
「のどが痛くて熱が出たけれど、溶連菌?それとも扁桃炎?」
「扁桃腺に白い膿がついていると言われたけれど、溶連菌なの?」
「溶連菌と診断されたら、抗生物質は必ず飲まないといけないの?」
このような疑問を持ったことはありませんか?
のどの痛みや発熱は、子どもから大人までよく見られる症状です。特に「溶連菌」と「扁桃炎」は、似たような症状が現れるため、混同されることも少なくありません。
しかし、実は溶連菌と扁桃炎は、そもそも意味が異なる言葉です。
今回は、溶連菌と扁桃炎の違いや見分け方、必要な検査、治療法、注意すべき合併症について、耳鼻咽喉科専門医の立場からわかりやすく解説します。
まず知っていただきたいのは、溶連菌は「細菌の名前」、扁桃炎は「病気の状態」を表す言葉だということです。
・溶連菌とは?
溶連菌とは「溶血性連鎖球菌」の略称で、一般的にのどの感染症で問題となるのは、A群β溶血性連鎖球菌という細菌です。
この細菌がのどに感染すると、咽頭炎や扁桃炎を引き起こすことがあります。
特に5〜15歳くらいの子どもに多く見られますが、大人も感染することがあります。
溶連菌感染症では、のどの痛みや発熱に加えて、首のリンパ節の腫れや、体に細かい赤い発疹が出ることもあります。
・扁桃炎とは?
扁桃炎とは、のどの奥の左右にある「口蓋扁桃」に炎症が起こった状態です。
一般的に「扁桃腺が腫れている」と言われるのは、この口蓋扁桃が赤く腫れている状態を指します。
扁桃炎の原因はさまざまで、溶連菌などの細菌だけでなく、アデノウイルスをはじめとするウイルスによっても起こります。
つまり、溶連菌は扁桃炎を引き起こす原因の一つなのです。

溶連菌による咽頭炎・扁桃炎と、ウイルスによる咽頭炎・扁桃炎では、症状にいくつかの傾向があります。
| 症状 | 溶連菌性咽頭炎・扁桃炎 | ウイルス性咽頭炎・扁桃炎 |
| 発熱 | 発熱が多い | 発熱する場合もある |
| のどの痛み | 強いことが多い | 軽度から強い痛みまでさまざま |
| 扁桃の腫れ | よく見られる | よく見られる |
| 扁桃の白い付着物(白苔) | 見られることがある | 見られることがある |
| 咳・鼻水 | 比較的少ない | 比較的多い |
| 首のリンパ節の腫れ | 前頸部に圧痛を伴うことがある | 見られることがある EBウイルスでは後頸部が多い |
| 発疹 | 猩紅熱では細かい赤い発疹 | 原因ウイルスによっては出現 |
| その他 | いちご舌(舌が赤くなる)が出ることがある | EBウイルスの場合、血液検査異常(異型リンパ球・肝機能異常など)がある |
特に、溶連菌感染症では、突然の発熱や強いのどの痛みがあり、咳や鼻水が目立たないことが特徴の一つです。
ただし、これらの症状だけで確実に区別できるわけではありません。
扁桃腺に白い膿がついていたら溶連菌?
「扁桃腺に白いものがついているから、溶連菌ではないか」と心配される方もいます。
確かに溶連菌性扁桃炎では、扁桃に白い付着物(白苔)が見られることがあります。
しかし、アデノウイルスやEBウイルスなどによる感染症でも、同じような白苔が見られます。
そのため、扁桃に白苔がついているだけで溶連菌と判断することはできません。
診察では、扁桃の状態だけでなく、発熱の経過、咳や鼻水の有無、首のリンパ節の状態などを総合的に確認します。

溶連菌感染症が疑われる場合には、必要に応じて迅速抗原検査を行います。
溶連菌の迅速検査とは?
綿棒でのどの奥や扁桃の表面をぬぐい、溶連菌が存在するかを調べる検査です。
一般的には5〜10分程度で結果がわかりますが、検査キットによって所要時間は異なります。
ただし、すべての患者さんに検査が必要というわけではありません。
例えば、咳や鼻水、声がれなど、明らかにウイルス感染を疑う症状がある場合には、溶連菌の検査が不要と判断されることもあります。
また、溶連菌感染症は3歳未満のお子さんでは典型的な咽頭炎として発症することが比較的少なく、年齢や周囲の感染状況によっても検査の必要性は異なります。
検査が陰性なら溶連菌ではない?正確性は?
