唾液腺にできる石(唾石症)の症状と治療法|何科を受診?

食事を始めると急に顎の下や耳の周りが腫れて痛むものの、しばらくすると症状が引いてしまうため、何が起きているのか分からず不安に感じていませんか。

この記事を読めば、ご自身の症状が「唾石症」である可能性を判断し、何科を受診してどのような治療を受けるべきか、明確な指針を得られます。

〜食事のたびに顎の下が腫れて痛む?唾石症(だせきしょう)のサインと特徴〜

食事中や食後に顎の下や耳の下が急に腫れて痛むのは、唾石症の最も代表的な症状です。 この痛みは唾石痛と呼ばれ、唾液腺が腫れることで生じます。 唾液は食事を摂る際に最も多く分泌されますが、唾液の通り道である唾液管に石が詰まっていると、作られた唾液が口の中へ排出されず唾液腺内に溜まってしまいます。

その結果、唾液腺が風船のように膨らんで、強い痛みや圧迫感を引き起こすのです。 症状は数十分から数時間ほどで徐々に治まることが多いですが、食事のたびに繰り返すのが特徴です。 石が唾液腺の出口近くにある場合は、口の中から硬い石に触れることもあります。

〜唾液腺に石ができるのはなぜ?唾石(だせき)が発生するメカニズム〜

唾液腺に石が形成される明確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。 唾石の主成分は、リン酸カルシウムや炭酸カルシウムです。 

唾液に含まれるカルシウム成分が、唾液管の中にできた細菌の塊や、剥がれ落ちた粘膜上皮細胞などを核として、その周りに沈着し、時間をかけて雪だるま式に大きくなることで石が形成されるとされています。 唾液の分泌量が少なかったり、唾液の流れが滞ったりすることも、石ができやすくなる原因の一つです。

特に唾石の約8-9割は顎の下にある顎下腺に発生します。 これは、顎下腺から分泌される唾液が他の唾液腺に比べて粘り気が強く、カルシウム濃度が高いことや、唾液管が長く、唾液が重力に逆らって上に流れる構造であるため、唾液が停滞しやすいことが理由と考えられます。

上記のように、従来は唾液の停滞と石灰化が中心に考えられていましたが、近年は細菌が形成するバイオフィルムが結石形成の足場になるという仮説も注目されています(The Laryngoscope 2020)。唾石の内部に細菌、細胞外多糖、免疫細胞、カルシウムナノ粒子などを含む構造が観察され、バイオフィルムが結石形成に関与する可能性が示されました。ただし、すべての唾石に細菌が存在するわけではなく、細菌が最初の原因なのか、形成過程で取り込まれたのかについては議論が残っています。

〜痛みが引いても放置は危険!唾石症が悪化するリスクとは〜

食事の際の痛みが一時的に治まるため、つい受診を先延ばしにして放置してしまう方も少なくありません。 しかし、唾石症を放置すると、唾液腺の炎症が悪化するリスクがあります。 唾液の流れが悪い状態が続くと、唾液腺内に細菌が侵入・繁殖しやすくなり、「化膿性唾液腺炎」を引き起こすことがあります。

この状態になると、食事とは関係なく常に強い痛みや腫れが生じ、高熱が出たり、首の皮膚が赤く腫れ上がったりします。 さらに悪化すると、膿が溜まって「唾液腺膿瘍」を形成することもあり、その場合は皮膚を切開して膿を出す処置が必要になることもあります。 痛みが引いたからといって安心せず、症状に気づいたら早めに医療機関を受診することが重要です。

〜唾石症は何科を受診すべき?耳鼻咽喉科が推奨される理由〜

顎の下や耳の下の痛みや腫れがある場合、何科を受診すればよいか迷うかもしれませんが、まずは耳鼻咽喉科を受診することを推奨します。 耳鼻咽喉科は、耳・鼻・のどだけでなく、唾液腺や甲状腺などを含む首から上の「頭頸部」領域を専門とする診療科です。 唾石症の診断から治療までを専門的に行っており、必要な検査設備も整っています。

また、診察のみならず下記のように頚部エコー検査で、唾石症と症状が似ている他の病気(リンパ節炎、唾液腺腫瘍など)との鑑別診断も可能です。 口の中に石がある場合など、症状によっては歯科・口腔外科でも対応可能なことがありますが、まずは首周りの器官を総合的に診療できる耳鼻咽喉科への相談がスムーズです。

