のど

口腔・咽喉頭の機能・構造について

鼻腔(はな)・口腔(くち)・咽喉頭(のど)は、呼吸・咀嚼(噛むこと)・嚥下(飲み込むこと)・発声・構音など非常に重要な機能を担っています。咽頭は、鼻腔の突き当たりにある上咽頭、口の突き当たりにある中咽頭、中咽頭の下で食道に入る前の部分である下咽頭の3つに分けられます。また、喉頭は下咽頭の前にあり、気管・肺の入り口に位置します。
口腔には、舌・歯肉・歯・口蓋・頬粘膜・唾液腺の出口が存在します。上咽頭にはアデノイド(咽頭扁桃)が存在し、中咽頭には軟口蓋・口蓋扁桃が存在します。
空気は、(1)鼻から上咽頭〜中咽頭のルートと、(2)口から中咽頭のルートがあり、中咽頭で合流後に下咽頭〜喉頭〜気管〜肺へと通っていきます。食べ物(飲み物)は、口で噛み砕かれ(咀嚼)て、口から中咽頭〜下咽頭〜食道へと流れていきます。つまり、喉頭・下咽頭は空気と食べ物を「振り分ける」役割があります。この振り分け機能が悪くなると誤嚥を引き起こします。
口腔咽頭には味細胞が存在し、食べたり飲んだりしたものの味覚に関係しています。
喉頭には声帯(成人では全長約2cm前後)があり、肺から送り出された空気が声帯をふるわせる(振動させる)ことで、音(声)を出します(発声と言います)。その振動しは1秒間に約100-1000回と言われています。口腔・咽頭では、声帯が震えて生じた音を響かせたりして音に特徴を与えて、音を作っていきます(構音と言います)。
このように、口腔・咽頭・喉頭は様々な機能をもち、異物の入り口でもあるため、非常に敏感・繊細にできているために、ちょっとした異常も「違和感」として感じてしまいます。これは、防御機構として非常に重要になります。
口腔・咽喉頭の機能・構造について
口腔・咽喉頭の機能・構造について
口腔・咽喉頭の機能・構造について

口・のどの症状から探す

口・のどの疾患から探す

喉(のど)が痛い

非常にありふれた症状の一つですね。逆にいうと、いろんな原因で出てくる症状なので、「喉が痛い」だけで一つの病気に限定させることは出来ませんので、必ず診察が必要になります。また、喉は様々なものが入ってくる入り口のため、刺激を受けやすい部分でもあり、外界から体を守るために敏感に繊細になっています。
喉が痛いということは、喉で何らかの炎症が起きていることが多いです。その炎症の原因として、ウイルス・細菌感染、空気の刺激(乾燥・熱い・寒い)、タバコ・お酒、胃酸の逆流、鼻からの炎症などが挙がります。

主に考えられる疾患

扁桃炎、咽頭炎、喉頭炎、喉頭蓋炎、口内炎、鼻炎、副鼻腔炎、逆流性食道炎、咽喉頭乾燥症、神経痛、腫瘍、咽頭異物、アレルギーなど

咳(せき)が出る

咳も非常にありふれた症状の一つですね。咳は、実は体の防御機構の一つで、迷走神経という神経を介して引き起こされます。喉頭の下は気管〜気管支〜肺へと繋がっていく部分ですが、肺に異物が入らないように、異物が喉頭・気管に入ると発作的に生じます。実は、耳の中にも迷走神経が支配している部分もあり、耳掃除をすると咳が出る人もいます。
異物以外でも咽喉頭や気管・気管支・肺の炎症でも咳は引き起こされます。ですから、耳鼻科のみならず呼吸器科や内科などとの連携が必要になってきます。

主に考えられる疾患

上気道炎、鼻炎・副鼻腔炎の流れ込み、アレルギー、気管支喘息、肺疾患、逆流性食道炎、咳喘息、心因性、内服薬(血圧の薬など)など

痰(たん)が出る

痰は、気道から分泌される分泌物のことです。通常は1日あたり約50-100ml程度分泌されていますが、吸収・蒸発するため、のどに出てくるのは10ml程度で自覚されることはほとんどありません。しかし、感染や炎症による分泌物の増加や排泄機能の低下でのどにたまる量が増えると痰として気付きます。