溶連菌の迅速抗原検査は、短時間で結果がわかる便利な検査ですが、100%正確というわけではありません。
小児を対象とした研究では、以下のように報告されています。
・感度:約86% … 溶連菌が存在する人のうち、約86%で陽性となる割合
・特異度:約95% … 溶連菌が存在しない人のうち、約95%で陰性となる割合
つまり、検査が陰性でも、実際には溶連菌に感染している場合があります。尚、検査の精度は使用する検査キットや検体の採取方法によっても異なります。
特に3歳以上の小児や思春期の患者さんでは、溶連菌感染症が疑われ、迅速抗原検査が陰性だった場合、必要に応じて咽頭培養検査などで確認することが推奨されています。
一方、成人では溶連菌感染後のリウマチ熱がまれであることなどから、迅速検査が陰性だった場合に、全例で追加の培養検査を行う必要は通常ありません。
検査結果だけでなく、症状や診察所見を合わせて判断することが大切です。
症状がなくても溶連菌検査が陽性になることもある?
実は、健康で症状のない子どもでも、約8〜12%はのどに溶連菌を保菌していると報告されています。
「保菌」とは、細菌がのどに存在していても、感染症としての症状が出ていない状態です。
そのため、例えば溶連菌を保菌している子どもが、別のウイルスによってのどの痛みを起こした場合、溶連菌の迅速検査が陽性になることがあります。しかし、この場合、のどの痛みの原因はウイルスである可能性があります。
溶連菌検査が陽性でも、必ずしも現在の症状の原因が溶連菌とは限らないということです。
このため、症状のない方にむやみに検査を行うことは、通常推奨されません。
耳鼻咽喉科では、発熱、のどの痛み、扁桃の状態、咳や鼻水の有無などを総合的に確認し、検査の必要性や結果を判断することが大切です。
治療を考えるうえで最も重要なのは、原因が細菌なのか、ウイルスなのかという点です。
溶連菌の検査結果は治療方針を決めるうえで重要ですが、検査が陽性であっても、保菌の可能性を含めて症状や診察所見を総合的に判断することが大切です。
・溶連菌性咽頭炎/扁桃炎の場合
溶連菌による感染症と診断された場合には、抗菌薬(抗生物質)による治療を行います。
一般的に使用されるのは、ペニシリン系抗菌薬であるアモキシシリンなどです。
溶連菌に対して適切な抗菌薬を使用することで、症状の持続期間を短縮し、周囲への感染を減らす効果が期待できます。
また、急性リウマチ熱などの合併症を予防する目的もあります。
アモキシシリンなどでは通常10日間の治療が基本となりますが、薬剤や患者さんの状態によって治療期間は異なります。
症状が改善しても、自己判断で薬を中止せず、指示された期間を守ることが大切です。
・ウイルス性咽頭炎/扁桃炎の場合
ウイルスが原因の場合、通常は抗菌薬を使用しません。
治療は、解熱鎮痛薬による痛みや発熱の緩和、水分補給、十分な休養などが中心となります。
なお、扁桃炎を引き起こす細菌は溶連菌だけではありません。細菌感染が疑われる場合でも、原因や重症度を評価したうえで抗菌薬の必要性を判断します。
「扁桃炎だから抗生物質が必要」というわけではないことを知っておきましょう。
多くの咽頭炎や扁桃炎は適切な治療や経過観察によって改善しますが、まれに注意が必要な合併症を起こすことがあります。
・扁桃周囲膿瘍
扁桃の周囲に膿がたまる病気です。
片側の強いのどの痛み、口が開けにくい、唾液が飲み込めない、声がこもるなどの症状が現れることがあります。
扁桃周囲膿瘍では、抗菌薬治療だけでなく、膿を排出する処置が必要となる場合があります。
・溶連菌感染後急性糸球体腎炎
溶連菌感染後、一定期間(約1-3週間)が経過してから腎臓に炎症が起こることがあります。
血尿、尿量の減少、顔やまぶたのむくみ、血圧上昇などが主な症状です。
なお、適切な抗菌薬治療を行っていても、発症を完全に予防できるわけではありません。
・急性リウマチ熱
溶連菌感染後に免疫反応によって起こる病気で、関節や心臓などに炎症を引き起こすことがあります。
現在の日本では比較的まれな合併症ですが、溶連菌性咽頭炎に対して適切な抗菌薬治療を行う理由の一つです。
<こんな症状があれば早めに受診を>
・のどの痛みが強く、水分を十分に飲めない
・片側だけのどが非常に強く痛む
・口が開けにくい
・高熱が続く、または症状が悪化している
