に準じてステロイド治療をします。軽症で早期治療開始した場合、治ることがあります。

予防

根本的な治療法がないですが、予防により防ぎうる疾患ですので予防が非常に重要になります。騒音環境に行かないことが根本的な予防になりますが、職業上行かなければならないなどある場合は、耳栓など耳の保護具を使用するようにしましょう。
ヘッドホン(イヤホン)難聴に関しては、音量を下げる、1日1時間未満にする、連続して使用しないことが大切です。また、音量が小さくても聞こえるように、ノイズキャンセリングを使用する、耳穴にあったサイズのものを使用することも大切です。

心因性(機能性)難聴

精神的影響(ストレスなど)で起きる聞こえの障害のことです。子供に多く、女児の方に多い傾向にあります。

よくある症状

自覚症状はなく学校健診などで指摘されることが多いです。

治療

自然軽快することが多いです。改善が乏しい場合や心の問題が明らかである場合は、精神科によるカウンセリングが必要なこともあります。

耳硬化症

鼓膜の奥の中耳腔内に人の骨の中で最も小さな耳小骨という骨が3つ(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)あります。この骨が鼓膜からの音を増幅させて内耳へ伝えています。この中の内耳側のアブミ骨と呼ばれる骨がかたくなり、音を伝えることができなくなってくる進行性の病気です。両側性ですが、片側だけのことも多々あります。原因は不明ですが、日本人よりも欧米の白人に多く、女性に多い傾向にあります。妊娠や出産を契機に発症・悪化するため女性ホルモンの影響が考えられています。

よくある症状

(伝音性)難聴、耳鳴り

治療

手術で改善させることのできる難聴です。耳の手術を積極的に行なっている総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。また、補聴器で補うこともできるため、年齢や全身状態から手術を回避したい場合は、補聴器を使うこともあります。

外リンパ瘻(ろう)

めまいの外リンパ瘻(ろう)を参照ください。

耳鳴について

耳鳴は、「身体の内部以外に音源がないにも関わらず何らかの音の感覚が生じる異常な聴覚現象」と定義されています。耳鳴の有病率は約10-20%と言われており、その音は様々です(ジー、キーン、シーン、ピーなど)。実は耳鳴はありふれており、昔から無音や静かな時は「シーン」と表現してきたように非常にありふれたものです。通常は周囲の生活騒音でかき消されてしまって分からなくなっています。ところが、難聴になると生活騒音を感じにくくなり、脳も音を聞こうと感度が上がります、これらが合わさり結果的に耳鳴の音が相対的に大きく感じてしまいまうのです。また、ストレスや不眠など精神的要因からも耳鳴が悪化することもあります。耳鳴の方は、これらが複雑に絡み合い悪循環になってしまっている可能性があります。

耳鳴の原因

外耳炎、中耳炎、突発性難聴、加齢性難聴、メニエール病など。統計的に原因不明が最も多く、次いで加齢性難聴となっています。

当クリニックでの耳鳴の診察

問診票、耳の診察、聴力検査
頭部MRI(必要と判断した場合や希望された場合は近隣病院へ紹介いたします)

耳鳴の治療

環境の調整(静かな場所を避ける)、ビタミン剤・血流改善薬・安定剤などの薬物療法(内服で軽減することがあります、場合によっては月単位の内服)、音響療法(耳鳴に慣れる、長期間かかります)があります。
急に耳鳴りが出現し持続する方、明らかに片方だけの耳鳴りが持続する方は、突発性難聴や脳腫瘍が隠れていることがあるため、耳鼻科受診をお勧めします。

めまい

良性発作性頭位めまい症

内耳には三半規管・前庭と呼ばれるバランスのセンサーがあります。三半規管に耳石が落ち込むことで、頭を一定の方向に動かしたときにめまいが生じます。

よくある症状

頭を動かすと数秒から数分の発作性のめまいが生じます。めまいに伴って、嘔気・嘔吐を生じることがあります。聴力低下は認めません。
頭痛、ろれつが回らない、手足の感覚異常・運動異常は生じませんので、これらの症状がある場合は、早急に近くの脳神経外科・神経内科を受診してください。

治療

数週間で自然に良くなることがほとんどです。症状に応じて、めまい止め、吐き気どめなどの内服や点滴を行います。めまいが落ち着いてきたら、安静にしすぎずに積極的に動いたほうが良くなります。

予防

約20%前後の人に再発を認めます。半分以上は原因不明ですが、頭部打撲、骨粗鬆症、長期臥床・運動不足なども原因と言われていますので、頭部打撲を避ける、骨粗鬆症や運動不足/長期臥床にならないように生活習慣を整えることが大切です。また、枕を少し高くすると良い場合もあります。

メニエール病

何らかの原因で、内耳の中の内リンパ液が過剰になること(内リンパ水腫)で、聞こえ(蝸牛)と平衡機能(前庭・三半規管)が傷害されて発症すると言われています。

よくある症状

繰り返すぐるぐる回転するようなめまいと、めまいに伴って難聴(発症初期は低音中心)や耳鳴り・耳閉感を生じます。めまいのため嘔気・嘔吐を伴うこともあります。難聴や耳鳴りは、発症初期は数日から数週間で改善しますが、繰り返すうちに次第に治りにくくなり、次第に悪化していきます。

治療

急性期にはめまい止め、吐き気どめに加えて、聴力次第ではステロイド治療を行うこともあります。間欠期(症状が落ち着いている期間)には、利尿剤などの保存的治療を行います。症状が進行し、めまいがひどい場合は手術も選択肢になります。

予防

精神的・身体的ストレスが誘因として考えられているため、睡眠不足にならないようにしたり、適度な運動など生活習慣の改善に努めましょう。

外リンパ瘻(ろう)