主に考えられる疾患

上気道炎、鼻炎・副鼻腔炎の流れ込み、気管支炎、肺疾患、逆流性食道炎など

食べ物・飲み物が飲み込みにくい/喉(のど)がつまった感じがする

食べ物や飲み物は、口〜咽頭〜食道〜胃へと通過していきます。その途中が、何らかの理由で狭くなったり、筋肉・神経の機能が悪くなったりすることで飲み込みにくい、喉がつまった感じがする

主に考えられる疾患

口腔・咽頭の炎症性疾患、脳神経系疾患(脳梗塞など)、嚥下機能低下、口腔・咽頭の腫瘍など

息苦しい/息苦しい感じがある

当然ですが、呼吸ができていないと命に関わります。ですから、まずは呼吸ができないことで息苦しいのか、呼吸が出てきているけど息苦しい感じがあるのかを判断することが非常に重要です。普通に呼吸ができており、楽に呼吸している状態であれば急を要する状態でない場合が多いです。逆に、ゼーゼー、ハーハーさせながら呼吸していたり、ヒューヒューという様な音を出しながら呼吸している場合は、急を要する可能性があるため、すぐに原因を突き止める必要があります。

主に考えられる疾患

口腔・咽頭の炎症性疾患、脳神経系疾患(脳梗塞など)、嚥下機能低下、口腔・咽頭の腫瘍など

声がかれる/声がかすれる

先ほど述べたように、喉頭にVの字の形をした声帯があり、「上手に」声帯が震えることで声が出ています。しかし、何らかの原因で声帯が「上手に」震えることが出来なくなることで症状が出てきます。最も多いのは、声帯の炎症です。ポリープなどのできものが邪魔している場合もあります。その他には、精神的な要因で声が出にくくなることもあります。

主に考えられる疾患

喉頭炎や声帯炎などの上気道の炎症、副鼻腔炎、声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、腫瘍(咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、甲状腺腫瘍など)、心因性発声障害、痙攣性発声障害、自己免疫疾患、甲状腺機能低下症など
下記の症状がある場合は、すぐに近隣の救急病院を受診してください。
  • 呼吸が苦しく、ゼーゼー、ヒューヒュー音がしている
  • 意識状態が悪い、唇が青い
  • こもった様な声(熱い物を口に入れている様な声)になってきている
  • 唾液も飲み込めないくらい痛い/唾液をダラダラ流している

口内炎・舌炎

口腔内の粘膜が欠損した状態です。原因として、ウイルス・細菌・カビなどの感染症、ビタミンや鉄分不足、内分泌疾患(糖尿病など)、自己免疫性疾患、アレルギー、外的刺激、ストレスなどが挙げられます。

よくある症状

疼痛、食べ物・飲み物がしみる、発赤、腫れなど

治療

原因があればその原因に対して治療を行います。うがいで口腔内をきれいにしたり、病状によっては軟膏を用います。

予防

口腔内を清潔に保ち、バランスの良い食事など健康的な生活を心がけましょう。

咽頭炎

咽頭に炎症が起きた状態を咽頭炎と言います。細菌(連鎖球菌、インフルエンザ菌など)・ウイルス(アデノウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、コクサッキーウイルスなど)が主な原因ですが、それ以外に、タバコ・飲酒・副鼻腔炎などが原因で起きることもあります。

よくある症状

咽頭痛、咽頭違和感、嚥下時痛、発熱、乾燥感など

治療

喫煙・飲酒が原因であれば禁煙・禁酒など誘因の除去。必要に応じて吸入や抗生剤治療を行うことがあります。

予防

寝不足やストレスなどで体の抵抗力が落ちて感染症を引き起こすことがありますので、規則正しい生活を心がけましょう。

アデノイド(咽頭扁桃)肥大・口蓋扁桃肥大

扁桃とは、リンパ組織で構成されており、細菌やウイルスに対する免疫機能を果たしています。扁桃には、鼻の突き当たりにあるアデノイド(咽頭扁桃)、口蓋垂(のどちんこ)の両脇にある口蓋扁桃(一般的に扁桃腺と言われる場所)、両方の耳管(耳と鼻をつなぐ管)のわきにある耳管扁桃、舌の根元にある舌根扁桃の4種類6ヶ所あります。
アデノイドは、2歳頃から肥大し6歳頃が最大で9−10歳頃に自然に退縮します。
口蓋扁桃は、2-3歳ころから肥大し7-8歳ころがピークで以降は自然に退縮します。
アデノイドや口蓋扁桃が肥大している時期に様々な症状を引き起こすことがあります。また、感染を契機にアデノイドや口蓋扁桃が腫脹し様々な症状を引き起こすこともあります。

