アレルギー性鼻炎(花粉症)
鼻は、空気と同時に異物(ウイルスや細菌の他に花粉、ハウスダスト、ダニ、動物の毛、カビなど)の入り口でもあるため、防御機構として免疫が備わっています。アレルギーとは、その異物が入ってきた時に、異物に対して過剰に防御反応を起こしてしまった結果に生じます。
アレルギー性鼻炎は、大きく分けると季節性と通年性アレルギー性鼻炎の2つに分類されます。
季節性は年間のある一定の時期に症状が強くなるもので、スギ、ヒノキなどの花粉をアレルゲン(異物)としたアレルギー性鼻炎です(いわゆる花粉症)。
通年性は季節と関係なく1年中症状があるもので、ハウスダスト(室内の埃)、ダニ、ペットの毛などをアレルゲンとしたアレルギー性鼻炎です。
主な症状は、くしゃみ・鼻水・鼻閉・目の痒みなどがあります。
気になる症状がありましたら、当クリニックにご相談ください。

投薬による治療

抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン薬などの内服やステロイド点鼻薬を用いて治療します。

治療効果

〜初期療法が効果的です〜
根本的な治療にはなりませんが、投薬により症状を抑えることが可能です。特に季節性アレルギー性鼻炎では初期療法が有効であることがわかっており、花粉が飛散する数週間前(症状が出る前)から治療を開始すると、症状が出てから治療開始する場合と比較して、花粉飛散期の症状を抑えられることがわかっています。
初期療法

初期療法とは?

初期療法とは、花粉症の症状が出る前(理想は花粉飛散1〜2週間前)から抗ヒスタミン薬の内服治療を開始し、飛散が終わるまで継続する方法です。初期療法を行うことで、花粉症の諸症状(鼻汁・鼻づまり・くしゃみ・かゆみ等)の発症を遅らせることができ、ピーク時の症状の強さを抑え、症状を早く鎮静化させることが期待できます。

初期療法はなぜ効果があるの?

花粉症の症状はヒスタミンが強く影響しており、花粉が体内に入ってくるとヒスタミンが放出されます。ヒスタミンがヒスタミンH1受容体に作用することで、さまざまな花粉症の症状を引き起こします。さらに、このヒスタミンH1受容体はヒスタミンH1受容体の遺伝子発現を亢進させている、つまり更に花粉症の症状が悪化するようにも作用しています(悪循環させている)。しかし、抗ヒスタミン薬を用いると、このヒスタミンH1受容体の遺伝子発現が抑制されることに加え、抗ヒスタミン薬がインバースアゴニストとしてヒスタミン受容体を不活性型へとシフトさせるという働き(ヒスタミンの影響が更に及びにくくする)もあわさり花粉症の症状を抑えます。つまり、花粉の飛散前に抗ヒスタミン薬での初期療法を行うことで、花粉によるヒスタミンの影響が及びにくくするように準備することができると考えられています。

鼻粘膜焼灼術

当クリニックでは鼻粘膜焼灼術を行っております(予約制です)。
鼻の粘膜(具体的には下鼻甲介粘膜)を焼灼することで、腫れている鼻を変性・収縮させることで、鼻の通りを良くしたり、鼻水を減らしたり、アレルゲン(花粉・ハウスダストなどのアレルギーの元になっているもの)が付着してもアレルギー反応が起きにくくしたりする方法です。
鼻粘膜焼灼術

治療効果

個人差はありますが、鼻閉・鼻汁・くしゃみなどの症状が、約6-9割の方が軽減(薬の量が減る)もしくは消失すると言われています。しかし、治療効果は永続するわけではなく、個人差があり1-3年程度で元に戻ると言われています。
下記のような方はご検討ください
  • 薬が嫌いな方
  • 定期的に薬を飲めない方
  • 薬の効果が乏しい方
  • スポーツなどで内服が出来ない方
  • 鼻症状の中で、特に鼻閉が強い方
  • 鼻閉などで勉強に集中できない方
  • 鼻閉がひどく、いびき、睡眠障害などがある方(CPAPができない方)
  • 妊娠を希望している方、授乳中の方
  • 鼻処置に耐えられそうな年齢(小学校高学年くらいからお年寄りの方まで)

