その他

その他の疾患から探す

その他の治療から探す

唾液腺

唾液腺の構造・機能について

唾液腺は、大唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)と小唾液腺に大きく2種類に分かれます。小唾液腺は、頬(ほほ)の粘膜・上あご・口唇など口の中に広く分布します。唾液は、1日1,000-1,500ml分泌され、その約95%が大唾液腺(耳下腺・顎下腺>>>舌下腺・小唾液腺)から分泌されます。耳下腺は漿液腺から構成されておりサラサラの唾液、顎下腺は漿液腺>粘液腺のため比較的サラサラの唾液、舌下腺は粘液腺>漿液腺のためネバネバの唾液が分泌されます。唾液は、粘膜保護や潤滑・清浄・水分平衡・緩衝・抗菌・消化などの多数の作用があり、唾液が減少してしまうと口腔内の環境が悪くなってしまい、口内炎・虫歯・味覚障害・嚥下障害などを引き起こしてしまうので、口腔のみならず全身のためにもなくてはならないものです。
唾液腺の構造・機能について

唾液腺の疾患:唾石症

唾液腺内、もしくは唾液腺から口まで唾液が通過する管の中に上皮/異物/細菌を核として炭酸カルシウムなどが沈着することで石ができます。唾石症の大部分は顎下腺で、耳下腺や舌下腺に生じることは少ないです。

症状

食事の時の疼痛や顎の下や口腔内の赤み・腫れを繰り返します。感染を引き起こしている場合は、膿が出てくることもあります。

治療

唾石の位置や大きさにより治療方針が異なってきます。細菌感染がある場合は、感染に対する治療を行います。石が大きくてもお年寄りの方は唾液腺が萎縮し、唾液が出なくなっていることがあるため、症状がない場合は特別に治療を行わず経過観察となることもあります。
石が小さい場合は自然に排泄される場合がありますが、排泄されない場合や症状を繰り返す場合は摘出が必要になります。石の大きさ・位置によりますが、口の中から摘出する方法、首の皮膚を切開して顎下腺ごと摘出する方法、最近では内視鏡で摘出すつ方法もあります。

予防

唾液の分泌を促してあげることが大切です。よく噛んで食べる、唾液腺マッサージをするなどで分泌を促してあげましょう。また、口腔内の衛生状況も影響する可能性もあるため口腔ケアにも注意しましょう。

唾液腺の疾患:唾液腺炎

様々な原因により唾液腺に炎症が起きた状態で、代表的な疾患は下記のものが挙げられます。それぞれの疾患や原因により対処法は異なります。
急性化膿性唾液腺炎
「化膿性」唾液腺炎とは細菌が唾液腺に入り込んで感染・炎症を起こした疾患で、ウイルスではありません。唾液の出口から逆行性に細菌が入り込んで引き起こすことが多いですが、血液やリンパの流れにのって入り込むこともまれにあります。唾石・脱水・放射線治療などで唾液の流れが悪くなることが原因です。

症状

発熱、唾液腺の腫れ(耳周囲、顎の下、口腔内など)、唾液腺の管からの排膿、疼痛、開口障害を引き起こすこともあります。

治療

まずは抗生剤による全身治療になり、脱水があれば点滴も必要になります。さらに、重症化して膿瘍形成している場合は、切開排膿し洗浄処置が必要になるため、ここまで進行している場合は入院治療が必要になります。

予防

脱水とならないように十分な水分補給と、口腔内の細菌を減らすためにも口腔ケア(歯磨き、うがい、虫歯の治療)は重要です。また、唾石が原因となっている場合は繰り返している場合は、唾石の摘出が必要になることが多いです。
ウイルス性唾液腺炎
その名前の通り何かしらのウイルスが原因で唾液腺炎になったものです。原因となるウイルスとしてはインフルエンザ、パラインフルエンザ、コクサッキー、エコーなどがありますが、最も代表的なのはムンプスウイルスによるおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)です。ですのでこちらには流行性耳下腺炎のことを記載させていただきます。
おたふくかぜ(ムンプス、流行性耳下腺炎)
おたふくかぜ(ムンプス、流行性耳下腺炎)は、接触・飛沫感染です。潜伏期間は2-3週間と言われていますが、症状が出る数日前から周囲の人へ感染させている可能性があります。耳下腺炎の名前がついていますが、耳下腺だけではなく顎下腺や舌下腺も腫れることがあります(耳下腺が腫れずに顎下腺・舌下腺のみの腫れの時もあります)。診断には、のどからのウイルス検査や血液検査で抗体価の上昇を確認することですが診断までに時間がかかり、現時点ではインフルエンザのように迅速に診断をすることはできません。

症状

明らかな症状がない場合もあります(不顕性感染といいます)。症状がある場合も症状の出かたや程度は様々です。発熱(約80%程度、通常は3-4日で解熱)、唾液腺腫れ・圧痛(片側/両側/片側から両側性に移行することもあり、上記のように耳下腺以外の唾液腺が腫れることもあります)、リンパ節の腫れ・圧痛があります。唾液腺の腫れも数日から2週間程度持続することもあります。頭痛の頻度は比較的多く、ほとんどの方で無菌性髄膜炎をきたしていると考えられていますが、入院が必要な程(非常に強い頭痛・嘔吐など)の人は数%と稀です。その他に膵臓、睾丸、卵巣、内耳の炎症を引き起こすことがあります。内耳で炎症が起きて難聴となった場合は、高度難聴となり回復は困難と言われています。