よくある症状

アデノイド肥大による症状
鼻閉、鼻声、口呼吸、いびき、睡眠時無呼吸、繰り返す中耳炎など
口蓋扁桃肥大のよる症状
いびき、睡眠時無呼吸、飲み込みにくさなど

治療

アデノイドや口蓋扁桃は生理的肥大のみでは治療の適応にはなりません。肥大により上記症状が繰り返している場合などは手術適応になります。その場合は、総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

扁桃炎

口蓋扁桃(一般的に扁桃腺と言われる場所)にウイルスや細菌などが感染して炎症を起こした状態です。炎症が

よくある症状

風邪様症状(発熱・全身倦怠感・関節痛)、咽頭痛、嚥下時痛など

治療

細菌が原因と考えられる場合は、抗生剤での治療になります。早期の場合は内服のみで改善しますが、重症の場合は点滴や入院が必要になることがあります。ウイルスが原因と考えられる場合は、炎症止めや解熱鎮痛薬で経過を見ることもあります。
手術適応になるのは、扁桃炎を繰り返す場合や、病巣感染症の原因となっている場合です。この病巣感染症とは、どこかに親となる慢性的な炎症があり、その場所とは離れた部位に二次的に病気を引き起こす病態のことです。親の病巣として最も多いのが扁桃で、二次的に引き起こされる病態として多いのはIg A腎症、掌蹠膿疱症、関節リウマチ、胸肋鎖骨過形成症になります。これらの病態に対する扁桃摘出の効果は高いことが知られています。

予防

口に入ったウイルス・菌が原因で感染症を引き起こしますので、帰宅したら手洗い・うがいを心がけましょう。また、免疫が落ちることでウイルスや細菌への抵抗力が低下しますので、規則正しい生活を心がけましょう。
喉の乾燥もバリア機能低下の原因となりますので、部屋の加湿・適度なうがい・マスクなどで保湿するよう心がけましょう。

扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍

扁桃炎の炎症が周囲に広がった状態を扁桃周囲炎と呼び、更に膿が溜まってしまった状態を扁桃周囲膿瘍を呼びます。

よくある症状

高熱、激しい喉の痛み(耳まで痛くなることもあります)、飲み好む時の痛み、よだれ(痛くて飲み込めないため)、首のリンパ節の腫れ、喉の中の腫れ(腫れがひどくなったり下の方まで広がると呼吸困難になります)、など。

治療

基本的に抗生剤治療になります。膿が溜まっている場合は、針を刺したり局所麻酔で切開をして膿を抜いてあげる処置が必要になります。点滴での治療が必要なことが多いため、必要に応じて総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

予防

扁桃炎の予防と同様に、手洗い・うがいや、夜ふかしをしないなど規則正しい生活を心がけましょう。また、扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍は繰り返すことがあり、再発予防に手術(扁桃摘出術)を勧めさせていただくことがあります。

急性喉頭蓋炎

喉頭蓋はその文字の通り、喉頭の蓋(ふた)です。咽喉頭で食べ物と空気を振り分けるときに、食べ物が気管・肺に入らないように蓋をする所になります。この部位が、細菌感染などで炎症を起こした状態です。喉頭・喉頭蓋が発赤・腫脹し、悪化すると呼吸ができなくなってしまう可能性があります。

よくある症状

初めのうちは発熱、咽頭痛、嚥下時痛ですが、重症化すると含み声(口の中でこもった感じの声)や呼吸困難になり、ゼーゼー・ヒューヒューというような呼吸音になります。治療開始や気道確保(空気の通り道を確保すること)が遅れると窒息する可能性がありますので、急いで治療開始する必要があります。

治療

抗生剤治療と腫れを抑えるためにステロイド治療が中心になりますが、窒息の危険性が高い場合は気管切開(喉仏の下の方に呼吸するための穴を開けること)が必要になります。入院での治療が必要になりますので、総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