以前のブログ記事でで、首のしこりが気になる方へや首のしこりは何科を受診すべきかでまとめておりますのでこちらもご参照ください。

〜病院/クリニックではどんな検査をする?唾石症の診断方法〜

病院/クリニックでは、まず問診で「いつから、どんな時に、どのあたりが痛むか」といった症状を詳しく確認します。 その後、医師が首の周りや口の中を直接触って、腫れの程度や石の有無を確かめる触診を行います。 診断を確定させるためには、画像検査が重要です。

超音波(エコー)検査は、身体に負担なく唾液腺の腫れ、唾液腺管の拡張の有無や石の有無を確認できるため、最初に行われることが多い検査です。 エコー検査で石が見えにくい場合や、より詳しく位置や大きさを把握する必要がある場合には、CT検査が行われます。 これらの検査によって、石の大きさ、数、存在場所を正確に特定し、最適な治療方針を決定します。

〜必ず手術が必要?自然排出から手術までの治療法を解説〜

唾石症と診断されても、必ずしもすぐに手術が必要になるわけではありません。 治療法は、石の大きさや位置、症状の程度によって異なり、自然に排出を待つ場合から、口腔内から石を摘出する方法(口内法)、唾液腺ごと摘出する手術、最近は体への負担が少ない内視鏡手術など、さまざまな選択肢があります。

医師と相談しながら、自身の状態に合った最適な治療法を選択することが大切です。

・小さな石は自然に排出されることも

唾液管の出口近くにある数ミリ程度の小さな石であれば、自然に排出される可能性があります。 唾液の分泌を促すために、水分を十分に摂取したり、酸っぱいものを食べたりすることが効果的な場合があります。 また、後述する唾液腺マッサージで唾液の流れを良くすることも、石の排出を助ける一助となります。

ただし、これらの方法を試しても症状が改善しない場合や、痛みが強い場合は、無理せず医療機関に相談してください。

・薬の服用で炎症を抑える保存的治療

唾石症によって唾液腺に細菌感染が起こり、痛みや腫れが強い場合は、まず炎症を抑えるための保存的治療が行われます。 抗生物質や消炎鎮痛剤を服用することで、細菌の増殖を抑え、つらい症状を和らげます。 この治療によって炎症が治まり、唾液の流れが改善することで、小さな石であれば自然に排出されることもあります。

しかし、薬による治療はあくまで対症療法であり、石そのものを取り除くものではないため、症状を繰り返す場合は石の摘出を検討する必要があります。

・体への負担が少ない「唾液腺内視鏡」での摘出

近年、体への負担が少ない治療法として、唾液腺内視鏡手術が注目されています。 これは、直径2mm程度の極細の内視鏡を唾液管の出口から挿入し、モニターで内部を観察しながら石を直接摘出する方法です。 口の中からアプローチするため、首の皮膚を切開する必要がなく、傷跡が残りません。また、唾液腺そのものを温存できるため、術後の唾液分泌機能への影響も少ないというメリットがあります。 ただし、非常に大きな石や、唾液腺の奥深くにある石には対応できない場合があります。

保険適応ではありますが、日本では行っている病院は非常に限られています。

・唾液腺摘出術

唾石が大きい場合、唾液腺の奥深くに石がある場合、あるいは何度も唾石を繰り返して唾液腺の機能が著しく低下している場合には、唾液腺ごと石を摘出する手術が選択されることがあります。 この手術は、首の皮膚を数センチ切開して行われることが一般的です。 根本的な原因である唾液腺を取り除くため、再発のリスクがなくなるというメリットがあります。

〜受診までの痛みを緩和する「唾液腺マッサージ」の正しいやり方〜

唾石症による痛みを一時的に和らげ、唾液の流れを促すために、唾液腺マッサージが有効な場合があります。 ただし、強い炎症がある時に行うと症状を悪化させる可能性もあるため、痛みが増す場合はすぐに中止してください。 マッサージは、あくまで応急処置として行い、根本的な解決のためには医療機関の受診が必要です。

顎下腺の場合は、顎の骨の内側の柔らかい部分に指をあて、耳の下から顎の先に向かって優しく押し上げるようにマッサージします。

耳下腺の場合は、耳たぶの前あたりに指をそろえてあて、後ろから前に向かって円を描くように優しくマッサージするのが効果的です。

〜唾液腺にできる石(唾石症)に関するよくある質問〜

ここでは、唾液腺にできる石(唾石症)に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q. 唾液腺にできた石は再発する可能性がありますか?