治療

ウイルス感染ですので、基本的には対症療法になります。
しかし、上記のように稀に合併する病気(髄膜炎、膵炎、睾丸炎、卵巣炎、高度難聴など)がありますので、下記の症状がある時は必ず耳鼻咽喉科もしくは小児科や内科の受診・診察を受けるようにしてください。
  • 急に聞こえが悪いくなった、お子さんが片耳を寄せて聞いている
  • ひどい頭痛、発熱、嘔吐、下痢、けいれんなどの症状がある
  • 男性では睾丸の痛み、女性では下腹部痛がある

予防

ワクチン接種が効果的な予防法になります。実は自然に何度も感染する可能性のあるウイルスですので、ワクチン接種をしていてもかかることはありえますが、軽症ですみますし合併症のリスクもかなり下がると言われています。ムンプスによる難聴を防ぐためにもワクチン接種を行いましょう。
また、以前は登園・登校の基準として「耳下腺の腫れが改善するまで」とされていましたが、現在は「耳下腺、顎下腺、舌下腺の腫れが現れてから5日が経過し、全身状態が良好になるまで」と改定されています。

出席停止となる代表的な疾患

インフルエンザ 発症後5日経過し、かつ解熱した後2日を経過 するまで
麻疹(はしか) 解熱後3日を経過するまで
風疹(3日はしか) 発疹が消失するまで
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス) 唾液腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ 全身状態が良好になるまで
水痘(みずぼうそう) 全ての発疹が痂皮化するまで
咽頭結膜熱 主要症状が消失した後、2日を経過するまで
溶連菌感染症 適正な抗菌剤治療開始後24時間を経て全身状態が良好になるまで
手足口病 発熱がなく全身状態が良好であれば可
伝染性紅斑(りんご病) 発疹のみで全身状態が良好であれば可
ヘルパンギーナ 全身状態が良好であれば可
ノロウイルス 下痢・嘔吐が消失し全身状態が良好であれば可
突発性発疹 発疹が出ていても発熱がなければ可
帯状疱疹 病変部分がガーゼなどで覆っていれば可
反復性耳下腺炎
小児期(1〜6歳頃)にみられる片側もしくは両側性に耳下腺の腫脹を繰り返す疾患です。現時点では明らかな原因は不明です。初めての時は流行性耳下腺炎(おたふく風邪/ムンプス)と判別が難しいことが多いですが、流行性耳下腺炎と比較して発熱や疼痛の程度が軽いことが多いです。

症状

耳下腺の腫脹(左右同時、別々など様々)、発熱、疼痛・圧痛。年に1-5回が多く、平均1.5回/年と言われています。

治療

ほとんどの患者さんが思春期までに自然治癒します。痛みなど症状があれば症状に対して治療を行い、細菌感染を合併した場合は抗生物質を使用します。

予防

原因がはっきりしませんが、口腔内の菌からの感染の可能性が指摘されています。従いまして急性増悪を防ぐために、口腔ケア(うがい、歯磨きなど)や、唾液の分泌を促すためにシュガーレスのガムを噛むや唾液腺マッサージも効果が期待できると考えられています。
シェーグレン症候群
現時点でもはっきりと原因はわかっていませんが、自分の免疫機能が誤って涙腺や唾液腺を攻撃してしまうことで発症すると言われています。40-60歳代の女性に多く、人口10万人あたり15人程度の有病率と言われています。関節リウマチ・慢性甲状腺炎など他の自己免疫疾患をお持ちの人とそうでない人とに分かれます。
シェーグレン症候群は指定難病になり診断の確定には、小唾液腺生検・口腔検査(唾液腺造影・唾液分泌能検査など)・眼科検査(涙液分泌能の検査)・血液検査(特定の抗体が陽性)を行い、診断基準を満たす必要があります。

症状

目の乾燥(目が乾く、ゴロゴロする、目が疲れやすい、目やにが貯まるなど)、口の乾燥(口が渇く、唾液が出ない、口内炎や虫歯になりやすくなった、味が分かりにくいなど)、鼻の乾燥(鼻が乾く、鼻血が出やすくなったなど)、耳下腺が繰り返し腫れるなど。その他に、全身の症状(リンパ節腫脹や関節炎)が起きることもあります。関節リウマチや慢性甲状腺炎を合併している場合は、それぞれの疾患の症状(関節痛、甲状腺機能低下など)もでてくることがあります。

治療

残念ながら現時点でもシェーグレン症候群への根本的な治療はありません。それぞれの症状緩和が目的の治療になります。
ドライアイ(目の乾燥)に対しては、点眼中心の治療になります。眼科受診が必要になります。
ドライマウス(口の乾燥)に対しては、唾液の分泌刺激・促進(シュガーレスガム、レモン、梅干、内服薬)、人工唾液などが使われ、唾液腺マッサージが有効な人もいます。口腔内の環境維持・改善のために歯磨き、うがい、アルコールを控える、禁煙も重要です。
全身(涙腺・唾液腺以外)病変に対しては、病状に応じて免疫抑制剤やステロイドが必要になりますので、内科の先生への受診と加療が必要になります。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

