
「鼻水が喉に流れてきて、苦い味がする」
「喉の奥から嫌な味がする」
「鼻水が生臭い、腐ったような味がする」
「口の中が変な味になって、口臭も気になる」
このような症状で当院を受診される方が多くいらっしゃいます。
鼻水が鼻の前ではなく、喉の方へ流れてくることを「後鼻漏(こうびろう)」といいます。
後鼻漏そのものでも不快な味を感じることがありますが、特に「いつもと違う味がする」「臭い・まずい」「片側だけから流れてくる」といった場合には、副鼻腔炎(蓄膿症)などの病気が隠れていることがあります。
今回の記事では、「変な味のする後鼻漏」について、考えられる原因や耳鼻咽喉科で行う検査、治療について解説します。
〜そもそも「後鼻漏」とは?〜
鼻や副鼻腔では、正常な状態でも粘液が作られています。
この粘液は鼻の中を乾燥や異物から守る働きをしており、その一部は喉の方へ流れて、知らないうちに飲み込まれています。
そのため、鼻水が喉へ流れること自体は必ずしも病気ではありません。
しかし、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによって鼻水の量が増えたり、粘り気が強くなったりすると、
「鼻水が喉に張り付く」
「痰が絡んでいる感じがする」
「何度も咳払いをしたくなる」
など、喉へ流れる鼻水を強く自覚するようになります。
これが一般的に「後鼻漏」と呼ばれる症状です。
〜なぜ後鼻漏で「変な味」がするのでしょうか?〜
「味」というと舌で感じていると思われがちですが、食べ物は風味といって嗅覚も非常に大きく関係しています。
鼻や副鼻腔から出た分泌物が喉へ流れると、その分泌物そのものの味に加えて、鼻の奥で感じる「におい」が組み合わさり、
「苦い」「まずい」「生臭い」「腐ったような味がする」
などと感じることがあります。
そのため、患者さんが「変な味」と表現されていても、実際には「変なにおい」を同時に感じている場合があります。

<変な味のする後鼻漏で考えられる主な原因>
① 副鼻腔炎(蓄膿症)
まず考えられるのが副鼻腔炎です。
副鼻腔炎では鼻の周囲にある「副鼻腔」に炎症が起こり、粘り気のある鼻水や膿性の分泌物がたまります。
それが鼻の奥から喉へ流れることで、
・苦い
・まずい
・生臭い
・嫌なにおいがする
などと感じることがあります。
黄色や緑色の鼻水、鼻づまり、嗅覚低下、頭痛、頬の痛みなどを伴う場合には、副鼻腔炎がないか確認する必要があります。
② 歯が原因の「歯性上顎洞炎」
特に注意したいのが、歯が原因となって起こる副鼻腔炎(歯性上顎洞炎)です。
上の奥歯の根っこと副鼻腔の一つである「上顎洞」は非常に近い位置にあります。
そのため、以下のことをきっかけとして、歯の炎症が上顎洞へ広がることがあります。
・虫歯
・歯周病
・歯の根の炎症
・抜歯後
・インプラント治療後
歯性上顎洞炎では、「腐ったようなにおい」「嫌な味」がみられることがあります。
また、通常の副鼻腔炎と異なり、「右だけ」「左だけ」という片側性の症状が重要な手がかりになります。
「歯が原因なら歯が痛くなるのでは?」と思われるかもしれませんが、歯性上顎洞炎でも歯の痛みがないことがあります。
そのため、
「片側だけから臭い鼻水が出る」
「片側だけ後鼻漏がある」
「腐ったような味・においがする」
という場合には、歯性上顎洞炎が隠れていないか確認することが大切です。
③ アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎
アレルギー性鼻炎でも鼻水が増えるため、後鼻漏を自覚することがあります。
典型的には透明な鼻水ですが、鼻水が喉へ大量に流れることで、
「塩辛い」
「少し苦い」
などと感じる方もいます。
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみなどを伴っている場合には、アレルギー性鼻炎の可能性を考えます。
④ 上咽頭の炎症
鼻の一番奥と喉の境目を「上咽頭」といいます。
この部分に炎症があると、以下のような症状を感じることがあります。
・喉の違和感
・痰が絡む
・咳払いが多い
・後鼻漏感
・不快な味