治療の流れ

問診・診察
粘膜焼灼術治療の適応があるかを評価し、治療内容や注意点を説明・理解していただいた後に治療の予約を行います。説明・同意文書を用いて説明いたします。希望がありましたらアレルギー検査も行いますので申し出てください。
鼻粘膜焼灼術治療日
局所麻酔のスプレーを行い、その後に麻酔を染み込ませたガーゼを鼻に入れて、20-30分程度待合室でお待ちいただきます。
治療開始
通常通り診察室の椅子に座っていただき、鼻の粘膜を焼灼します。
(治療中は焦げた匂いがします、痛み・出血はほとんどありません)
治療終了
鼻出血のないことを確認し、軟膏を塗って治療は終了です。
お薬の処方
治療後に1週間程度内服していただく炎症止めなどの処方箋をお渡しします。
(麻酔が切れた後に鈍痛を感じる方がおられますので、鎮痛薬の希望がございましたら申し出てください)
再診
鼻の中の状態を確認するために、1-2週間後に受診していだだきます。問題がなければこれで終了になります。

注意事項

  • 当クリニックでは基本的に予約制で行っております。治療の適応があるか、当クリニックで可能かを一度診察をして日程を相談・決定します。過去に当クリニックで鼻粘膜焼灼術治療を行ったことある方は、その限りではありません。
  • 未成年の方は保護者と一緒に来院してください。保護者とも一緒に相談してご納得いただいてから治療を行います。
  • 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の方は、花粉飛散時期よりも1ヶ月前程度に受けると効果的と言われています。通年性アレルギー性鼻炎の方は、基本的にいつでも良いですが症状が落ち着いている時に受けると良いでしょう。
  • 血液サラサラの薬を飲んでいる場合や出血傾向のある病気をお持ちの方はできない場合がありますので、診察時・予約時に申し出てください。
  • 高血圧、不整脈など心臓・循環器疾患、緑内障、前立腺肥大がある方は申し出てください。
  • 麻酔薬のアレルギーがある場合は申し出てください。
  • 鼻粘膜焼灼術治療後1-2週間は、鼻の粘膜の腫れや分泌物の増加、かさぶたの影響で鼻閉が一時的にひどくなります。かさぶたを無理に取ろうとすると、鼻出血の原因になりますので無理に取らないようにしてください。
  • 治療当日は長時間の入浴・サウナや飲酒を控えてください。また、治療後1週間は激しい運動を控えてください。

費用

保険適応になりますので、3割負担で両鼻で9,000円程度ですが、初診料やお薬代などが別途かかります。

舌下免疫療法

文字から想像できるとは思いますが、舌の下に薬を置いて、しばらくしてから飲み込む方法で治療を行っていきます。舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法の一つであり、少量のアレルゲンを毎日摂取していき、アレルゲンに体が慣れるように(免疫寛容)誘導する治療法です。実は、アレルゲン免疫療法は昔からある治療法です。漆は皮膚に触れるとアレルギー反応が起きるので、昔から漆職人の親方が弟子の舌下に少量の漆を置いて、少しずつ量を増すことで、アレルギーを抑制する方法が知られていました。
現在は、スギ花粉とダニに対する治療薬があります。

治療効果

臨床試験の結果、約2割の人が薬が必要なくなり、約6割の人が薬を減量することができました。しかし、残念ながら約2割の人には効果を認めませんでした。

どんな人に舌下免疫療法がおすすめ?

  • 治療期間が長期間(3〜5年)になったとしても、スギ花粉症やダニのアレルギー性鼻炎を「根本的」に治したい方
  • 花粉症やアレルギー性鼻炎のお薬で副作用(眠気、のどの渇きなど)に困っている方
  • 花粉症やアレルギー性鼻炎のお薬を色々試したがなかなか効果が得られない方
  • 花粉症やアレルギー性鼻炎のお薬を毎年/何ヶ月も飲み続けることに違和感がある方

いつ治療を始めると一番効果がある?