予防

完全に解明されてはいませんが、ウイルス感染も原因の一つと考えられています。従いまして、体の抵抗力が落ちないように規則正しい生活・適度な運動を心がけ、こまめなうがい・手洗いなど感染予防にも努めましょう。

唾液腺腫瘍

唾液腺良性腫瘍(多形腺腫、ワルチン腫瘍、嚢胞など)
唾液腺にできる良性腫瘍は、最新のWHO分類でも10種類以上と多彩です。しかし、多形腺腫とワルチン腫瘍の2種類で大部分を占めます。多形腺腫は耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺いずれにも発生しますが、耳下腺が最も多いです。ワルチン腫瘍は50歳代の男性に多く、通常耳下腺のみにしか発生せず、喫煙との関連が指摘されています。多形腺腫は基本的に片側でワルチン腫瘍は両側に発生することが多いです。

症状

腫瘤自覚以外の症状は乏しいです。しかし、悪性化する種類の腫瘍(特に多形腺腫)もあり、悪性化した場合は急に大きくなったり、顔面神経麻痺などの他の症状が出てきます。

治療

手術以外に根治治療はありません。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。
唾液腺悪性腫瘍
唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺)にできる悪性腫瘍は、最新のWHO分類で20種類位以上あり非常に多彩です。その中でも悪性度も低・中・高と3つに分類されており複雑で、診断そのものが困難であることが多々あります。

症状

硬い腫瘤、進行すると顔面神経麻痺、潰瘍形成、転移によるリンパ節腫大などがあります。

治療

基本的に手術が第一選択です。その他に、追加で放射線治療や薬物治療が行われることもあります。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

甲状腺

甲状腺の機能・構造について

甲状腺は首の真ん中の下の方(のどぼとけより下)に、蝶々が羽を広げたような形であります。甲状腺は柔らかく、それほど大きくないため触ってもわかりにくいです。しかし、腫瘤ができたり、甲状腺自体が大きくなったりすると触れるようになってきます。甲状腺は、脳(下垂体)からの甲状腺刺激ホルモンから刺激を受けて、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンの量が多い状態の時は脳からの刺激ホルモンは少なくなり、甲状腺ホルモンが減る、逆に甲状腺ホルモンの量が不足している時は脳からの刺激ホルモンが多くなるという具合に精密にコントロールされています。
甲状腺ホルモンは血流に乗って全身へ運ばれ、全身(脳・神経、心臓、肝臓、腎臓、骨など)の新陳代謝を高める働きがあります。つまり、体を作ったり動かしたりするエネルギー源として働きます。従いまして、人にとってなくてはならないホルモンであり、特に子供にとっては成長・発育に非常に重要な役割を担っています。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが何かしらの原因で過剰に出てしまっている状態です。新陳代謝が過剰に活発になります。新陳代謝が活発になるなら体とっては良いと思われる方もいるとは思いますが、多すぎると体へ様々な悪影響が出てきてしまいます。
生じうる症状
注意しなければならないことは、症状には個人差があり、重症度や症状ので方は人により色々あるということです。
  • 落ち着きがなくなった(焦燥感)
  • 怒りっぽくなった(イライラしやすくなった)
  • 脈が速くなった(動悸がする、不整脈が出てきた、胸がドキドキする)
  • 異常に汗をかきやすくなった(少しの運動でも汗をかきやすくなった)
  • よく食べているのに体重が減った
  • 指先の震え
  • 腹痛、軟便や下痢をしたりする
  • 手足に力が入らない感じがある
  • 体温が上が以前より高くなった(微熱、顔・体のほてり感)
  • 子どもの成長が急に早くなった
  • 生理不順がある
考えられる疾患:バセドウ病(グレーブス病)
バセドウ病は自己免疫疾患の一つです。本来はウイルスや細菌などから身を守るための免疫細胞が、甲状腺にある甲状腺刺激ホルモンが結合する場所に働きかけてしまう抗体(自己抗体)を産生してしまい、持続的に甲状腺ホルモンが異常に出続けでしまう状態です。20-30歳代の女性に多い傾向にあります。
バセドウ病では上記症状に加え半数程度に何らかの目の症状が出てきます。目の症状として目のまわりの腫れ、目が飛び出してきた感じ、目つきが変わった感じや目の異物感などがあります。また、甲状腺が腫れ上がってしまい、エコーで見ると血流が異常に良い状態が観察できます。

治療

内服治療、放射線治療、手術の大きく3つの方法があります。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。
考えられる疾患:亜急性甲状腺炎
風邪(特にウイルス感染)に引き続いて起きる甲状腺の炎症により甲状腺自体が破壊されてしまう病気です。甲状腺が破壊されることでその中に溜まっている甲状腺ホルモンが溢れ出てくることで甲状腺機能亢進症になります。
亜急性甲状腺炎は甲状腺にも炎症が起きますので、首の痛み(自発痛・圧痛)、発熱と甲状腺の軽度腫大がみられます。
一部は遺伝も影響していると指摘されており、数十年後に再発することもあります。

