鼻・副鼻腔の機能・構造について

鼻・副鼻腔の主な機能・役割は、呼吸の経路として役割、吸い込んだ空気の加湿・加温機能、病原体やホコリを濾過するフィルターとしての役割、においを感じる嗅覚機能があります。更に、副鼻腔は上顎洞(頬の裏)、前頭洞(額の裏)、蝶形洞・篩骨洞(目・鼻の奥)の4つがあり、空洞があることで骨の強度を維持しつつ軽量化を果しています。鼻腔と副鼻腔との空洞が共鳴腔となり、鼻音の構音に関与しています。
鼻・副鼻腔の機能・構造について

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鼻の詰まり感(鼻閉感)

鼻閉とは、鼻が詰まっている症状のことですが、鼻閉感と明確な区別は困難で、自覚症状と検査所見が一致しないことがあります。鼻閉は、炎症が要因となっている炎症性鼻閉と、鼻・副鼻腔から上咽頭にかけての物理的要因による構造性鼻閉があります。当然、その両方が原因となっていることもあります。

主に考えられる疾患

風邪、花粉症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、急性・慢性鼻炎などの炎症性疾患。鼻中隔湾曲症、腫瘍/ポリープ、アデノイド肥大など構造性疾患。

鼻汁(鼻水)/鼻漏

鼻汁は、成人で1日1リットル前後分泌されていると言われており、鼻汁により吸気を加湿し、咽喉頭・下気道(気管・気管支・肺)を乾燥から守っていると言われています。通常は、加湿に使われたり自然に飲み込んでおり、気づくことはありませんが、感染やアレルギー性鼻炎などがあると鼻汁の量が増えてしまい、鼻汁/鼻漏として悩まされることになります。その際の鼻汁の性質により、透明でサラサラした水様性(漿液性)、透明からわずかに色がついている粘稠度の高い粘液性/粘膿性、濃い色で臭いを伴うこともある膿性に分けられます。血性鼻漏の場合は腫瘍性疾患のことがあるので早めに耳鼻科での検査をするようにしましょう。

主に考えられる疾患

風邪、花粉症、アレルギー性鼻炎、急性鼻炎、副鼻腔炎、腫瘍性疾患など

くしゃみ/鼻のかゆみ

“こより”で鼻の中を触るとくしゃみが出た経験がある人が多いと思います。それは鼻の中にある感覚神経(三叉神経)が刺激されること(物理的刺激)でくしゃみが起こっています。同じように、他の物理的刺激、アレルギー反応による刺激、温度変化による刺激など様々な刺激でくしゃみや鼻のかゆみは起きます。

主に考えられる疾患

風邪(特に初期)、花粉症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、急性・慢性鼻炎など

においを感じにくい(嗅覚障害)

嗅覚障害はその原因によって治療方針が異なります。また、嗅覚障害になってからの期間やその重症度によっても治りやすさが異なります。
詳細は〜鼻の疾患〜の「嗅覚障害」を参照ください。

主に考えられる疾患

鼻炎、副鼻腔炎、風邪の後、加齢性など

鼻が臭い

一言に鼻が臭いと言っても、周りに臭いのするものがないのに変な臭いがする、鼻閉感と同時に臭いする、口臭と同時に鼻も臭いがするようになってきた、鼻の周囲を嗅ぐと臭いなど訴えは様々です。特に子供の場合は、親御さんが知らないうちに豆などの食べ物やプラスチックのオモチャなどを入れてしまっていることが多いです。

主に考えられる疾患

鼻炎(特に萎縮性)、副鼻腔炎、鼻内遺物など

鼻出血

ほとんどが触りすぎが原因です。アレルギー性鼻炎、高血圧、動脈硬化、血液サラサラの薬が原因となっていることもあります。
稀に腫瘍が原因のこともありますので、血が止まりにくい・しょっちゅう血が出るなどありましたら、近くの耳鼻科でまずは診てもらいましょう。
詳細は〜鼻の疾患〜の「鼻出血」を参照ください。