スギ花粉症へのスギ花粉舌下免疫療法は、花粉の飛散時期を避けた6〜12月開始が望ましいでしょう。
ダニは、通年性アレルギー性鼻炎の原因となっており、通年開始しても良いという意見もあります。しかし、ダニアレルギーがある方はスギ花粉症を併発していることが比較的多いことからも、スギ花粉の飛散時期を避けた6〜12月開始が望ましいと言われています。

治療の流れ

通常の診察
通常の診察に受診していただき、治療が可能かどうかを確認・判断します。
採血でスギ花粉とダニに対するアレルギーの有無をチェックします。これらのどちらかもしくは両方ともが高い場合が治療の適応になります。
※採血結果説明日時に関してはスタッフはお尋ねください
治療を当院で受けることができない方
  • 採血でスギ花粉、ダニのいずれのアレルギー検査も反応がない方
  • 重症の喘息のある方
  • 以前に舌下免疫療法もしくはアレルゲンエキスによる診断・治療でアレルギー反応が出たことのある方
  • 悪性腫瘍や免疫系の疾患のある方
  • 妊娠もしくは妊娠の可能性のある方(妊娠中に治療導入はできません)
治療ができない可能性のある方
  • 授乳中の方(授乳を避けていただく必要があります)
  • 他のアレルゲン免疫療法と併用する方
  • ある特定の薬剤(β遮断薬、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、全身性ステロイド薬など)を使用中の方
  • 65歳以上の方
  • 5歳未満の小児。5歳以上が適応ですが、1分間の口腔内保持ができる子が適応になります。
  • 他のアレルゲンに対してもアレルギー反応が高い方
治療の適応がある場合、治療内容の説明を聞いていただき、いつから治療開始するかを決定します。
初回治療。この日は、来院していただき、舌下に薄いアレルゲンの投与を行います。30分程度院内で待っていただき、30分後に診察をして副作用の有無をチェックします。
※スギ花粉治療(シダキュア)はスギ花粉「非」飛散期(花粉が飛んでいない時期)に開始します。
最初の1週間は少量投与
スギ花粉治療(シダキュア)は1日1回1錠(2,000JAU)
ダニ治療(ミティキュア)は1日1回1錠(3,300JAU)
2週目以降は増量(実際に錠剤の数は変化なし)
スギ花粉治療(シダキュア)は1日1回1錠(5,000JAU)
ダニ治療(ミティキュア)は1日1回1錠(10,000JAU)
長期間の治療が必要になります。治療効果が出てくるまで数ヶ月必要で、十分な効果を得るために3年以上は継続をお勧めします。

副作用

主なものとして、口の中の腫れ・痒み・不快感・違和感、唇の腫れ、咽喉頭の刺激感・不快感・違和感、頭痛、耳周囲の痒みなど。
重篤な副作用として、ショックアナフィラキシーがあります。特に、服用後30分、服用開始初期、スギ花粉飛散時期(シダキュアの場合)は注意しましょう。服用前及び服用後2時間は激しい運動、アルコール摂取、入浴は控えましょう。
治療中に以下の症状がある場合はショックになる可能性があるため救急車を呼びましょう
  • 脈が不規則で速くなる
  • 意識が遠のく感じがある(血圧低下)
  • 喉の症状(締め付け感、息苦しさ、声枯れやゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音)など

治療開始前の確認点(ご理解いただきたい点)

  • 長期間(3年以上)治療継続できる
  • 毎日継続することができる
  • 少なくとも1ヶ月に1回の受診が可能
  • アレルギー反応など副作用が起きうる
  • 全ての人に効果があるわけではないことをご理解いただける

ダニ舌下免疫「アシテア」について

アテシアは、ミティキュアと同様、ダニ抗原が含有された舌下免疫療法の薬剤です。アシテアの投与方法としては100単位(IR)より開始し、「100単位(IR)ずつ300単位(IR)まで増量」という方法をとります。単位数は一見少なく見えますが、ミティキュアの5.7倍の量が含まれているので、ミティキュアで効果が乏しい方もアシテアに変更することで効果が得られる可能性があります。基本的には、まずはミティキュアを服用していただき、ミティキュア治療中の患者さんに対して、アテシアへの切り替えをご案内しています。気になるという方は、医師やスタッフへご相談ください。

抗IgE抗体療法(ゾレア)

「重症以上」のスギ花粉症患者さんに対する新しい治療で、2020年より保険適応となりました。

どんな薬?

