
今年は例年より早くインフルエンザが流行しており、当院にも発熱やのどの痛み、咳、鼻水などの症状で受診される患者さんが増えてきます。
その際、患者さんからよくいただく質問があります。
「熱が出てまだ数時間ですが、インフルエンザの検査はできますか?」
「インフルエンザの検査は、発熱から12時間以上経たないと正確にわからないのでしょうか?」
実は、インフルエンザの検査にはいくつかの種類があり、発症からどのくらい時間が経過しているかによって、検査の精度が変わることがあります。
なかの耳鼻科・美容皮ふ科では、約3年前からAIを活用したインフルエンザ診断支援機器「nodoca(ノドカ)」を導入し、日常診療で活用してきました。
今回は、当院でのnodocaの使用経験も踏まえながら、従来の迅速抗原検査との違いや、発症早期の検査精度、検査を受ける適切なタイミングについて、医学的医学的な研究データを交えてわかりやすく解説します。
一般的なクリニックで行われるインフルエンザ検査には、主に次の3つがあります。
① AI検査「nodoca(ノドカ)」(のどの写真撮影で検査・診断)
専用のカメラでのどの奥を撮影し、AI(人工知能)が咽頭の状態や体温、自覚症状などを組み合わせて解析する検査です。
従来の検査とは異なり、鼻の奥に綿棒を入れる必要がなく、発症して間もない時期でも検査が可能です。
② 迅速抗原検査(鼻から綿棒をグリグリしてする検査・診断)
鼻の奥などから綿棒で検体を採取し、インフルエンザウイルスの抗原(ウイルスのタンパク質)を検出する検査です。
一般的に10〜15分程度で結果がわかり、インフルエンザA型・B型の判別も可能です。
ただし、発症して間もない時期にはウイルス量が少なく、実際にはインフルエンザに感染していても陰性となることがあります。
③ PCR検査
鼻の奥などから綿棒で検体を採取し、インフルエンザウイルスのの遺伝子を検出する検査です。遺伝子を増幅させる検査であるため一般的に抗原検査よりも感度が高いという特徴があります。
ただし、検査機器によって費用や検査時間が異なり、保険適用にも条件があります。そのため、すべての患者さんにPCR検査ができるわけではなく、すべての患者さんに必要というわけではありません。
nodocaは、AIを活用したインフルエンザ診断支援機器です。
専用のカメラでのどの奥を撮影し、扁桃や咽頭のリンパ組織などの所見をAIが解析します。
さらに、体温や自覚症状などの情報を組み合わせ、インフルエンザに特徴的な所見や症状があるかを判定します。
従来の抗原検査との大きな違いは、ウイルスそのものを検出するのではなく、インフルエンザに伴う体の変化や症状を評価することです。
<nodocaの特徴>
・鼻の奥に綿棒を入れる必要がない
・発症して間もない時期にも検査できる
・のどの画像と症状を組み合わせてAIが解析する
・AIによる判定は数秒〜十数秒程度で得られる
鼻の奥に綿棒を入れる検査が苦手な患者さんにとっても、選択肢の一つになります。
ただし、のどの奥を撮影するため、舌圧子などによる刺激や嘔吐反射が起こる場合はあります。また、軟口蓋低位といってのどの奥が体質的に観察しにくい人や扁桃腺が非常に大きい人がいます、そのような人にもNodocaは困難です。従いまして、当院では必ず先にのどの診察をして、その人がNodocaできるかどうかを確認してから行います!