治療

消炎鎮痛剤や症状が強ければステロイド剤を追加することもあります。また、脈が早い症状が強い場合は脈を落ち着ける薬が併用されることもあります。
通常は数ヶ月の甲状腺ホルモンが高い時期を乗り越えると改善してきますが、一時的に甲状腺機能低下症になることがあります。一時的なことが多いですが、永久的に甲状腺機能低下症になってしまう方もいます。
考えられる疾患:無痛性甲状腺炎
慢性甲状腺炎(橋本病)を持っている方の甲状腺が何らかの原因で破壊され、甲状腺機能亢進症となってしまう病気です。原因ははっきりしていませんが、出産後に起きることもあります。
症状は甲状腺機能亢進症の症状ですが、基本的に亜急性甲状腺炎のような発熱や痛みは生じません。

治療

基本的に経過観察ですが、症状が強い場合は内服治療を行うことがあります。亜急性甲状腺炎のように甲状腺ホルモンが高い時期を超えると改善してきますが、甲状腺機能低下症になることがあります。その際も内服治療が必要になることがあります。
考えられる疾患:プランマー病
甲状腺の結節(腫瘤)が甲状腺ホルモンを勝手に分泌してしまい、甲状腺機能亢進症の症状が生じた状態です。バセドウ病とは異なり、目の症状は出ません。

治療

手術、放射線治療があります。専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが何かしらの原因で不足してしまっている状態です。十分な新陳代謝を行うことができなくなり、体にとって様々な悪影響が出てしまっている状態です。
生じうる症状
注意しなければならないことは、最初の方は全く自覚症状がなく気づかず、甲状腺ホルモン不足が進行し長期になって気づくことが多いです。しかし、症状には個人差があります。
  • 疲れやすく、無気力になり、常に眠くなる
  • 寒がり、冷え性になる
  • 便秘がちになる
  • 全身がむくんだり、食事量は増えていないのに体重が増える
  • 運動をしても汗をかかない
  • 声がかれる
  • 子どもの成長が遅くなる
考えられる疾患:慢性甲状腺炎(橋本病)
甲状腺機能低下症をきたす病気のほとんどは慢性甲状腺炎で、自己免疫性疾患です。自分を守るための免疫細胞が甲状腺を破壊するような抗体(自己抗体)を産生してしまい、慢性的に甲状腺で炎症を引き起こし、少しずつ甲状腺を破壊していく病気です。30-40歳代の女性に多い傾向にあります。
甲状腺機能低下の症状に加え、甲状腺が全体的に腫れてしまう症状があります。

治療

甲状腺機能が正常であれば基本的に経過観察です。しかし、甲状腺ホルモンが不足してきた場合は内服での補充が必要になったり、稀に悪性腫瘍が発生することがあるため定期的な検査は必要です。

甲状腺腫瘍

甲状腺良性腫瘍(腺腫様甲状腺腫、腺腫、嚢胞、プランマー病)
甲状腺良性腫瘍は基本的に経過観察になります。しかし、大きく(一般的に4-5cm以上)なり飲み込みにくさや気管が強く圧排されたり、悪性が疑われる場合は手術を検討します。また、甲状腺結節の中でも甲状腺ホルモンを過剰に分泌するものをプランマー病と呼び、こちらの疾患も手術適応となります。手術の必要があれば、専門の施設をご紹介いたします。
甲状腺悪性腫瘍
甲状腺に発生する悪性腫瘍のことです。ほとんどの場合は乳頭癌という癌ですが、他にも濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫などあります。最も頻度の高い乳頭癌について記載させていただきます。甲状腺乳頭癌は一般的には非常にゆっくり進行する癌のため、最近の知見では小さな乳頭癌は短い間隔での経過観察も選択肢になっています。しかし、急に高悪性化し大きくなることがあるため注意が必要です。

症状

首の腫瘤、進行すると声枯れ(嗄声)など他の症状も加わってきます。

治療

癌の場合は手術が基本です。進行具合や年齢を考慮し、切除範囲や放射線治療、薬物治療が検討されます。
専門の施設での精査・治療が必要になりますので必要があればご紹介いたします。

顔面神経麻痺

脳から出た顔面神経は耳の中や耳下腺の中を通り、顔面の筋肉へ分布しています。ですから、末梢性の顔面神経麻痺は耳鼻咽喉科で扱うことが多くなります。末梢性の顔面神経麻痺の原因の大部分はウイルス感染が原因と言われており、ほとんどの場合、急な発症で、片側だけです。その他の原因として、外傷性や稀に腫瘍や中耳炎が原因となっていることもあります。
よくある症状:目・鼻・口周りの違和感、閉眼困難、うがい・飲水時に水が漏れる、口角が下がる、皺寄せができないなどがあります。これら全て同時に起きるわけではなく、気付いてから数日間で進行してきます。
また、外耳道・耳介などの疱疹、難聴・耳鳴り・めまいを合併することがあります。これらの症状がある場合は、顔面神経麻痺の中でもハント症候群(耳性帯状疱疹)が疑われ、水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因と言われています。