主に考えられる疾患

鼻炎(特に萎縮性)、副鼻腔炎、鼻内遺物など

鼻が痛い

鼻の奥の方・鼻の付け根・ほっぺたが痛い場合は、副鼻腔炎や上咽頭炎が原因となっている可能性があります。また、鼻の入り口周囲の場合は、鼻前庭炎が原因として考えられます。

主に考えられる疾患

副鼻腔炎、上咽頭炎、鼻前庭炎

急性副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎(ちくのう症)

急性副鼻腔炎は比較的急に症状が出てきます。細菌・カビやウイルス感染、アレルギー、上の歯の虫歯による炎症などにより副鼻腔の通りが悪くなり、膿が副鼻腔に溜まってしまうことで発症します。風邪の場合は多くは、1週間程度で改善しますが、風邪の後に1週間以上経っても鼻の症状が持続する場合は副鼻腔炎になっている可能性があるため、耳鼻科受診をするようにしましょう。急性副鼻腔炎の多くは1ヶ月以内に良くなります。
慢性副鼻腔炎は、一般的には急性副鼻腔炎が完全に治り切らずに繰り返したり長引いたりして、3ヶ月以上経過したもののことを指します。
小児の副鼻腔炎は、副鼻腔が発達段階ということもあり不安定で、自然に良くなることもあります。大人同様にウイルス・細菌感染が原因となっていますが、近年はアレルギーも関係・合併していると言われています。

よくある症状

膿性の鼻水、痰・喉に鼻水が流れてくる感じ(後鼻漏)、鼻閉、頭痛・頭の重い感じ、目の奥が痛い・重い感じ、ほっぺたの痛み、歯・歯茎の痛み、匂いがしにくい、鼻が臭いなど。
小児の場合は、症状をうまく訴えることができないことがあり注意が必要です。副鼻腔炎に加えて、アデノイド肥大やアレルギー性鼻炎などの合わさり、いびきや口呼吸になることもあります。

治療

抗生剤などの薬を長めに内服します(急性の場合は1-2週間、慢性の場合は2-3ヶ月が目安です)。鼻処置や鼻ネブライザー治療も併用します。アレルギー性鼻炎を合併している場合は、アレルギーの治療も同時に行います。これらの治療抵抗性の場合、症状が強い場合、特殊な副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎、術後性上顎嚢胞、カビが原因の副鼻腔炎(副鼻腔真菌症)など)が考えられる場合、腫瘍が疑われる場合は手術による治療が必要になりますので、総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。子供場合は、副鼻腔は発育段階のため、よほどのことがない限りは手術はお勧めしません。

予防

急性副鼻腔炎は風邪などをきっかけに発症することもあり、予防は難しいですが、風邪をひかないように規則正しい生活したり、風邪やアレルギー性鼻炎になった場合はしっかりと治療するようにしましょう。また、大切なことは急性副鼻腔炎が慢性副鼻腔炎へ移行させないようにすることですので、急性副鼻腔炎の段階でしっかりと治療するようにしましょう。

好酸球性副鼻腔炎

副鼻腔炎の中でも難治性のタイプになります。はっきりとした原因はわかっていませんが、白血球の種類のなかの一つである、好酸球という炎症細胞が鼻の粘膜に多数認められ、血液検査でも好酸球の増加を認めます。また、鼻ポリープ(鼻茸)が鼻腔内に充満することもあります。これらの炎症は、左右対称性であり副鼻腔の中でも篩骨洞中心に認めます。

よくある症状

鼻閉、嗅覚障害、粘性のある鼻汁

合併症

喘息(特に成人発症)やアスピリン不耐症(アスピリンなどの解熱鎮痛薬に対する過敏症)の合併を認めることが多いと報告されています。好酸球性中耳炎など。

治療

ステロイド内服が非常に有効です。しかし、副作用(免疫力低下、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症など)が問題になってくるため、長期間の使用は注意が必要です。その他に、抗アレルギー薬や吸入ステロイド薬、鼻洗浄などを組み合わせて治療を行っていきます。しかし、鼻ポリープにより鼻閉がひどい場合などは手術適応になることがありますが、根本的な治療にはなりません。現時点では根治ができない病気になるため、悪化させないことが大切であり、好酸球性副鼻腔炎の病状をうまくコントロールすることで、喘息など他の病状も改善すると言われています。
重症の患者さんに対しては、生物学的製剤も近年承認されましたが、非常に高額な薬剤になります。