予防

確実な予防策はありませんが、他の感染症同様に手洗い・うがいや、夜ふかしをしないなど規則正しい生活を心がけましょう。最近は、ワクチン(Hibワクチン)の定期接種が進んでいるので、この菌が原因となる喉頭蓋炎は減っています。

咽喉頭異常感症

咽喉頭に明らかな病変や所見が見当たらなにも関わらず、「喉のイガイガ感」「喉のつまり感」「喉に何かひっかかっている」「飲み込みにくい感じがある」というような訴えがある状態です。ストレスや咽喉頭の乾燥が原因で喉の違和感が生じやすくなりますが、最近は異常所見の認めない逆流性食道炎、喉頭アレルギーが原因として増えていると言われています。

よくある症状

上記の様な咽喉頭の違和感

治療

原因となる病態によって治療方針は大幅に異なります。必要に応じて、抗生剤治療、粘液調整・粘膜正常化薬、抗アレルギー薬、吸入ステロイド、漢方、胃酸抑制薬などを用います。

予防

逆流性食道炎やアレルギーが原因の場合は、原因となっている病気の治療が必要になります。胃酸の逆流が原因の場合は、早食い・食べ過ぎ・食後すぐに横にならない、喫煙・チョコレート・アルコール・コーヒーを控えるなど生活習慣の改善も必要です。ストレスが原因と考えられる場合は、適切な休息・運動・食事が必要でバランスの良い生活を心がけましょう。喉の違和感が持続する場合は、何か病変が隠れていることがありますので、まずは近くの耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。

口腔・咽喉頭乾燥症

口腔・咽頭・喉頭の表面の上皮は通常は常に唾液や粘膜から分泌される粘液で覆われています。通常成人で唾液は1日で1,000ml以上分泌されているとされ、唾液により潤し、食物の流れをよくしてあげたり、菌やウイルスが増えないようにする役割があります。原因として、多くは加齢性の変化ですが、脱水、口呼吸、ストレス、薬(パーキンソン病薬、抗うつ薬など)や糖尿病、甲状腺機能障害、シェーグレン症候群などの疾患が挙げられます。

よくある症状

唾液や粘液の分泌が低下することで、口の中の乾燥感、ねばつき、ヒリヒリ感、口臭、口内炎、味覚低下、虫歯・歯周病などを生じやすくなります。また、菌やウイルスが増殖しやすくなることで、風邪などの感染症にかかりやすくなります。

治療

原因がはっきりわかっていればそれぞれに応じた治療が必要になります。加齢性の変化であれば根本的な治療は困難ですが、脱水を防ぐ、口呼吸を止める、ストレスを軽減することで症状が軽くなることがあります。また、薬が原因の場合、可能であれば変更が望ましいですが、他疾患の治療に必要なことが多く、保湿やうがいなど対症的な対応になることが多いです。

予防

規則正しい生活と食物をしっかり噛むことで唾液が出やすくしてあげましょう。うがいをすることで、口腔内に残った食物や菌を洗い流してあげることで、口腔内を良い状態に保つことも重要です。また、ガムなどで唾液の分泌を促すことが有効なこともありますが、糖分が多すぎにならないように注意が必要です。加湿器・マスク・保湿剤のスプレーなどが有効なこともあります。その他にも、唾液腺マッサージをすると唾液の分泌が良くなることがあります。

咽頭異物

のど(咽頭)に異物が引っかかった状態のことです。異物として魚骨が最も多くなり、まれに義歯や薬の袋があります。引っかかる部位としては、咽頭は上・中・下と分かれておりその中の中咽頭に多く、中咽頭の中でも口蓋扁桃が最も多いです。

よくある症状

飲み込む時の痛み(嚥下時痛)、のどのチクチクした痛み

治療

異物の除去
異物が引っかかってすぐであれば取り除きやすいですが、時間が経過すると炎症が起き周囲の腫れで異物が確認できなくなります。異物が確認できない場合、のどの奥で口から摘出できない場合、お子さんで指示に従えない場合は人手の多い総合病院耳鼻咽喉科での処置がが必要になりますので、総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。
また、ご飯のまるのみや頻回にツバや水を飲んで無理に流し込むようなことは止めましょう。さらに深く刺さってしまう可能性があります。