治療

抗ウイルス薬、神経の浮腫改善目的のステロイド薬、その他にビタミン剤や循環改善薬を用いた治療になります。重症の場合や高齢・糖尿病などの合併症がある場合は、入院治療が必要になります。また、薬物治療への反応が乏しく重症例は手術も考慮されます。

顎関節症(がくかんせつしょう)

顎関節症は、顎(あご)の関節や噛む時に使う筋肉(咀嚼筋)の痛み、開口障害、口の開け閉めの時に音がするなどを主症状とする顎の感性的な疾患の総称です。タイプにより、筋肉の問題、関節靭帯の問題、関節円板の問題、骨の変形による問題、その他と分かれており、いろいろな要因から発症していると考えられています。

症状

病名の通りあごの関節の病気なので、頭痛(顎関節があるこめかみ部分中心)、口を開けるとクリック音という「パキパキ」「ポキポキ」「カクカク」音がすることがあります。また、顎関節が耳のすぐ前にあるため、耳の痛みとして耳鼻科に来院される方もいます。

治療

鎮痛薬、安静、マッサージ、必要に応じてマウスピース作成・装着となりますので、基本的に歯科・口腔外科で診察、治療を行っていただきます。

頸部リンパ節炎/頚部リンパ節腫脹(首のリンパ節のはれ)

リンパ節は、数mmから数cmの大きさで、全身に分布しており、免疫機能・防御機構を果たしている器官の一つです。当然、首にもたくさんのリンパ節があり、様々な原因で腫れることがあります。最も頻度が高いものは、反応性リンパ節炎と言われ、歯・喉を含めて何らかの細菌やウイルス感染の全身の炎症の一部として首のリンパ節が腫れることがあります。この場合は基本的に抗生剤や消炎鎮痛薬で数週間で改善します。その他に感染性のリンパ節腫大をきたす疾患として、伝染性単核球症(EBウイルス)、結核性リンパ節炎(結核菌)、トキソプラズマ(寄生虫)、猫ひっかき病などが挙げられます。また、原因不明のリンパ節腫大をきたす疾患としては、亜急性壊死性リンパ節炎(若年女性に多く、発熱が持続することも)やサルコイドーシスがあります。最後に忘れてはいけないのが、腫瘍性のリンパ節腫脹です。腫瘍性の場合は、頭頸部癌が進行しリンパ節転移をきたしている可能性もあるため、頭頸部のチェックは必要です。また、悪性リンパ腫の一病変の可能性もあります。ですので、首のリンパ節が腫れた時は、耳鼻咽喉科専門医にチェックしてもらうことが大切です。

鼻粘膜焼灼術

当クリニックでは鼻粘膜焼灼術を行っております(予約制です)。
鼻の粘膜(具体的には下鼻甲介粘膜)を焼灼することで、腫れている鼻を変性・収縮させることで、鼻の通りを良くしたり、鼻水を減らしたり、アレルゲン(花粉・ハウスダストなどのアレルギーの元になっているもの)が付着してもアレルギー反応が起きにくくしたりする方法です。

治療効果

個人差はありますが、鼻閉・鼻汁・くしゃみなどの症状が、約6-9割の方が軽減(薬の量が減る)もしくは消失すると言われています。しかし、治療効果は永続するわけではなく、個人差があり1-3年程度で元に戻ると言われています。
下記のような方はご検討ください
  • 薬が嫌いな方
  • 定期的に薬を飲めない方
  • 薬の効果が乏しい方
  • スポーツなどで内服が出来ない方
  • 鼻症状の中で、特に鼻閉が強い方
  • 鼻閉などで勉強に集中できない方
  • 鼻閉がひどく、いびき、睡眠障害などがある方(CPAPができない方)
  • 妊娠を希望している方、授乳中の方
  • 鼻処置に耐えられそうな年齢(小学校高学年くらいからお年寄りの方まで)

治療の流れ

問診・診察
粘膜焼灼術治療の適応があるかを評価し、治療内容や注意点を説明・理解していただいた後に治療の予約を行います。説明・同意文書を用いて説明いたします。希望がありましたらアレルギー検査も行いますので申し出てください。
鼻粘膜焼灼術治療日
局所麻酔のスプレーを行い、その後に麻酔を染み込ませたガーゼを鼻に入れて、20-30分程度待合室でお待ちいただきます。
治療開始
通常通り診察室の椅子に座っていただき、鼻の粘膜を焼灼します。
(治療中は焦げた匂いがします、痛み・出血はほとんどありません)
治療終了
鼻出血のないことを確認し、軟膏を塗って治療は終了です。
お薬の処方
治療後に1週間程度内服していただく炎症止めなどの処方箋をお渡しします。
(麻酔が切れた後に鈍痛を感じる方がおられますので、鎮痛薬の希望がございましたら申し出てください)
再診
鼻の中の状態を確認するために、1-2週間後に受診していだだきます。問題がなければこれで終了になります。