予防

原因が分からないため病気そのものの発症は予防できませんが、風邪をひいたりすると悪化するので、風邪をひかないように規則正しい生活を送りましょう。

歯性上顎洞炎

病名の通り、虫歯など歯が原因となっている副鼻腔炎(上顎洞炎)です。

よくある症状

片方だけのことが多いです。片方のほっぺたの腫れ・痛み・重い感じ、膿性鼻汁、悪臭などです。歯の症状(歯の痛みなど)が一緒にあることが多いですが、歯の症状がない場合もあります。

治療

耳鼻科での抗生剤治療だけでなく、歯医者さんでの歯の治療も必要になります。治療抵抗性の場合は手術が必要になることもあります。

予防

虫歯など歯が原因となるため、日々の歯も含めた口腔内の清潔や、虫歯があればしっかりと歯医者さんで治療してもらいましょう。

術後性上顎嚢胞

上顎洞の手術の後に数年〜数十年してから発症することが多く、手術した付近に嚢胞ができて次第に大きくなってきます。

よくある症状

嚢胞の部位により異なりますが、ほっぺたの腫れ・痛み・痺れ感、歯の痛み・異常感・痺れ、目の圧迫感・眼球突出などがあります。

治療

感染を引き起こしていれば抗生剤による治療を行います。小さい場合や症状がない場合は経過観察をする場合はがありますが、根治治療は手術になりますので、総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

鼻副鼻腔悪性/良性腫瘍

鼻副鼻腔から発生する良性腫瘍で代表的なものが乳頭腫で、その他に血管腫や小唾液腺腫瘍などがある。悪性腫瘍はその頻度が全悪性腫瘍の1%以下と非常に珍しく、癌以外に悪性リンパ腫も生じることがある。癌は高齢者に多いと報告されています。

よくある症状

腫瘍に特徴的な症状はなく、片側だけの鼻閉・鼻出血・副鼻腔炎を生じることがありますが、診断が難しいことが多いです。腫瘍が大きくなると、血液が混ざった悪臭を伴う鼻汁や、腫瘍の部位の顔の痛みなどが出てきます。

治療

生検などで確定診断が必要であり、基本的に手術が根本的な治療になります。リンパ腫の場合は抗がん剤での治療になります。したがって、これらの検査・治療が可能な総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。

嗅覚障害(においを感じにくい)

嗅覚(においの感覚)は、昔から五感のひとつとして捉えられており、動物にとって非常に重要な感覚のひとつです。どのようににおいを感じているかというと、空気中のにおいの物質が、鼻腔を通り鼻腔の上の方に嗅上皮というところに到達し、嗅上皮にある嗅覚受容体にくっつき、嗅神経を通じて電気信号に変換し脳へと伝えてにおいを認識しています。嗅覚障害はこのいずれかの経路が障害されると生じます。

中枢性嗅覚障害

脳神経そのものの障害による嗅覚障害のことです。頭部外傷、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病などが原因となります。

末梢神経(嗅神経)性嗅覚障害

嗅粘膜にある嗅神経そのものの障害による嗅覚障害のことです。風邪などのウイルス感染や顔面・頭部打撲による神経障害などが原因となります。

呼吸性嗅覚障害

鼻副鼻腔疾患が原因んでにおいの物質が嗅上皮まで到達しないことで生じる嗅覚障害のことです。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎による粘膜の腫れや分泌物や、鼻ポリープ・鼻中隔湾曲症・腫瘍などで空気の通り道が塞がれたりることが原因となります。

治療

末梢神経性嗅覚障害の場合
自然軽快することもありますが、そのまま障害が残存することがあります。長期障害が持続した場合、治らないこともありますので早めに耳鼻科を受診しましょう。ステロイドの点鼻、ビタミン剤・漢方などの内服加療が治療の中心となります。
呼吸性嗅覚障害の場合
副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が原因の場合、薬物治療が中心になってきますが、薬物治療抵抗性の場合は手術も適応となることがあります。薬物治療抵抗性のs場合や腫瘍が疑われる場合は、総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。
余談
知っていました?非常に鼻が良いと思われている犬の嗅覚受容体の遺伝子は人の約2倍と言われていますが、ゾウは人の約5倍あると言われています。ゾウは鼻が長いだけではなかったんですね。