内耳に外リンパ液を溜めている空間があります。様々な原因(交通事故などによる頭部外傷、手術、ダイビング、飛行機搭乗、重い物をもった時、いきみ、はなかみ、くしゃみなど)により、外リンパ液が漏れ出してしまうことで発症します。誘因が明らかでないものもあります。

よくある症状

発症時のポップ音(パチっというような音)、水の流れるような耳鳴り、変動しながら進行する難聴、耳閉感、めまい(耳の穴を塞ぐとめまいなどの症状が悪化することもあります)

治療

安静及び薬物治療のために入院が必要になります。安静で良くならない方や検査結果次第では手術の適応になることがあります。

予防

強くいきまない、息を止めないように注意しましょう。

前庭神経炎

内耳に前庭神経と呼ばれる平衡感覚をつかさどっている神経があります。原因ははっきりとはしていませんが、この神経がウイルス感染や血行傷害などで炎症を起こすことで発症すると言われています。

よくある症状

突然生じる強いめまい、吐き気・嘔吐です。症状は強く、安静にしていてもなかなか良くなりません。強いめまいは数日間は持続し、その後もふらつき感は数週間から数ヶ月持続します。しかし、通常は難聴・耳鳴りは伴いません。

治療

発症早期(急性期)は安静にし、めまいや吐き気を抑える薬物治療を行います。ひどい場合は、入院加療が必要になります。急性期を過ぎたあとは、自然回復を待ちますが、長引いたりする場合は回復(代償)を促すために、リハビリが必要になることもあります。

動揺病(乗り物酔い)

動揺病(乗り物酔い)は言葉通り、乗り物(車、バス、飛行機、船など)などの動いている環境で発症します。学童期から思春期に多く、逆に乳幼児や高齢者には少ない疾患です。

よくある症状

嘔気、嘔吐、めまい感、顔面蒼白、冷や汗など。通常は環境刺激がなくなって、数時間から1日程度で回復します。

治療

可能なら乗り物から降りる(環境刺激から離れる)、吐き気どめや抗ヒスタミン薬の内服

予防

動揺病の特徴的なことは慣れがあることです。普段から運動を心がけたり、乗り物に積極的に乗ったり、ブランコ・鉄棒・マット運動など複雑な動きをしてバランス感覚を高めるように心がけましょう。
乗り物に乗る前の予防:体調を整えましょう。睡眠不足、満腹や空腹、疲れすぎた状態で乗り物に乗らないようにしましょう。乗り物に乗る30分から1時間前に酔い止めを飲んで、更に「薬を飲んだからもう大丈夫」と安心させることも大切です。また、飴・チョコレート・ガムなどを食べ、血糖値を上げたり胃腸の動きを良くすることも効果的と言われており、更に「これを食べたから大丈夫」と暗示をかけることも大切です。
乗り物に乗っている最中の予防:頭が動きにくいように背もたれ・頭もたせにしっかりと寄りかかり、目を閉じるか遠くを眺めるようにしましょう。読書、ゲームやスマホを見たり下を向いた細い作業は控えましょう。また、強い匂いや高温多湿も気分が悪く原因になるため、香水などは控え、換気をこまめにするようにしましょう。バスでは、前輪と後輪の中間付近が最も揺れにくいので、一般的なバスでは前から4-5番目の席に座るようにしましょう。飛行機では通路側で主翼の前方1/4あたりの席が飛行機の重心に近く、揺れにくいのでその付近の座席を確保できるようにしましょう。船も同様に揺れが少ない中央付近の座席・部屋を取るように心がけましょう。

耳管機能不全

耳と鼻の間には、耳管と言われる管があり、その表面は小さな毛で覆われています。耳管は通常閉じていますが、嚥下運動で開くことで中耳内圧を調整するという機能があります。飛行機やトンネルで耳が詰まった感じがある時に飲み物などを飲んだ時に改善したことを経験したことがある人もいると思います。これが耳管の働きによるものです。もう一つの耳管の機能は、表面の毛の運動により中耳内の分泌物を鼻腔内へ排泄する機能です。耳管機能不全とはこの機能が悪くなるもので、耳管開放症と耳管狭窄症の2つがあります。

耳管開放症

通常閉じている耳管が開き放しになるものになります。主にダイエットなどによる急激な体重減少が原因となります。

よくある症状

自分の声が響いて聞こえる(自声強聴)、耳閉感、呼吸音が聞こえるなどがあり、耳鳴やふらつきを訴えられる方もいます。
また、鼻すすりで症状が改善することがあります(鼻すすり型耳管開放症)が、続発性に滲出性中耳炎や真珠腫性中耳炎などを引き起こすことがあります。鼻すすりはしないようにしましょう。

治療

体重が減ってしまったことが原因の場合は、しっかりとした栄養管理をしましょう。内服(ATP製剤や漢方)、点鼻、鼓膜へ小さなテープを貼るなどの治療を行います。

予防

急激な体重減少が原因となることが多いので、急な変化が起きないように注意しましょう。

耳管狭窄症

風邪、副鼻腔炎、逆流性食道炎などの炎症で耳管周囲が腫れて塞がれたり、アデノイド増殖、ポリープ、上咽頭腫瘍、鼻副鼻腔腫瘍で耳管が塞がれることが原因で生じます。

よくある症状

耳閉感、難聴。耳鳴や自分の声が響いて聞こえる(自声強聴)を自覚される方もいます。

治療

炎症が原因と考えられる場合は、そちらの治療を優先します。アデノイド増殖、ポリープや腫瘍が原因の場合は、手術が必要になります。その他に、耳管通気やチューブ留置を行うこともあります。

予防

炎症が原因となっていることが多いので、風邪・副鼻腔炎が長引かないようにしっかりと治療しましょう。