予防

骨を取り除いて食べるかよく噛んで食べるようにして下さい。特にお子さんの場合は扁桃腺(特に口蓋扁桃)が大きいため異物が刺さりやすいので、大人の方は注意してあげて下さい。

舌痛症

舌痛症は、長期間持続する口の中や舌の痛みや痺れがあるが、原因となる明らかな疾患がないものを指します。国際頭痛分類では、「口の中の痛みが1日2時間以上で3ヶ月間以上にわたって連日持続するもの」とされています。原因として神経同士の相互作用、心理的な問題、歯科治療の影響、ホルモンバランスの影響(更年期の女性に多いと言われています)などが考えられています。実際は、舌痛症は二次性舌痛症といい、なにかしらの他の原因がある事が多いです。

よくある症状

ヤケドしやようなヒリヒリ・ビリビリした痛み、刺されるようなズキズキ・チクチクした痛み、痺れる様なジンジンした痛みなど、人によって様々な感じ方や表現のされ方をします。

治療

最も大切なことはまず他の病気(口内炎、ビタミン不足、感染症、腫瘍など)が隠れていないかを確認することです。他の病気があればそれをきちんと治療することが重要です。原因がなければ、痛みのコントロール(100%の痛みの消失を目標ではなく)するために、心理療法や薬物療法(抗不安薬)などの治療が行われます。
歯科治療の後から持続している場合は、詰め物が体質に合っていない(金属アレルギーなどの)可能性もありますので、歯科受診をお勧めします。

予防

過剰な舌磨きをしない、うがいなどで口腔内を清潔に保つ。また、精神的・身体的ストレスが誘因として考えられているため、睡眠不足にならないようにしたり、生活習慣で改善できるものがないか見つめ直してみましょう。

味覚障害

味覚とは、唾液にとけた物質が、舌や咽喉頭に広く存在する味蕾の味細胞という味を感じる細胞に受容する(くっつく)ことで脳に電気刺激が送られることで感じる、化学感覚です。現在までのところ、“甘味” “塩味” “酸味” “苦味” “旨味”の5種類があるとされています。味覚の伝達路のどこかの段階に異常が起きることで、味覚障害が生じます。
原因として、加齢・薬物・感染・糖尿病や神経疾患など全身疾患・亜鉛欠乏・ビタミン欠乏・鉄欠乏・頭部外傷・脳血管疾患・手術・腫瘍・放射線治療・心因性などが考えられます。しかし、実際は一つの要因のみではなく、色々な要因が絡み合って起きています。

よくある症状

味覚障害と言っても症状は様々なものがあります。味覚低下(全体的に味が薄い)、味覚脱失(味を全く感じない)、解離性味覚障害(特定の味覚のみ感じない)、自発性異常味覚(何も口にしていないのに変な味がする)、異味症・錯味症(違う味がする)、味覚過敏(強く感じる)などがあります。

治療

原因により治療法は異なります。薬剤性であれば可能であれば原因薬剤の減量・中止、感染症であれば感染症へ対する治療、亜鉛など欠乏症があれば内服などでの補充を行います。その他にも、漢方薬や安定剤を使用することもあります。
治療開始から改善までに3ヶ月以上と長期間要することも多いです。

予防

食生活の変化による亜鉛など必要な栄養素の不足、社会的なストレスの影響も考えられています。従って、規則正しい生活習慣に注意しましょう。また、症状出現から治療開始までに半年以上経過していると治りが悪いと言われていますので、早めに受診しましょう。

喉頭アレルギー

鼻で起きるようなアレルギー反応が喉頭(のど)で起きている状態です。原因としては、鼻や口からアレルギー物質(花粉、ダニ、ホコリなど)が入り込みどのに到達することで症状が引き起こされます。診断としては、下記症状に加えアトピー性の体質・抗ヒスタミン薬が有効などの基準を満たすと喉頭アレルギーの可能性が高いですが、その他の疾患(副鼻腔炎、喘息、薬剤性、感染症など)の除外が必要です。

よくある症状

乾性咳嗽(痰の絡まないセキ)、喉の違和感(喉の痒み、イガイガ感、痰が絡んだような感じ、チクチクした喉の痛み)が3週間以上にわたって続く

治療

診断基準にもあるように、花粉症の治療で使用される抗ヒスタミン薬を用います。

予防

原因となっている抗原物質(アレルゲン)が分かっている場合、アレルギー性鼻炎同様にアレルゲンから遠ざかること、触れないようにすること(回避)、取り除くこと(除去)が大切になります。