・首が大きく腫れている
・息苦しい感じがある
特に、息苦しさ、唾液が飲み込めない、急激に悪化する首の腫れなどがある場合は、気道に影響する重い感染症の可能性もあるため、速やかな救急受診が必要です。
溶連菌感染症は、咳やくしゃみなどによる飛沫や、接触を通じて周囲の人に感染することがあります。
適切な抗菌薬治療を開始すると、一般的に24時間程度で感染性は大きく低下します。
日本の学校保健安全法では、溶連菌感染症は原則として第三種の感染症「その他の感染症」として扱われることがあり、一律の出席停止期間が定められているわけではありません。
一般的には、適切な抗菌薬を開始して24時間程度が経過し、発熱がなく、全身状態が良好であることが登園・登校再開の目安になります。
ただし、学校や保育施設のルール、医師の判断に従ってください。
その他の感染症(インフルエンザ・コロナなど)の隔離期間・療養期間については過去の記事をご参照ください。
Q. 溶連菌は熱がなくても感染していることがありますか?
はい。発熱が目立たない場合もあります。
また、症状がなくても、のどに溶連菌が存在する「保菌」という状態があります。
検査が陽性でも、必ずしも現在の症状の原因が溶連菌とは限らないため、検査の必要性や結果の解釈には注意が必要です。
Q. 溶連菌は何度も感染しますか?
はい。溶連菌にはさまざまな型があることなどから、一度感染しても再び感染することがあります。
ただし、繰り返し検査が陽性となる場合には、無症状の保菌状態にウイルス感染が重なっている可能性もあります。
Q. 抗生物質を飲めば、すぐに治りますか?
適切な抗菌薬治療を開始すると、一般的には24〜48時間程度で症状が改善し始めることが多いです。
ただし、改善までの時間には個人差があります。治療開始後48時間程度経過しても改善しない場合や、症状が悪化する場合は再度診察を受けましょう。
Q. 家族が溶連菌になったら、全員検査を受けた方がよいですか?
無症状の家族全員に検査や予防的な抗菌薬治療を行う必要は通常ありません。
ただし、家族にも発熱やのどの痛みなどの症状が現れた場合は、医療機関に相談しましょう。
Q. 溶連菌の治療後には尿検査が必要ですか?
溶連菌感染後には、まれに急性糸球体腎炎を発症することがあります。
しかし、症状がなく順調に回復している方全員に、治療後の尿検査を行う必要は通常ありません。
血尿、むくみ、尿量の減少などが見られる場合には、尿検査や血液検査などが必要になります。
のどの痛みは原因に合った治療が大切です。溶連菌と扁桃炎は混同されがちですが、溶連菌は細菌の名前、扁桃炎は扁桃に炎症が起きた状態を表します。
扁桃炎の原因はさまざまで、溶連菌などの細菌によるものもあれば、ウイルスによるものもあります。
そのため、扁桃が赤く腫れている、白い膿がついているといった見た目だけで、原因を判断することはできません。
また、すべての扁桃炎に抗生物質が必要なわけではありません。
大切なのは、症状や診察所見、必要な検査から原因を見極め、それぞれに合った治療を行うことです。
福岡市城南区の「なかの耳鼻科・美容皮ふ科」では、お子さんから大人の方まで、のどの痛みや発熱、扁桃炎などの診察を行っています。
「のどが痛くて食事がとりにくい」
「扁桃腺が腫れている」
「子どもが溶連菌に感染していないか心配」
このような症状でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
耳鼻咽喉科専門医が、のどの状態や症状の経過を確認し、必要に応じた検査と治療をご提案します。
福岡市城南区や周辺地域で、のどの痛みや扁桃炎、溶連菌感染症が気になる方は、なかの耳鼻科・美容皮ふ科へご相談ください。
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厚生労働省. 抗微生物薬適正使用の手引き 第四版
Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Clinical Guidance for Group A Streptococcal Pharyngitis. Updated November 18, 2025.
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