唾石を摘出しても、数%の方で再発する可能性があると言われています。 石ができやすい体質や生活習慣が根本的に改善されない限り、再び形成されるリスクは残ります。 特に、唾液腺を温存する治療法の場合は、再発の可能性がゼロではありません。

日頃から水分をこまめに摂取し、口腔内を清潔に保つことが再発予防につながります。

Q. 唾石症を予防するために日常生活でできることはありますか?

唾石症の確実な予防法はありませんが、リスクを減らすために日常生活で心がけられることがあります。 脱水は唾液の濃度を高めるため、一日を通してこまめに水分を摂取することが重要です。

また、よく噛んで食事をすることで唾液の分泌が促され、唾液の流れを良くする助けになります。 口腔ケアを怠らず、口の中を清潔に保つことも細菌感染の予防につながります。

Q. 子供でも唾液腺に石ができるのでしょうか?

子供が唾石症になることは非常に稀ですが、可能性はあります(唾石症の3-5%と報告されています)。 子供の場合、食事の際に耳の下や顎の下の腫れを繰り返す症状があれば、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)や反復性耳下腺炎など他の病気も考えられます。

症状に気づいた場合は自己判断せず、小児科または耳鼻咽喉科を受診して正確な診断を受けることが大切です。

〜まとめ〜

食事のたびに繰り返される顎や耳の下の痛みと腫れは、唾液腺に石が詰まる「唾石症」のサインかもしれません。 痛みが一時的に引くからといって放置すると、細菌感染を起こして症状が悪化する可能性があります。 治療法は石の大きさや場所によって様々で、自然排出を待つケースから、体への負担が少ない内視鏡手術まで選択肢があります。

気になる症状があれば、まずは頭頸部を専門とする耳鼻咽喉科に相談し、正確な診断を受けることが、つらい症状から解放されるための第一歩です。

〜福岡市城南区/福岡市中央区/福岡市早良区で顎や耳下の腫れ・痛みにお悩みなら「なかの耳鼻科・美容皮ふ科」へ〜

福岡市城南区/福岡市中央区/福岡市早良区およびその周辺地域で、食事の際の顎や耳の下の腫れ、痛みといった症状にお悩みの方は、「なかの耳鼻科・美容皮ふ科」へご相談ください。 耳鼻咽喉科の専門医が、患者さん一人ひとりの症状を丁寧に診察し、不安に寄り添いながら原因の特定と適切な治療方針のご提案をいたします。 些細なことでも構いませんので、どうぞお気軽にご来院ください。

〜なかの耳鼻科・美容皮ふ科の唾石症診断〜

当クリニックは、地域の皆さまに信頼される「かかりつけ医」として、専門性の高い医療を安心して受けていただける環境づくりを大切にしています。 唾石症が疑われる症状に対して、必要に応じて頸部エコー検査等を行いながら、的確な診断と適切な治療への道筋をご提供します。

・耳鼻咽喉科専門医が触診と問診で的確に症状を判断

院長は日本耳鼻咽喉科学会専門医であり、豊富な知識と経験に基づき、丁寧な問診と触診で症状の原因を的確に見極めます。 「いつから、どのような時に痛むか」といった患者さんのお話をじっくりと伺い、唾液腺の状態を直接触って確認することで、病状を正確に把握します。 専門家の視点から、他の病気との鑑別も含めて総合的に診断いたします。

・エコー検査による詳細な観察で唾液腺の状態を可視化

当クリニックでは、診断の精度を高めるためにエコー(超音波)検査を導入しています。 この検査により、痛みや放射線被ばくの心配なく、唾液腺の内部をリアルタイムで詳細に観察することが可能です。 石の有無はもちろん、その大きさや位置、唾液腺管の拡張の程度、唾液腺の炎症の程度などを画像で客観的に評価し、患者さんにも分かりやすくご説明した上で、最適な治療方針を決定します。

・手術が必要な場合は専門医療機関へのスムーズな連携体制

検査の結果、手術が必要となった場合でも、ご安心ください。 当クリニックでは、地域の基幹病院や大学病院と緊密な連携体制を築いています。 患者さんの症状やご希望に応じて、最適な治療が受けられる専門医療機関を迅速にご紹介し、治療への移行をスムーズにサポートいたします。

顎の下や耳の下の腫れ・痛みなど気になる症状がございましたら、お気軽にご予約の上ご来院ください。

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2026年11月04日