声帯結節

声を酷使することで、声帯の中央にペンダコのような結節ができる腫瘤性病変です。声帯ポリープは片側にできることが多いですが、声帯結節は両側性にできることが多いです。大人では女性に多く、子どもでは男児に多い傾向にあります。

よくある症状

声枯れ(嗄声)が主訴になりますが、結節の大きさや硬さによって様々です。また、日によって異なったり、長く話をしていると悪化したりします。

治療

声の酷使が原因ですので、声を使いすぎず喉に負担のかからないような発声方法を行うことが基本になります。子どもの場合は変声期を過ぎると自然に良くなる事が多いです。
薬物治療としては内服や吸入で炎症を抑える事が挙げられますが、長期間必要になることがあります。
手術治療は、上記保存的治療で改善がない場合や、腫瘍が疑われる場合に行います。当クリニックでは総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

予防

音声の酷使が原因ですので、手術をしたとしても音声酷使を続けると高率に再発しますので、声の安静・声の衛生(加湿、うがい、マスクなどで埃を避ける)などが大切です。

声帯ポリープ

音声の酷使(声の出し過ぎ)や風邪の時に咳をしすぎてしまった時に、声帯が傷つき炎症が起きることで、部分的に出血を生じてポリープ状に隆起した状態です。多くは片方の声帯のみですが、両方の声帯に生じることもあります。

よくある症状

声帯の振動が妨げられるため声枯れ(嗄声)となります。一言に嗄声と言っても、ポリープの部位によっては小さくでもひどい声枯れのときもあれば、高音を出した時にのみ声が裏返るなど症状に差があります。

治療

音声の酷使が原因ですので、まずは声を出さずに安静にすることが大切です。必要に応じて消炎剤やステロイド吸入を行います。それでも消退・消失しなければ手術でポリープ切除が必要になります。

予防

声の出し過ぎが原因のため、特に風邪などで声が出にくい時に無理に声を出さないようにしましょう。

ポリープ様声帯

声帯ポリープと名前が似ていますが少し異なり、声帯の粘膜下の浮腫が主因と考えられています。喉頭ファイバーで声帯を観察すると、声帯が全体的に浮腫状にむくんでしまっているのが確認できます。慢性的な炎症が原因と考えられており、喫煙と密接な関係があります。

よくある症状

声枯れ(嗄声)。稀ではありますが、重症になると呼吸困難になることもあります。

治療

禁煙が基本で、消炎剤やステロイド吸入を行いますが、それだけで消失することは少なく、手術で浮腫を吸引除去する必要があります。

予防

禁煙が重要です。治療後(治った後)も喫煙することで有意に再発しやすくなることが知られています。

竹節状声帯

自己免疫性疾患や膠原病を持つ方に、まれに両方の声帯に帯状の隆起生病変がみられる声帯病変のことです。竹の節のように見えることからこのような病名で呼ばれています。

よくある症状

声枯れ(嗄声)

治療

現時点で確立した治療法はなく、基礎疾患の治療に加え、ステロイド局所注入や音声治療、外科的治療が報告されています。

痙攣(けいれん)性発声障害

痙攣性発声障害とは、声を出そうとした時や声を出している時に声帯の筋肉が過度に緊張してしまうことで、声が途切れてしまいなめらかに話をすることができなくなってしまう発声障害です。明らかな原因は不明です。非常に稀に声が抜けるようなタイプの障害もあります。診断、治療のため疑った場合は当クリニックでは総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

よくある症状

声を出している途中に声が詰まったり、途切れたりします。電話や人前での話など精神的ストレスがかかる場面で悪化し、逆に笑い声や裏声などで症状が軽くなるもしくは消失することがあります。

治療

音声治療(一般的には無効とされており、治癒は期待できないが、治療的診断で行われることがあります)、ボツリヌス治療、外科的手術。

口腔腫瘍

良性腫瘍

口の中には様々な良性腫瘍が生じます。その中でも、頻度の高いものは乳頭腫、血管腫、線維腫ですが、それ以外にも小唾液腺腫瘍、リンパ管腫、歯源性腫瘍などがあがります。

よくある症状

基本的に少しずつしか大きくならないため、健診や痛みのないしこり(無痛性腫瘤)として指摘され受診されます

治療

薬の治療はいずれも基本的に無効であり、中には良性であっても悪性化するものもあるため、根治的には手術が基本になります。しかし、部位・大きさ・全身状態などから経過観察とすることもあります。