注意事項

  • 当クリニックでは基本的に予約制で行っております。治療の適応があるか、当クリニックで可能かを一度診察をして日程を相談・決定します。過去に当クリニックで鼻粘膜焼灼術治療を行ったことある方は、その限りではありません。
  • 未成年の方は保護者と一緒に来院してください。保護者とも一緒に相談してご納得いただいてから治療を行います。
  • 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の方は、花粉飛散時期よりも1ヶ月前程度に受けると効果的と言われています。通年性アレルギー性鼻炎の方は、基本的にいつでも良いですが症状が落ち着いている時に受けると良いでしょう。
  • 血液サラサラの薬を飲んでいる場合や出血傾向のある病気をお持ちの方はできない場合がありますので、診察時・予約時に申し出てください。
  • 高血圧、不整脈など心臓・循環器疾患、緑内障、前立腺肥大がある方は申し出てください。
  • 麻酔薬のアレルギーがある場合は申し出てください。
  • 鼻粘膜焼灼術治療後1-2週間は、鼻の粘膜の腫れや分泌物の増加、かさぶたの影響で鼻閉が一時的にひどくなります。かさぶたを無理に取ろうとすると、鼻出血の原因になりますので無理に取らないようにしてください。
  • 治療当日は長時間の入浴・サウナや飲酒を控えてください。また、治療後1週間は激しい運動を控えてください。

費用について

保険適応になりますので、3割負担で両鼻で9,000円程度ですが、初診料やお薬代などが別途かかります。

抗IgE抗体療法(ゾレア)

「重症以上」のスギ花粉症患者さんに対する新しい治療で、2020年より保険適応となりました。

どんな薬?

まず少しだけ花粉症(アレルギー性鼻炎)の話しをさせてください。花粉などの抗原(異物/アレルゲン)が体の中に入ってくると、体はアレルゲンを除去しようとIgEという物質(IgE抗体)を作ります。そして次にアレルゲンが入ってくるとIgE抗体とくっつき、それが肥満細胞に結合することで肥満細胞からヒスタミンなどアレルギーを引き起こす物質が放出されます。こうして、花粉症の症状(かゆみ、鼻水、鼻詰まり)を引き起こします。
そして、今回の抗IgE抗体(ゾレア)はIgEに結合し、肥満細胞にIgEが結合しにくくすることで、ヒスタミンなどの分泌を強力に抑制し、アレルギー反応が出にくくするものです。

対象

以下の条件を満たす必要があります。
  • スギ花粉症の方(血液検査でスギ花粉クラス3以上、総IgE値が30以上)
  • 12歳以上の方
  • 薬の効果が乏しい方
  • 従来の治療法(抗ヒスタミン薬内服・ステロイド点鼻など)を1週間以上行い、コントロール不良の重症・最重症の季節性花粉症の方

治療内容

1回目受診時
診察で花粉症の重症度を判定します。従来の治療(内服・点鼻)開始。また、これまでに血液検査をされていない場合は血液検査で、スギ花粉の有無・総IgE値を評価します。
2回目受診時(治療開始から1週間以上経過してから評価します)
従来の治療法に抵抗性かどうかの判断します。従来の治療抵抗性で、血液検査のスギ花粉の有無・総IgE値を評価し抗IgE抗体療法の適応があり、金額や通院間隔にご納得いただき、治療希望があれば、投与量を体重・総IgE値から計算します。
3回目受診時
抗IgE抗体(ゾレア)を投与します(投与量に応じて1-4本の皮下注射)。
以降は2-4週間ごとに受診していただき、スギ花粉の飛散時期に継続します。だいたい2-5月に1-4回程度することになります。

費用

従来のスギ花粉症治療よりもとても高額になります。3割負担の方でも、抗IgE抗体(ゾレア)の薬の費用だけで約4500円〜約70000円かかります(投与量・注射回数により異なります)。更に、それぞれの受診時の診察料・検査料・内服や点鼻の薬の費用がかかります。治療費が高額になった場合、高額療養費制度による医療費の一部が払い戻しや、小児は自治体によっては医療費助成が受けられることがあります。

副作用

注射薬なので、他の注射薬同様に、注射部位の赤み・腫れは最も多く見られる副作用です。また、アナフィラキシー(湿疹、全身の痒み、呼吸困難、唇・舌・喉の腫れ、血圧低下など)の症状があった場合は、近くの医療機関に早急に受診しましょう。尚、臨床試験では、気管支喘息の方でアナフィラキシー反応は0.2%に報告されていますが、慢性蕁麻疹・花粉症の国内試験ではアナフィラキシー反応はみられていません(ノバルティス ファーマ株式会社のデータより)。

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS)

睡眠時無呼吸症候群は、病名の通り睡眠中に呼吸が止まったり(無呼吸)、呼吸が浅くなってしまったり(低呼吸)という状態が繰り返され、それによって様々な体の不調を引き起こしてしまう病態のことです。その頻度は、診断基準や検査した年代や性別によりばらつきはありますが、数%~20%前後と言われており、比較的ありふれた病態です。
睡眠時無呼吸症候群には以下の3種類の型があります。
  • 閉塞型:鼻・口・のどのどこかが狭くなっているもので、耳鼻咽喉科が扱う睡眠時無呼吸症候群はこの型になります。
  • 中枢型:脳の呼吸中枢による異常が原因です。
  • 混合型:閉塞型と中枢型が混合した型です。
以下、基本的に耳鼻咽喉科で扱う閉塞性睡眠時無呼吸症候群に関して説明します。
頻度が高い原因は肥満です。通常でも睡眠時には喉の周りの筋肉が緩み重力で舌が喉に落ち込みやすいです。肥満では喉の周りにも脂肪がつくことで喉が狭くなってしまうため、睡眠時に更に喉を狭くしてしまい無呼吸・低呼吸となってしまいます。
睡眠時無呼吸症候群