まずは、アレルギーを引き起こす仕組みの話をさせてください。花粉などの抗原(異物/アレルゲン)が体の中に入ってくると、体はアレルゲンを除去しようとIgEという物質(IgE抗体)を作ります。そして次にアレルゲンが入ってくるとIgE抗体とくっつき、それが肥満細胞に結合することで肥満細胞からヒスタミンなどアレルギーを引き起こす物質が放出されます。こうして、花粉症の症状(かゆみ、鼻水、鼻詰まり)を引き起こします。
そして、今回の抗IgE抗体(ゾレア)はIgEに結合し、肥満細胞にIgEが結合しにくくすることで、ヒスタミンなどの分泌を強力に抑制し、アレルギー反応が出にくくするものです。
抗IgE抗体療法(ゾレア)

対象

以下の条件を満たす必要があります。
  • スギ花粉症の方(血液検査でスギ花粉クラス3以上、総IgE値が30以上)
  • 12歳以上の方
  • 薬の効果が乏しい方
  • 従来の治療法(抗ヒスタミン薬内服・ステロイド点鼻など)を1週間以上行い、コントロール不良の重症・最重症の季節性花粉症の方

治療の流れ

1回目受診時
診察で花粉症の重症度を判定します。従来の治療(内服・点鼻)開始。また、これまでに血液検査をされていない場合は血液検査で、スギ花粉の有無・総IgE値を評価します。
2回目受診時(治療開始から1週間以上経過してから評価します)
従来の治療法に抵抗性かどうかの判断します。従来の治療抵抗性で、血液検査のスギ花粉の有無・総IgE値を評価し抗IgE抗体療法の適応があり、金額や通院間隔にご納得いただき、治療希望があれば、投与量を体重・総IgE値から計算します。
3回目受診時
抗IgE抗体(ゾレア)を投与します(投与量に応じて1-4本の皮下注射)。
以降は2-4週間ごとに受診していただき、スギ花粉の飛散時期に継続します。だいたい2-5月に1-4回程度することになります。

副作用

注射薬なので、他の注射薬同様に、注射部位の赤み・腫れは最も多く見られる副作用です。また、アナフィラキシー(湿疹、全身の痒み、呼吸困難、唇・舌・喉の腫れ、血圧低下など)の症状があった場合は、近くの医療機関に早急に受診しましょう。尚、臨床試験では、気管支喘息の方でアナフィラキシー反応は0.2%に報告されていますが、慢性蕁麻疹・花粉症の国内試験ではアナフィラキシー反応はみられていません(ノバルティス ファーマ株式会社のデータより)。

費用

従来のスギ花粉症治療よりもとても高額になります。3割負担の方でも、抗IgE抗体(ゾレア)の薬の費用だけで約4500円〜約70000円かかります(投与量・注射回数により異なります)。更に、それぞれの受診時の診察料・検査料・内服や点鼻の薬の費用がかかります。治療費が高額になった場合、高額療養費制度による医療費の一部が払い戻しや、小児は自治体によっては医療費助成が受けられることがあります。

予防について

原因となっている抗原物質(アレルゲン)から遠ざかること触れないようにすること(回避)と取り除くこと(除去)が大切になります。
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の方の場合は、花粉の飛散時期は花粉情報に注意し、外出を控え、外出時はメガネやマスクを着用し、帰宅時は髪の毛や衣服についた花粉を持ち込まないようにしましょう。また、帰宅後の洗顔・うがい・鼻かみで花粉を取り除きましょう。
通年性アレルギー性鼻炎の方の場合は、ダニが増えるような環境にしないようにすることが大切です。こまめに掃除機をかける(週2回以上)、空気清浄機を使用する、部屋の換気を行う、部屋の温度を20-25℃・湿度を50%前後に保つ、絨毯や布のカーペット・ソファーを控える、ベッドのシーツや枕カバーを頻回に洗濯するなどが重要です。

当クリニックで実施しているアレルギー検査

通常の採血でのアレルギー検査に加え、ドロップスクリーンというごく少量の血液でアレルギー検査を行える機械を導入しています。
1滴(20μL)で検査できます。検査項目は下記41項目で、保険が適応されます。
ご希望の方やご不明な点はスタッフへお尋ねください。
当院で実施しているアレルギー検査
当院で実施しているアレルギー検査