⑤ 胃食道逆流・咽喉頭逆流(逆流性食道炎)
「変な味」の原因が鼻ではないこともあります。
胃酸や胃の内容物が食道や喉まで逆流すると、「酸っぱい」「苦い」といった味を感じることがあります。
胃酸の逆流は胸焼けだけではなく、以下のような症状が見られることもあります。
・朝起きた時に喉がおかしい
・喉がイガイガする
・咳払いが多い
・声がかすれる
⑥ 嗅覚障害・異嗅症
実際には鼻水に強いにおいがなくても、以下のようなにおいを感じる場合があります。
「焦げ臭い」
「腐ったようなにおいがする」
「何を食べても変な味がする」
この場合には、鼻水そのものではなく嗅覚の異常(異嗅症)が関係している可能性もあります。
味の特徴は原因を考える一つの手がかりになることがあります。
ただし、「この味だからこの病気」と診断することはできません。
代表的な例としては下記のものがあがります。
・苦い→ 副鼻腔炎、後鼻漏、逆流性疾患など
・酸っぱい→ 胃食道逆流・咽喉頭逆流など
・腐ったような味・臭い→ 副鼻腔炎、特に歯性上顎洞炎など
・塩辛い→ 鼻炎や後鼻漏など
・血のような味・鉄っぽい味→ 鼻出血や鼻粘膜の炎症など
味だけではなく、もっと大切なことは、鼻水の色、片側か両側か、鼻づまり、嗅覚、歯科治療歴などを総合して判断することが非常に重要です。
・鼻内視鏡検査
耳鼻咽喉科では、細いカメラを使って鼻の中を観察することができます。
重要なのは、「鼻水がどこから出ているのか」を確認することです。
例えば副鼻腔炎では、副鼻腔の出口付近から膿のような鼻水が出ていることがあります。
また、鼻ポリープ(鼻茸)の有無や、鼻粘膜の腫れなども確認します。
・CT検査
当院ではレントゲンのみならず、必要に応じてCT検査を行います。
CTでは、以下のようなことを詳しく確認することができます。
・どの副鼻腔に炎症があるか
・炎症が片側か両側か
・副鼻腔炎がどの程度広がっているか
・歯との関連が疑われるか
特に「片側の上顎洞だけに強い炎症がある」場合には、歯性上顎洞炎がないか注意して評価します。
歯が原因と考えられる場合には、歯科・口腔外科と連携して検査・治療を行うこともあります。
「後鼻漏だからこの薬」というわけではありません。
大切なのは、後鼻漏を起こしている原因を見つけることです。
副鼻腔炎であれば、鼻処置や薬物療法などを行い、病状によっては内視鏡下副鼻腔手術を検討します。
アレルギー性鼻炎であれば、抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬などを使用します。
歯性上顎洞炎であれば、鼻だけを治療するのではなく、原因となっている歯の治療が重要です。病状によっては歯科治療と副鼻腔の治療の両方が必要となります。
胃食道逆流・咽喉頭逆流や口腔疾患など、鼻以外に原因がある場合には、それぞれの病気に応じた治療を行います。
後鼻漏は比較的よくみられる症状ですが、「変な味がする」という症状が加わった場合には、原因を少し詳しく調べた方がよいことがあります。
特に、以下のような症状がある場合には、一度耳鼻咽喉科で鼻の中を確認することをおすすめします。
・黄色・緑色の鼻水が続く
・腐ったような味・悪臭がする
・右または左だけ症状が強い
・頬や歯が痛む
・最近、抜歯・根管治療・インプラントなどの歯科治療を受けた
・鼻づまりや嗅覚低下もある
・症状が長期間続いている
特に、「片側だけ」「臭い・まずい」「膿のような鼻水」という組み合わせは、副鼻腔炎や歯性上顎洞炎を見つける重要な手がかりになります。
「ただの後鼻漏だろう」と考えて長期間様子を見るのではなく、症状が続く場合には鼻内視鏡などで原因を確認してみましょう。
Q1.後鼻漏が苦い・変な味がするのは副鼻腔炎ですか?
必ずしも副鼻腔炎とは限りません。
副鼻腔炎のほか、アレルギー性鼻炎、上咽頭の炎症、胃食道逆流・咽喉頭逆流、嗅覚の異常、口腔・歯科疾患などでも「苦い」「まずい」「変な味がする」と感じることがあります。
特に、黄色や緑色の鼻水、鼻づまり、嗅覚低下、悪臭などを伴う場合には、副鼻腔炎がないか確認することが大切です。
Q2.後鼻漏が臭い、腐ったような味がします。大丈夫でしょうか?