症状

いびき
空気の通り道が狭くなった部分を無理に空気が通ろうとすることで大きないびきになります。完全に閉塞してしまうと呼吸が止まってしまいます。
ご自身では自覚していなくても、ご家族から指摘されることがあります。
日中の眠気(集中力がない)、夜間に何度も目が覚める
睡眠時無呼吸症候群のため夜間に何度も目が覚めてしまいます。そのために、長時間寝ているにもかかわらず、日中に眠くなってしまいます。
息苦しさがある
無呼吸により息苦しくなって目が覚めたりします
寝汗をかく
通常は睡眠中は副交感神経が優位になり体を休めてくれますが、無呼吸による覚醒を繰り返すことで交感神経が活発になり、大量の汗をかいてしまいます。また、交感神経が活発のとなるため血圧が高くなります。
朝起きた時にのどが乾く
口呼吸により口がカラカラになってしまいます。
朝起きた時の頭が重い感じ、すっきりしない感じ、頭痛、疲れが取れない
睡眠時無呼吸症候群の方に多い症状で、夜間に何度も呼吸が止まったり、起きたりしていることで熟睡ができず、「何時間寝ても疲れが取れない」等の訴えをされる方が多いです。
上記のような症状がある方は注意が必要です。一度、検査を検討ください。

睡眠時無呼吸症候群になりやすい方・悪化の原因となりやすい因子

肥満・体重増加
最も多い原因です。先にも述べたように脂肪がのどの周りについてしまって空気の通り道が狭くなってしまいます。
鼻づまり(鼻閉)
アレルギー性鼻炎などの鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症(鼻の真ん中の仕切りが極端に曲がっている)の方は鼻呼吸ができず、症状がでやすくなります。
骨格
実は肥満がなくても睡眠時無呼吸症候群になることはあります。顎が小さい方(小顎症)は、のど周りの空気の通り道も狭くなってしまうため睡眠時無呼吸症候群となってしまうことがあります。欧米人に比べて日本人/アジア人は顎が小さい傾向があるため、頻度が高いと言われています。
お酒(アルコール)・一部の睡眠薬
普段はいびきをかかない人でも、お酒を飲むといびきをかく人もいると思います。それはお酒を飲んで寝ると、のどの周りの空気の通り道を維持している筋肉が緩んでしまうことで、空気の通り道が狭くなってしまいいびき・無呼吸の原因になってしまいます。一部の睡眠薬でもお酒同様に、筋肉が緩んでしまう(筋弛緩作用)があり無呼吸の原因になってしまいます。

検査

原因となる疾患がないかを確認
まず、鼻やのどにアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、アデノイド肥大、扁桃肥大など原因となる疾患がないかを確認します。レントゲンや喉頭ファイバー検査が必要になることがあり、耳鼻咽喉科でないと検査ができないことがあります。
簡易検査
次に簡易検査に移ります。ご自宅で鼻と指に簡易的な機械をつけて、睡眠中の呼吸の状態や血液中の酸素濃度の状態を評価します。簡易検査で睡眠時無呼吸症候群の診断を満たせば治療に移っていきます。「疑い」止まりの場合は次の精密検査へ移行します。
入院検査
(必要時)ポリソムノグラフィー(polysomnography; PSG)
1泊2日の入院が必要になる検査です。脳波、呼吸の状態、お腹の動き、心電図、酸素化などを精密に計測し、診断をしていきます。当クリニックでは行うことはできませんので、PSG検査を行うことのできる病院を紹介いたします。

治療

大切なことは生活習慣の見直しです。
  • 肥満が原因と考えられる場合は、食習慣や運動習慣の改善を試みましょう。
  • お酒を習慣的に飲まれている方は控えめにしましょう。
  • 睡眠薬を処方されている方は、処方をしてもらっている先生へ相談して、必要があれば睡眠薬の調整をお願いしましょう。
  • 寝ている時の体の向きの調整をしてみましょう。すでに記載させていただいたように、寝ている時は筋肉が緩んで重力で喉に舌が落ち込んでしまい、いびきの原因になってしまいます。ですので、仰向け(上向き)に寝るのではなく横向きに寝ることで防ぐことができます。
持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure; CPAP)
睡眠時に絵のように鼻に特殊なマスクを装着して、持続的に空気を鼻から送り込むことで空気の通り道を広げてあげる方法です。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対しては非常に有効な治療法です。しかし、CPAPは根本的な治療ではないため、あわせて生活習慣の見直しは重要です。
マウスピース装着
睡眠時無呼吸症候群の程度が軽い場合などは、マウスピースでいびきの改善を試みることもあります。マウスピース作成に関しましては、歯科を紹介いたします。
手術治療
鼻づまりの改善。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などが原因の場合は投薬治療で改善を試みます。しかし、投薬抵抗性の場合や鼻中隔湾曲症など鼻の中の構造自体が原因と考えられる場合は、手術(鼻中隔矯正術、粘膜下下甲介骨切除術、鼻粘膜焼灼術、後鼻神経切断術など)が必要になることがあります。その場合は、鼻の手術をおこなっている総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。
口蓋扁桃が大きい、口蓋垂が長いなどが原因となっている場合も口蓋扁桃摘出術などが必要になる場合があります。この場合も、総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

睡眠時無呼吸症候群を放置することでどうなるの?合併症は?