悪性腫瘍

口腔の悪性腫瘍は粘膜から発生する癌(口腔癌)がほとんどですので、口腔癌の話をします。口腔癌の発生部位も舌、口腔底、歯肉、頬粘膜、硬口蓋がありますが、半分以上が舌からの発生(舌癌)です。
発症要因としては、喫煙・飲酒や口腔内の慢性的刺激(歯や入れ歯がずっと当たっている、口腔内不衛生など)、ウイルス感染、年齢などが考えられています。

よくある症状

発症当初は無症状で気づかないことが多いですが、大きくなってくるとしこりとして自覚したり、潰瘍化したり神経へ影響が出てくると痛み、食事や会話のしにくさ(摂食・嚥下・開口・構音障害など)が出てきて、リンパ節転移をするとき首のしこりとして自覚されることもあります。

治療

口腔癌は手術が基本であり、進行具合などの要因で放射線治療や化学療法も組み合わせることもあります。治療後の機能障害を最小限にするためにも、早期診断・早期治療開始が非常に重要です。

予防

タバコ・お酒が主な原因ですので、禁煙とお酒も控えめにすることが重要です。また、歯や入れ歯が原因で口内炎を繰り返していたり、何度も舌を噛んだりしていると、その慢性刺激も原因になり得ますので、そのような人は歯科・口腔外科での治療も口腔癌発症予防に大切です。

咽頭腫瘍

良性腫瘍

すでに述べた様に咽頭には上・中・下咽頭に分かれており、発生部位により良性腫瘍の種類の差はあるが、発生頻度は比較的少なくなっています。乳頭腫(中咽頭に多い)、血管腫、腺腫、血管腫、線維腫、小唾液腺腫瘍(多形腺腫など)があります。

よくある症状

上咽頭発生の場合は鼻閉・難聴・閉鼻声など、中咽頭発生の場合は腫瘤・腫脹・異物感・嚥下困難感など、下咽頭の場合は大きくなると異物感・嚥下困難感・嗄声・咳嗽などがあり、部位により症状は異なります。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

治療

いずれも基本的に根治治療は手術になります。しかし、部位・大きさ・全身状態などから経過観察とすることもあります。

上咽頭癌

上咽頭に発生する上皮性の悪性腫瘍です。東南アジアに多く、日本では発生頻度は低くなっています。EBウイルスが原因として知られています。好発年齢は40-60歳代ですが、稀に10-20歳代の若年者にも発生します。

よくある症状

鼻閉、難聴・滲出性中耳炎、鼻出血、嗅覚障害があり、進行すると脳神経麻痺症状や頸部リンパ節転移による頸部腫瘤がみられます。

治療

基本的に放射線治療と抗がん剤治療が中心の治療になります。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

予防

EBウイルスは幼少期に口うつしやスプーンなど食器の使い回しでやキスで感染しており、95%以上の人が成人するまでに感染しています。しかし、ほとんどの人は風邪程度の症状で治ってしまいます。したがって、感染を予防することは困難ですので早期発見・早期治療開始が大切ですが、早期では症状がなく難しいことが多いです。持続する鼻出血・鼻閉や、成人になっても持続する片側だけの滲出性中耳炎の場合は近くの耳鼻咽喉科で上咽頭の観察をしてもらうことをお勧めします。

中咽頭癌

中咽頭に発生する上皮性の悪性腫瘍です。原因として喫煙、飲酒、ヒトローマウイルスの感染が関わっていることがわかっています。近年はパピローマウイルス関連の中咽頭癌が増加傾向ですが、喫煙・飲酒が原因の癌と比較して治療反応性が良いと言われていますが、リンパ節など転移しやすいという特徴があります。好発年齢は50-60歳代とされています。

よくある症状

早期での症状は乏しいですが、パピローマウイルス関連の中咽頭癌の場合は先に頸部リンパ節転移で見つかることもあります。進行すると、ノドの違和感、飲み込みにくさ、口の開けにくさ、痛み、口臭などが出てきます。