膿のような鼻水が喉へ流れている場合、「臭い」「腐ったような味がする」と感じることがあります。
このような症状では副鼻腔炎が原因となっていることがあり、特に片側だけ症状が強い場合には、歯が原因となる「歯性上顎洞炎」にも注意が必要です。
症状が続く場合には、耳鼻咽喉科で鼻の中を確認することをおすすめします。
Q3.歯が痛くなくても、歯が原因の副鼻腔炎になることがありますか?
あります。
歯性上顎洞炎では、必ずしも歯の痛みが出るとは限りません。
「右または左だけ鼻水が出る」「片側だけ嫌なにおいがする」「腐ったような味がする」といった症状がきっかけとなって見つかることもあります。
特に、過去に上の奥歯の根管治療、抜歯、インプラント治療などを受けたことがある場合には、その情報も診断の重要な手がかりになります。
Q4.透明な後鼻漏でも病気のことがありますか?
あります。
透明な鼻水だから正常とは限らず、アレルギー性鼻炎などでも後鼻漏が起こることがあります。
一方、副鼻腔炎では黄色や緑色の鼻水がみられることがありますが、鼻水の色だけで原因を判断することはできません。
鼻づまり、くしゃみ、嗅覚低下など、ほかの症状も含めて判断します。
Q5.後鼻漏は自然に治りますか?
風邪などに伴う一時的な後鼻漏であれば、炎症が改善するにつれて自然に軽快することがあります。
しかし、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、歯性上顎洞炎などが原因の場合には、原因に対する治療が必要となることがあります。
「何週間も続いている」「一度よくなっても繰り返す」という場合には、一度原因を調べることをおすすめします。
Q6.後鼻漏は自宅で鼻うがいをすれば治りますか?
鼻洗浄(鼻うがい)は、鼻腔内の分泌物やアレルゲンなどを洗い流す方法の一つで、症状の軽減に役立つことがあります。
ただし、鼻洗浄だけで副鼻腔炎や歯性上顎洞炎などの原因そのものが治るとは限りません。
長引く場合には、鼻洗浄だけで様子を見続けず、原因を確認することが大切です。
Q7.後鼻漏は耳鼻科でどのように調べますか?
まず鼻の中を診察し、必要に応じて鼻内視鏡(鼻のカメラ)で鼻の奥まで確認します。
鼻内視鏡では、鼻水がどこから出ているのか、膿性の鼻水がないか、鼻粘膜の腫れや鼻ポリープ(鼻茸)がないかなどを確認できます。
さらに副鼻腔炎が疑われる場合には、レントゲンや必要に応じてCT検査などを行うことがあります。
「鼻水が喉に流れて変な味がする」という症状は、単なる後鼻漏だけではなく、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、歯性上顎洞炎、逆流性疾患、嗅覚異常など、さまざまな原因によって起こります。
特に注意したいのは、以下のような症状が続く場合です。
「片側だけ症状がある」
「腐ったような味・悪臭がする」
「黄色や緑色の鼻水が続く」
このような症状では、副鼻腔炎だけでなく、歯が原因となる歯性上顎洞炎が隠れていることもあります。
また、「苦い」「酸っぱい」「塩辛い」といった味の特徴は原因を考えるヒントにはなりますが、味だけで病気を診断することはできません。
後鼻漏が長く続いている場合には、「後鼻漏を止める」ことだけを考えるのではなく、なぜ後鼻漏が起こっているのかを調べ、その原因に合わせて治療することが大切です。
後鼻漏は、
「鼻水が喉に張り付く」
「痰がいつも絡んでいる感じがする」
「何度も咳払いをしてしまう」
「喉の奥から嫌な味やにおいがする」
など、患者さんによって感じ方がさまざまです。
また、後鼻漏の原因も一つではありません。
当院では、鼻の症状や経過を詳しくお聞きしたうえで、鼻の中を診察し、必要に応じて鼻内視鏡検査・レントゲン検査・CT検査などを行い、後鼻漏の原因を確認します。
特に、「後鼻漏がなかなか治らない」「薬を飲んでも繰り返す」「片側だけ臭い鼻水が出る」「変な味・嫌なにおいが続く」といった症状がある場合には、副鼻腔炎や歯性上顎洞炎などが隠れていないか確認することが重要です。
後鼻漏は、原因によって治療方法が異なります。 「後鼻漏だから仕方がない」と我慢せず、症状が長引いている場合には、なかの耳鼻科・美容皮ふ科へお気軽にご相談ください。
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