上記のようないびき、日中の眠気、頭痛・疲労感などの症状に加え、集中力の低下、記憶力低下を認め、結果的に交通事故、労働生産性の低下などを引き起こします。一説では睡眠時無呼吸による日本全体での経済的損失は数兆円に及ぶとうい試算が出されています。
また、高血圧、糖尿病、心不全など心血管障害、脳血管障害、小児では発育・発達への影響も関連していると言われています。心血管障害や脳血管障害のリスクは睡眠時無呼吸症候群の方は、そうでない方の2-3倍リスクが高いと言われています。

補聴器

最近以下のようなことが多くなっていませんか?
  • 聞き返すことが多い/増えた
  • 聞き間違えが多い/増えた
  • テレビの音量がうるさいと家族に言われた
  • 会話をしているときに声が大きいと言われた
  • 体温計や電子レンジなど高い電子音が聞き取りにくくなってきた
  • 後から話しかけられると気付かないことが多い/増えた
上の症状で当てはまる項目が多い方は近くの耳鼻科で耳のチェックや聞こえの検査をしましょう。
  • 耳鼻咽喉科を受診していただき、難聴の診断を行います。その他、外耳道、鼓膜を評価し治療が炎症などがないかチェックします。
  • 検査で補聴器の適応があり、本人・ご家族の希望があれば、補聴器外来に来ていただきます。そこで、認定補聴器技能者から再度補聴器の説明をしていただき、希望がありましたら補聴器の型と補聴器をつける耳を決め、補聴器を貸し出します。
  • ご自宅で数週間〜3ヶ月使用していただき、再度補聴器外来で聞こえの具合、補聴器のなじみ具合などの感想を聞かせていただき、必要に応じて点検・調整・補聴器の変更を行います。
  • ご納得いただければ補聴器を購入していただきます。

聞こえと脳のトレーニング

補聴器はメガネと違い、補聴器を買ってからも非常に大切です。
補聴器を使って「聞こえと脳のトレーニング」が必要!と考えてください。
補聴器に耳垢が詰まっていないかなど補聴器のメンテナンスのために定期的な受診も必要ですが、定期的な調節が必要です。
定期的な調整が必要である理由は、難聴の方は聞こえない状態に慣れてしまっています。つまり、あまり周囲の音が聞こえない静かな状態に耳も脳も慣れています。ですので、いきなり通常の会話にとって適切な大きさまで音量を上げると「うるさい!」と言って使用しなくなります。従いまして、少しずつ時間をかけて補聴器を調節することで、脳と耳を「トレーニング」して聞こえる状態に慣れてもらう必要があります。
調整が済んだとしても定期的な調整・メンテナンスは必要になります。

Bスポット治療(Epipharyngeal Abrasive Therapy; EAT, 上咽頭擦過治療)

Bスポット療法とは、上咽頭という鼻の突き当たりの部分に、薬剤(塩化亜鉛)を鼻や口から塗る治療法です。以前から慢性上咽頭炎の治療として、鼻咽腔;Biinkuuの頭文字をとってBスポット療法と呼ばれており、現在では上咽頭擦過治療(Epipharyngeal Abrasive Therapy; EAT、イート)とも呼ばれています。日本病床疾患研究会ではこの治療法をEATと呼ぶように統一しています。この治療は、慢性上咽頭炎による様々な症状や病気に対する効果を期待して行われます。

慢性上咽頭炎による代表的な症状

咽頭違和感、後鼻漏(のどの奥に鼻水が流れる)、鼻詰まり感、咽頭痛、咳、頭痛など上咽頭炎の炎症が直接影響するような症状。
めまい、起立性調節障害、全身倦怠感など神経へ自律神経への影響による症状。
その他、病巣感染症としての症状も影響していると指摘されています。

治療について

当クリニックではまず鼻咽腔ファイバーで上咽頭の状態を評価します。
塩化亜鉛を染み込ませた綿棒を鼻から入れ、上咽頭に薬を塗りつけます。また、可能でしたら口からも行います。
週1回程度、10-15回程度で評価しますが、ご都合や症状に合わせて適宜変更を行います。10-15回程度の治療で症状消失した場合や効果が全くない場合は治療を終了となりますが、治療の終了に関しては相談させていただきながら行います。

注意事項

治療中・治療後に痛みや出血を伴うことが多いですが、徐々に改善します。上咽頭炎が強いほど治療後の痛みや出血が強いと言われており、従って出血や痛みが強い方が効果が高いと言われています。
合併症のリスクが低く、Bスポット療法が様々な病状に有効であった報告はありますが、現在でも医学的に有効性が完全に証明された治療ではありません。補助的な意味合いでの治療と考えてください。