治療

根治治療は手術、放射線治療、抗がん剤治療が行われます。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

予防

中咽頭癌の原因の一つであるパピローマウイルスは、子宮頸癌の原因ウイルスの一つでもあります。オーラルセックスなどで感染することが知られており、それらの行為に注意を払う必要があります。また、タバコ・お酒も中咽頭癌の原因となり、パピローマウイルスによる癌と比較して、タバコ・お酒が原因の癌は予後が悪いことが知られていますので、禁煙とお酒も控えめにすることが重要です。

下咽頭癌

上咽頭に発生する上皮性の悪性腫瘍です。原因として喫煙や飲酒が強く関わっています。60歳代、男性に多い傾向にあります。喫煙や飲酒に他の頭頸部癌や食道癌も関わっていますので、下咽頭癌が疑われた場合は胃カメラで食道癌の有無をチェックすることも大切です。

よくある症状

早期には特徴的な症状は乏しく、無症状であったりノドの違和感程度であったりします。しかし、進行すると飲み込みにくさ、ノドの痛み、声枯れ、息苦しさ、リンパ節転移による首のリンパ節の腫れが出てきます。

治療

根治治療は手術、放射線治療、抗がん剤治療が行われます。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

予防

タバコ・お酒が主な原因ですが、特にお酒を多量に飲む方や、お酒を飲んですぐ顔が赤くなったことがある方は注意が必要です。禁煙とお酒も控えめにすることが重要です。また、早期発見も重要ですのでタバコ・お酒を好まれている方は定期的に胃カメラや耳鼻科受診などでの検診をお勧めします。

喉頭腫瘍

喉頭乳頭腫

喉頭(上気道)にデコボコとした乳頭状の(カリフラワーみたいな)腫瘍ができる病気です。ヒトパピローマウイルス(HPV)と関連している病気で、5歳以下発症と20歳以上発症に分けられます。

よくある症状

声帯に病変があれば声枯れ(嗄声)となりますが、声帯に病変がかかっていなければ、喉の違和感や呼吸困難感で見つかることがあります。

治療

手術が基本となりますので、当クリニックでは総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。しかし、再発しやすいことが広く知られており、数十回手術になった方もいます。更に、癌化することもありますので、治療後も定期的な経過観察が必要です。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

予防

補助療法として再発予防に漢方薬など薬物治療が行われることもあります。また、最近の報告で、再発性乳頭腫に対してHPVワクチンが再発のリスクを減らしたと報告があります。

喉頭白板症

喉頭に生じる白色の病変のことで、上皮が厚くなっており、形は様々であり、ほとんどは声帯に生じます。喉への継続的な刺激が原因と考えられており、その中でも特に喫煙・音声の酷使に加え胃酸逆流、飲酒も誘因として考えられています。

よくある症状

声帯以外の病変では無症状のことも多く、生体の病変であったとしても軽度から中等度の声枯れ(嗄声)程度のことが多いです。その他に喉の違和感などが生じることがあります。

治療

悪性を疑うものでなければ禁煙や内服加療、悪性を疑う場合は生検や切除が必要になります。

予防

喫煙中の方はまずは禁煙が重要です。また、声の安静やお酒を控えるなど生活スタイルの改善も大切です。悪性ではないとしても数ヶ月おきの定期経過観察は必要です。

喉頭癌

喉頭にできる上皮性の悪性腫瘍のことで、声帯(声門)、声帯より上(声門上)、声帯よりした(声門下)の3つに分けられます。頭頸部癌では最も頻度の多い癌で、60歳代の男性に多い傾向にあります。原因として喫煙が最も強い関連がありますが、飲酒の関連も指摘されています。

よくある症状

声帯発生の癌の場合は早期から声枯れ(嗄声)があり、進行すると息苦しさ(呼吸困難)や飲み込みにくさ(嚥下障害)が出てきます。

治療

手術、放射線治療、抗がん剤治療を単独もしくは組み合わせで治療します。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

予防

禁煙が非常に重要で、必須です。お酒も控えめにしましょう。タバコ・お酒は他の頭頸部癌や食道癌の原因にもなるので、喉頭癌がある方は胃カメラなどで他の癌がないことを確認することが必要です。