正しい鼻のかみ方とは?イグ・ノーベル賞を受賞した研究から耳鼻科医が解説

「鼻水が出たら鼻をかむ」

当たり前のように行っている動作ですが、皆さんは「正しい鼻のかみ方」を考えたことがありますか?

実は2026年、この「鼻のかみ方」を科学的に調べた日本の研究が、イグ・ノーベル賞の医学賞を受賞し、大きな話題となりました。

今回は、約50年前に日本の耳鼻咽喉科医が行った研究を紹介しながら、耳鼻科医がおすすめする正しい鼻のかみ方について解説します。

「鼻のかみ方」の研究がイグ・ノーベル賞を受賞!

2026年9月、旭川医科大学名誉教授の故・海野徳二先生と矢島洋先生による研究「鼻のかみ方―擤鼻の気体動力学的研究―」が、第36回イグ・ノーベル賞の医学賞を受賞しました。

イグ・ノーベル賞は、「まず人々を笑わせ、そして考えさせる」研究に贈られるユニークな賞です。

今回受賞した研究が発表されたのは、なんと1977年

約50年前に『日本耳鼻咽喉科学会会報』に掲載された、れっきとした耳鼻咽喉科の研究です。

研究者たちは、

「そもそも私たちは、本当に正しく鼻をかめているのだろうか?」

という身近な疑問に着目しました。 そして実際に鼻から出る空気の速度や量、鼻をかむ時間、さらに耳への圧力変化などを測定し、「どのように鼻をかむのが効率的なのか」を科学的に調べました。

研究で分かった「上手な鼻のかみ方」

この研究から示されたポイントを、分かりやすくまとめると、「片方ずつ・しっかり・長めに」鼻をかむことです。

① 両方一緒ではなく「片方ずつ」

まず大切なのが、左右の鼻を片方ずつかむこと。

鼻の通りやすさには左右差があります。

両方の鼻を同時にかむと、空気が通りやすい側に流れてしまい、鼻づまりの強い側では十分な気流が得られないことがあります。

そこで、片方の鼻を指で押さえ、反対側だけから空気を出すことで、効率よく鼻をかむことができます。

② 鼻をかむ前に「少し息を吸う」

鼻をかむには、当然ながら吐き出すための空気が必要です。

そのため、鼻をかむ前に口から少し息を吸いましょう。

ただし、胸いっぱいに吸い込む必要はありません。 研究でも、空気を吸いすぎるとかえって吐き出しにくくなるため、無理なく吐き出せる程度に吸うことが勧められています。

「フンッ!」ではなく、ある程度長くかむ

鼻水を出そうとして、「フンッ!フンッ!」と短く力強く何度も鼻をかんでいませんか?

研究では、鼻をかむときには十分な呼気量を確保するため、ある程度時間をかけて長くかむことが重要とされています。

イメージとしては、「フンッ!」よりも「フーーッ」です。

特にお子さんへ鼻のかみ方を教えるときには、

「お口から息を吸って、片方のお鼻を押さえて、反対のお鼻からフーーッとしてみよう」

と教えてあげると分かりやすいでしょう。

「強く鼻をかんではいけない」は本当?

ここは少し注意が必要です。

一般的には、「鼻を強くかむと耳に悪い」といわれています。実際に、私自身も強くかみすぎて耳が痛くなったこともあります。更に、強い鼻かみで引き起こされる病気もあることもわかっています。

一方、今回イグ・ノーベル賞を受賞した研究では、ある程度力を入れて鼻をかみ、十分な流速を作ることが鼻汁の排出には重要とされています。

ただし、「強ければ強いほどよい」という意味ではありません。

2000年に報告された別の研究では、鼻をかんだときの鼻腔内圧は平均最大約66mmHgに達し、非常に強い圧力が発生することが分かっています。

さらに、鼻の中に造影剤を入れて鼻をかむ実験では、鼻腔内の液体が副鼻腔内へ押し込まれる現象も確認されています。

そのため実際には、

「思いきり力任せに」ではなく、「片方ずつ、しっかりと、長めに」

くらいの意識がよいでしょう。

耳鼻科医がおすすめする「正しい鼻のかみ方」

それでは、実際の手順をまとめてみましょう。

口から軽く息を吸う

片方の鼻を指でやさしく押さえる

反対側の鼻から「フーーッ」と、しっかり長めに息を出す

一度で無理に全部出そうとしない

反対側も同じようにかむ

覚え方は、「片方ずつ・しっかり・長めに」 です。

〜鼻水を「ズルズルすする」のはどう?

鼻水が出ているとき、

「かまずに、ずっとすすってしまう」

という方も少なくありません。

鼻をすすると、鼻水を外へ排出するのではなく鼻の奥へ引き込むことになります。

また、鼻の奥には鼻と中耳をつなぐ「耳管」があり、ここに影響を及ぼすことがあります。特に強く鼻をすする癖がある方では、中耳の圧力にも影響することがあります。 鼻水が出ているときには、ずっとすすり続けるのではなく、適切に鼻をかんで外へ出すことを意識しましょう。

子どもは何歳くらいから鼻をかめる?

小さなお子さんは、最初から上手に鼻をかむことはできません。

「鼻から息を出す」という動作そのものが難しいためです。

練習するときには、

ティッシュを鼻息で揺らす
「フン」ではなく「フー」と鼻から息を出す練習をする
片方の鼻を押さえて練習する

など、遊びながら覚えていくとよいでしょう。 まだ自分で上手に鼻をかめない年齢では、無理にかませる必要はありません。鼻水が多い場合には、家庭用の鼻吸引器などを上手に利用するのも一つの方法です。

〜鼻をかんでも出ないときは、無理をしない

「鼻が詰まっているから」といって、何度も力いっぱい鼻をかんでも、必ず鼻水が出るとは限りません。

鼻づまりの原因は鼻水だけではなく、

  • アレルギー性鼻炎による粘膜の腫れ
  • 風邪による鼻粘膜の炎症
  • 副鼻腔炎
  • 鼻中隔弯曲症
  • 下鼻甲介の腫れ(肥厚性鼻炎)

などの場合もあります。

このような状態では、いくら鼻をかんでも鼻づまりは改善しません。 鼻づまりや黄色・緑色の鼻水が長く続く、鼻をかんでも改善しない、頬や頭が痛い、耳が痛い・聞こえにくいなどの症状がある場合には、耳鼻咽喉科で鼻の状態を確認することをおすすめします。

約50年前の研究が、今になって世界から注目

「鼻をかむ」

あまりにも日常的な動作なので、普段はその方法について深く考えることはあまりないと思います。

しかし、

「どうやって鼻をかむのが一番効率的なのだろう?」

という素朴な疑問を、約50年前の日本の耳鼻咽喉科医が科学的に検証していました。

そして2026年、その研究がイグ・ノーベル賞という形で再び世界から注目されました。

このように日常の中に研究の種が転がっていることが改めて痛感しました。

毎日のちょっとした動作ですが、鼻のかみ方にも「コツ」があります。

鼻をかむときは「片方ずつ・しっかり・長めに」。

風邪やアレルギー性鼻炎で鼻水が出たときは、ぜひ意識してみてください。

〜参考文献

海野徳二, 矢島洋. 鼻のかみ方―擤鼻の気体動力学的研究―. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 1977

Gwaltney JM Jr, et al. Clin Infect Dis. 2000

最近の投稿はこちら

2026年09月05日