また、現時点では6歳未満のお子さんについては有効性・安全性が確立されておらず、使用は推奨されていません。
迅速抗原検査は、インフルエンザウイルスのタンパク質(抗原)を検出する検査です。
鼻咽頭などから採取した検体を専用のキットで調べ、一般的に10〜15分程度で結果がわかります。
迅速抗原検査の大きな特徴は、ウイルス由来の抗原を直接検出することです。
一方、発症して間もない時期には、鼻やのどのウイルス量がまだ十分でないことがあり、実際にはインフルエンザに感染していても陰性になる場合があります。
これを「偽陰性」といいます。
そのため、迅速抗原検査で陰性だった場合も、インフルエンザを完全に否定できるわけではありません。

ここが今回の最も重要なポイントです。
発症12時間未満では、抗原検査の感度が低くなることがある
2021年に日本感染症学会の学術誌に掲載された国内の前向き研究では、インフルエンザ迅速抗原検査の感度が、発症からの時間によってどのように変化するかを調査しています。
PCR検査を基準とした結果は次のとおりでした。
| 発症からの時間 | 迅速抗原検査の感度 |
| 12時間未満 | 38.9% |
| 12〜24時間 | 40.5% |
| 24〜48時間 | 65.2% |
| 48時間以降 | 69.6% |
※感度とは、実際にインフルエンザに感染している人を、検査で正しく陽性と判定できる割合です。
この研究では、発症12時間未満の抗原検査の感度は38.9%でした。
つまり、この研究集団では、PCR検査でインフルエンザと確認された患者さんのうち、抗原検査で陽性になったのは約4割という結果でした。
一方、発症24〜48時間では感度が65.2%まで上昇しています。
この結果から、発症直後の迅速抗原検査は偽陰性に注意が必要であり、時間の経過とともに検出しやすくなる場合があることがわかります。
ただし、現在は従来型より感度の高い検査キットもあり、すべての抗原検査で同じ結果になるわけではありません。
nodocaの承認審査資料では、国内11施設で行われた臨床試験において、PCR検査を基準とした次の結果が報告されています。
・感度:76.0%
・特異度:88.1%
特異度とは、インフルエンザに感染していない人を正しく陰性と判定できる割合です。
さらに、発症後12時間以内の患者さんでは、nodocaの方が従来のイムノクロマト法による抗原検査よりも感度が高い傾向が認められました(ただし、この差は統計学的に有意差はなし)。
そのため、現時点では「発症12時間以内は必ずnodocaの方が正確」とまでは言えませんが、発症早期の検査方法として有用な選択肢と考えられます。
なお、nodocaの感度76.0%は、発症12時間以内だけを対象とした数値ではありません。異なる研究で得られた抗原検査の感度と単純に比較することはできませんので注意が必要です。
発症から24時間程度経過すると、鼻咽頭のウイルス抗原を検出しやすくなることがあり、迅速抗原検査の有用性が高まります。
また、迅速抗原検査は一般に特異度が高く、A型・B型の区別ができるという利点もあります。
一方、nodocaは症状や咽頭所見から判定するため、インフルエンザ以外の感染症でも陽性となる可能性があります。
つまり、発症から時間が経過している場合には、ウイルス抗原を直接検出できる迅速抗原検査を選択する意義が大きくなります。
ただし、発症から何時間経ったかだけで優劣が決まるわけではありません。患者さんの年齢や症状、検査目的なども考慮する必要があります。
発症からの時間による検査の考え方
| 発症からの時間 | 検査の考え方 |
| 12時間未満 | 抗原検査の偽陰性に注意。nodocaも有用な選択肢 |
| 12〜24時間 | どちらも選択肢。症状や検査目的で判断 |
| 24〜48時間 | 抗原検査の感度が高まりやすい時期 |
| 48時間以降 | 病状や検査目的に応じて判断 |
※これは一般的な傾向であり、時間だけで検査方法が決まるわけではありません。

