
「耳掃除は毎日したほうが清潔」
「耳あかは全部取ったほうがいい」
そう思って、毎日のように耳掃除をしている方も少なくありません。
しかし近年、頻回な耳掃除(耳かき)が、外耳道癌との関連を示唆する研究が報告(頭頸部癌 43(1):76-78,2017)されています。もちろん、「耳掃除をすると外耳道癌になる」と証明されたわけではありませんが、必要以上の耳かきは避けた方が良いと考えられています。
外耳道癌とは?
~治らない外耳炎の中に隠れていることもある、まれながん~
外耳道癌は、耳の入り口から鼓膜まで続く「外耳道」に発生する悪性腫瘍です。頭頸部がんの中でも非常にまれな病気ですが、初期症状が外耳炎とよく似ているため、診断が遅れることがあります。
耳の痛みや耳だれ、耳のかゆみが続き、「外耳炎だから大丈夫」と思っていたら、実は外耳道癌だったというケースもあります。そのため、治療しても改善しない外耳炎では、詳しい検査が重要になります。
外耳道癌の原因は?
はっきりした原因はまだ分かっていませんが、
・慢性的な外耳炎
・長期間続く耳だれ
・放射線治療の既往
・慢性的な炎症や刺激
などが関係すると考えられています。
「頻回な耳掃除」にも注意
近年、日本から興味深い研究が報告されています。東京大学の研究では、50歳未満の外耳道癌患者さんでは、「1日に1回以上の耳掃除」や「竹製などの硬い耳かき」を使う習慣が、健康な方よりも多いことが報告されました。また、右利きの方では右耳に外耳道癌が多いことも報告(Laryngoscope. 2017)されており、日常的な耳かきによる慢性的な刺激が関係している可能性が示唆されています。
もちろん、耳掃除をしたから必ず外耳道癌になるわけではありません。しかし、毎日のような耳掃除は外耳道の皮膚を傷つけるため、必要以上の耳掃除は控えることがすすめられています。

こんな症状は要注意
次のような症状が続く場合は、一度耳鼻咽喉科を受診しましょう。
・耳だれがなかなか治らない
・血が混じった耳だれ
・強い耳の痛み
・耳のかゆみが長く続く
・外耳炎を何度も繰り返す
・聞こえが悪くなった
・顔の動きが悪くなった
特に「外耳炎の治療をしているのに改善しない」という場合には、生検(組織検査)が必要になることがあります。
九州大学耳鼻咽喉科や九州がんセンター頭頸科から世界へ発信している研究
外耳道癌・側頭骨癌は非常にまれな病気であるため、世界的にも治療に関するデータは限られています。
そのような中で、九州大学耳鼻咽喉科と九州がんセンター頭頸科は世界でも有数の症例数を有し、以下のように多くの研究成果を世界に向けて発表しています。これらの研究は、現在の診療方針にも大きく貢献しています。
・早期発見及び完全切除が重要
・血液検査から「治療の見通し」を予測できる可能性
・がんを攻撃する「免疫」の働きの解明
・外耳道癌の遺伝子異常を世界に先駆けて解析
・外耳道癌の手術方法をさらに進歩
Japanese Journal of Head and Neck Cancer. 2020;46(1):11-17.
Cancer Science. 2020;111: 3010 – 3019
Laryngoscope. 2021;131(8): 1782 – 1789
Laryngoscope. 2021;131(12): 2674 – 2683.
Cancers. 2023;15:4289
Otology & Neurotology. 2025;46:972-977
Cancer Research Communications. 2026;6(2):260-272.
外耳道癌がどのような遺伝子異常によって発生・進行するのかが明らかになりつつあり、将来的には分子標的治療や個別化医療につながることが期待されています。
外耳道癌は非常にまれな病気ですが、その診断や治療は日々進歩しています。私自身も、九州大学耳鼻咽喉科・九州がんセンターで行われた外耳道癌に関する研究の一部に携わることができたことを、大変誇りに思っています。これからも最新の知見を日々の診療に生かし、地域の皆さまへ質の高い医療を提供できるよう努めてまいります。
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