鼻出血

鼻腔は下気道保護のために、吸った空気を加湿する機能があります。そのため、血流が非常に豊富で、鼻の粘膜直下に動脈と静脈がたくさん張り巡らされています。従って、鼻の粘膜が傷つくと出血を簡単に起こしてしまいます。くしゃみや咳をした時の血圧の変動で出血を起こすこともあります。
鼻出血の約90%がキーゼルバッハ部位(鼻の中央の壁の前の方の粘膜)からと言われています。お子さんの場合は軽い出血も含めると、5歳までに約30%が鼻出血を経験すると言われているくらい、鼻出血はありふれたものになります。ご高齢の方の鼻出血は、キーゼルバッハ部位以外の場所であることもあり、止血に難渋することもあります。
原因としては、特にお子さんの場合は、鼻を触るなど機械的刺激やアレルギー性鼻炎が多いです。その他に、副鼻腔炎、感染症、血液サラサラの薬や高血圧が関連していると考えられています。また、頻度は少ないですが、出血性ポリープ、腫瘍性病変、血液疾患などが原因となっていることもあります。
統計的に、外気の乾燥する、秋から冬にかけて出血が起きやすいと報告されています。

治療

〜当クリニックで行うこと〜
鼻に麻酔薬や止血剤のスプレーやガーゼを挿入したりして、鼻腔内を観察します。
・キーゼルバッハ部位からの出血の場合
軟膏ガーゼによる圧迫止血、化学的腐食(硝酸銀など)や電気機械凝固(バイポーラ)による焼灼止血を行います。
・キーゼルバッハ部位以外(鼻の奥の方)からの出血の場合
可能であれば、化学的腐食(硝酸銀など)や電気機械凝固(バイポーラ)による焼灼止血を行います。しかし、器具が届かないもしくは出血点が不明な場合は、軟膏ガーゼをたくさん鼻に詰めて圧迫止血を行います。通常はガーゼは数日後に抜去します。
これらの処置で出血が治らない場合は、大きな病院での処置・検査が必要になることがあります。その場合は、総合病院耳鼻咽喉科を紹介いたします。
その他、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などが原因と考えられた場合は、病因に応じて内服薬、点鼻、軟膏などを処方します。
〜自宅でできること〜 
1)まずは落ち着きましょう(落ち着かせましょう)。興奮すると血圧が上がりさらに出血を助長します。
2)椅子などに座って、軽く下を向きましょう。
上を向いて後頭部を叩いたりしても意味がありません。それどころが、血液を飲み込んでしまい、逆に気分が悪くなってしまいます。横になった(寝転んだ)としても、仰向けにならないようにしましょう。
3)血液で周りが汚れにくいように、ティッシュなどで鼻を覆い、出血している方の小鼻を親指で抑えて圧迫止血をしましょう。難しければ小鼻をつまむようにしても良いです。あわせて鼻を冷やしても効果的でです。通常は10分以内でおさまることが多いです。
ティッシュを鼻に詰めるのは控えましょう。ティッシュを詰めた、その時はいいかもしれませんが、ティッシュを引き抜くときにかさぶたを剥がしてしまったり、ティッシュを出し入れするときに逆に鼻の粘膜を傷つけてしまったりして、出血を悪化させる原因になります。
4)1週間前後でかさぶたが取れますが、そのころに再出血することがあります。それまでは、注意が必要です。
これらの処置を30分程度してもおさまらない時や、出血の勢いが強い時、顔面の打撲後の持続する出血の時は耳鼻咽喉科か救急病院を受診しましょう。

予防

特にお子さんの場合は、鼻いじりが原因となっていることがほとんどです。鼻を触らないように指導しましょう。
強く鼻をかまないようにしましょう(軽くにしましょう)。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、その他の基礎疾患(高血圧・糖尿病など)がある場合は、これらが原因になっている事もあるのでしっかりと治療しましょう。