| 比較項目 | nodoca | 迅速抗原検査 |
| 検査方法 | 咽頭画像+診療情報をAI解析 | ウイルス抗原を検出 |
| 鼻の奥への綿棒 | 不要 | 通常必要(鼻出血に注意が必要) |
| 発症12時間未満 | 早期検査の選択肢 | 偽陰性に注意 |
| 発症24〜48時間 | 検査可能 | 検出感度が高まりやすい |
| A型・B型の区別 | 不可 | 可能 |
| 主な長所 | 鼻咽頭採取が不要 (鼻からの綿棒不要) | ・ウイルス抗原を直接検出 ・複数の抗原を同時に検査可能 |
| 主な注意点 | ・のどの観察が苦手な人はできないことがあります ・他の感染症との判別に限界 | 発症初期の偽陰性 |
なかの耳鼻科・美容皮ふ科では、約3年前からnodocaを導入し、インフルエンザが疑われる患者さんの診療に活用しています。
nodocaの大きな特徴は、鼻の奥に綿棒を挿入せずに検査ができること、そして発症早期にも使用できることです。
一方で、nodocaはウイルスそのものを検出する検査ではないため、AIの判定結果だけでインフルエンザと確定できるわけではありません。
そのため、当院では検査結果だけでなく、発症からの時間、発熱の程度、咳やのどの症状、周囲の流行状況などを総合的に判断することを大切にしています。
また、必要に応じて迅速抗原検査など、ほかの検査方法も検討します。
「発熱してすぐだから検査ができない」と一律に考えるのではなく、その時点でどのような検査や診療が適切かを判断することが重要です。
Q. 発熱して3時間しか経っていません。インフルエンザの検査はできますか?
はい。発症直後でも検査は可能です。
ただし、従来の迅速抗原検査では、発症早期に陰性となることがあります。
nodocaも早期に使用できる検査ですが、陰性であってもインフルエンザを完全に否定できません。
Q. nodocaは小さな子どもでも検査できますか?
nodocaは6歳以上の患者さんを対象として、有効性と安全性が確認されています。
6歳未満のお子さんについては、臨床試験で十分な評価が行われておらず、検査の正確性や安全性が確立されていないため、使用が推奨されていません。
これは、6歳未満のお子さんに危険であることが証明されたという意味ではなく、検査の信頼性を裏付けるデータが不足しているためです(のどの写真撮影が難しい、成長・発達の影響など)。
当院では、6歳未満のお子さんには、症状や発症からの経過時間に応じて、従来の迅速抗原検査などを検討します。
Q. nodocaで陽性なら、インフルエンザと確定できますか?
nodocaはインフルエンザ診断を補助する医療機器であり、検査結果だけで確定診断することを目的としていません。
医師が症状や診察所見、周囲の流行状況などと組み合わせて判断します。
Q. 抗原検査で陰性でしたが、翌日もう一度検査した方が良いですか?
発症早期に検査を受けた場合、時間が経過してから再検査することで陽性になることがあります。
ただし、すべての患者さんに再検査が必要なわけではありません。症状の経過や重症化リスクなどを考慮して判断します。
Q. 検査が陰性なら、インフルエンザの治療薬は使えませんか?
必ずしもそうではありません。
インフルエンザが強く疑われる場合には、検査結果だけでなく、症状や患者さんの周囲の流行状況などを踏まえて治療を判断することがあります。
特に重症化リスクの高い患者さんでは、検査結果を待つことで抗インフルエンザ薬の開始が遅れないようにすることが重要です。
Q. 発熱から12時間経つまで受診を待った方が良いですか?
いいえ。必ずしも12時間待つ必要はありません。
インフルエンザの治療薬は、一般的に発症から48時間以内に開始することで効果が期待できます。
特に高熱が続く場合や、呼吸が苦しい場合、ぐったりしている場合などは、検査のタイミングを待たずに早めの受診が大切です。
〜まとめ〜
インフルエンザ検査は発症からの時間に応じた選択が大切です。
インフルエンザ検査には、それぞれ特徴があります。
発症して間もない時期は、従来の迅速抗原検査で偽陰性となることがあるため、nodocaなどの検査方法も選択肢になります(当院では年齢・のどの状況などで判断します)。
発症からある程度時間が経過した時期には、ウイルス抗原を直接検出できる迅速抗原検査が有用です。
ただし、どちらの検査も万能ではありません。
大切なのは、発症からの時間だけでなく、症状や診察所見、周囲の流行状況などを総合的に判断することです。
「発熱から12時間経っていないから、まだ受診できない」と考える必要はありません。
症状がつらい場合やインフルエンザが心配な場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
発熱やのどの痛み、咳、鼻水などの症状がある場合には、インフルエンザをはじめ、さまざまな感染症の可能性があります。
なかの耳鼻科・美容皮ふ科では、約3年前からAI検査「nodoca」を導入し、日常診療で活用してきました。
当院では、耳鼻咽喉科専門医の立場から、患者さん一人ひとりの症状や発症からの経過時間を踏まえ、適切な検査・治療につなげることを大切にしています。
「まだ発熱して数時間だから、受診するのは早いかな?」
「検査で陰性だったけれど、熱が続いていて心配」
そのような場合も、お気軽にご相談ください。
福岡市城南区で発熱やのどの痛み、インフルエンザの症状にお困りの際は、「なかの耳鼻科・美容皮ふ科」へご相談ください。
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明石祐作ほか.感染症学雑誌.2021
厚生労働省.nodoca 製品概要・臨床上の有用性.医療機器承認関連資料.
アイリス株式会社.AI搭載インフルエンザ検査医療機器 nodoca:製品情報・臨床性能.
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