帯状疱疹になると脳梗塞のリスクが高まる?

帯状疱疹は「皮膚だけ」の病気ではありません

最近、CMで「帯状疱疹ワクチン」という言葉を聞く機会が増えていると思います。

「帯状疱疹」と聞くと、皆さんは帯状の皮膚の赤い発疹・水疱や痛みを想像すると思います。耳鼻科領域では、顔面の感覚神経である三叉神経領域の障害や顔面神経麻痺などで受診され、治療を行うことがあります。子供の頃にかかったウイルスが潜んでおり、免疫の低下・加齢などで再活性化することで、顔面領域の皮膚症状や顔面神経麻痺などを引き起こします。治療は基本的に抗ウイルス薬やステロイド、痛み止めを中心に治療を行います。

皆さんは帯状疱疹と聞くと、その後の痛みのみが印象的だと思いますが、実は脳梗塞の危険性も高くなることはご存知でしょうか。

〜実は脳梗塞のリスクが高まることがあります

「帯状疱疹は皮膚の病気」と思われている方は多いのではないでしょうか。

確かに帯状疱疹は、赤い発疹や水ぶくれ、強い痛みを伴う皮膚の病気です。しかし近年の研究では、帯状疱疹は皮膚だけでなく血管にも影響を及ぼし、一時的に脳梗塞のリスクを高める可能性があることが明らかになってきました。

今回は、帯状疱疹と脳梗塞の関係について、耳鼻咽喉科専門医の立場から分かりやすく解説します。

帯状疱疹とは?

帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)の原因である水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus:VZV)が原因です。子どもの頃にかかった水ぼうそうが治った後も、このウイルスは完全には体からいなくなりません。

神経節という神経の根元に何十年も潜伏し、加齢・疲労・ストレス・睡眠不足・病気などによる免疫力低下が引き金となり再び活動し始めてしまいます。

その結果、神経に沿って、「ピリピリした痛み」「発疹」「水ぶくれ」が帯状に現れます。

なぜ帯状疱疹で脳梗塞が起こるのでしょうか?

帯状疱疹ウイルスは神経に沿って広がるだけではありません。

近年の研究では、神経から血管へ広がり、血管の壁に炎症(血管炎)を起こすことが分かっています。

血管に炎症が起こる

→血管が狭くなる

→血液が流れにくくなる

→血栓(血の塊)ができやすくなる

という経過で脳の血流が妨げられ、脳梗塞が起こることがあります。

この病態はVZV血管症(Varicella-zoster vasculopathy)と呼ばれています。

頭頸部、とくに顔面や耳の帯状疱疹では脳へ向かう血管に近い場所で炎症が起こるため、より注意が必要と考えられています。

発症後1か月は特に注意

帯状疱疹による脳梗塞は、いつでも起こるわけではありません。

世界中の多くの研究では、帯状疱疹を発症してから最初の数週間〜1か月が最も危険な時期であることが示されています。

その後は徐々にリスクは低下しますが、約6か月〜1年程度は通常より高い状態が続くという報告もあります。

特に耳鼻科も密接に関わる領域である、

・顔の帯状疱疹

・目の周囲の帯状疱疹(眼部帯状疱疹)

では脳梗塞のリスクがさらに高くなることが報告されています。

どれくらいリスクは高くなるの?

研究によって数値は多少異なりますが、帯状疱疹発症後1か月以内では脳梗塞の発症リスクがおよそ1.5〜2倍になることが報告されています。

また、眼部帯状疱疹では、それ以上にリスクが高くなる可能性が示されています。もちろん、帯状疱疹になった方すべてが脳梗塞になるわけではありません。しかし、「皮膚だけの病気ではない」という認識を持つことが大切です。

特に注意したい方

次のような方では、もともとの脳梗塞リスクに帯状疱疹の影響が加わるため、より注意が必要です。

・65歳以上

・高血圧

・糖尿病

・脂質異常症

・喫煙

・心臓病(不整脈など)

・顔や耳、目の周囲に帯状疱疹ができた方

これらに当てはまる方は、帯状疱疹をきっかけに脳梗塞を起こさないよう、体調の変化に十分注意しましょう。

こんな症状があればすぐ救急受診

帯状疱疹の治療中でも、以下の症状が現れた場合は脳梗塞の可能性があります。

・顔がゆがむ

・手足に力が入らない

・手足がしびれる

・ろれつが回らない

・言葉が出ない

・急に片目が見えにくくなった

・強いめまいや歩けない

脳梗塞は時間との勝負です。症状に気づいたら様子を見ずに、119番通報または救急病院を受診してください。

但し、脳梗塞ではなく顔面神経麻痺のみであれば耳鼻科受診をお勧めします。麻痺の程度により追加の検査や治療が必要になることがあります。

〜帯状疱疹になったら大切なこと

①できるだけ早く治療を開始する

帯状疱疹は、発症から72時間以内に抗ウイルス薬を開始することで、以下のことが期待できます。

・症状を軽くする

・発疹を早く治す

・帯状疱疹後神経痛(PHN)を減らす

痛みが強い場合には鎮痛薬を併用することもあります。

②生活習慣病をしっかり管理する

帯状疱疹そのものだけでなく、血圧 ・血糖値 ・コレステロール を適切に管理することも、脳梗塞予防につながります。

また、禁煙 ・十分な睡眠 ・バランスの良い食事も重要です。

〜ワクチンは重い合併症の予防にも期待〜

現在、日本では帯状疱疹ワクチンが接種できます。

ワクチンには以下の効果が確認されています。

・帯状疱疹そのものを予防する

・帯状疱疹後神経痛を減らす

さらに近年では、帯状疱疹を予防することで、結果的に帯状疱疹後の脳梗塞リスクも減少する可能性が報告されています。特に50歳以上の方や、免疫力が低下しやすい方は、ワクチン接種を検討するとよいでしょう。

※当院では不活化ワクチンのみ接種可能です。ご希望の方は電話にてお問い合わせください。

〜耳鼻咽喉科で注意していること〜

耳鼻咽喉科では、耳や顔面の帯状疱疹を診療する機会が多くあります。

代表的なものとして、以下のものが挙げられます

・ラムゼイ・ハント症候群(耳性帯状疱疹)

・三叉神経領域の帯状疱疹

・眼部帯状疱疹

これらは顔面神経麻痺や難聴、めまいなどを引き起こすだけでなく、まれに脳の血管へ影響を及ぼす可能性もあるため、神経症状や脳梗塞を疑う症状がないか慎重に診察しています。

〜まとめ〜

帯状疱疹は、単なる皮膚の病気ではありません。

ウイルスが血管に炎症を起こすことで、一時的に脳梗塞のリスクが高まることがあります。特に発症後1か月は注意が必要で、顔や耳、目の周囲の帯状疱疹ではより慎重な経過観察が望まれます。

帯状疱疹を疑う症状があれば、できるだけ早く耳鼻咽喉科や皮膚科を受診し、適切な治療を開始しましょう。また、50歳以上の方やリスクの高い方は、帯状疱疹ワクチンも有効な予防手段の一つです。

皮膚症状だけでなく、「ろれつが回らない」「手足が動かしにくい」「顔がゆがむ」などの症状があれば、迷わず救急受診することが大切です。

参考文献

Langan SM, et al. Clin Infect Dis. 2014;58:1497-1503.

Breuer J, et al. Neurology. 2014;82:206-212.

Gilden D, et al. Lancet Neurol. 2009;8:731-740.

Cohen JI. N Engl J Med. 2013;369:255-263.

日本皮膚科学会. 帯状疱疹診療ガイドライン 2025.

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2026年07月28日