
「花粉症といえば春」というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
しかし、花粉症は春だけの病気ではありません。
「夏の終わり頃から、くしゃみや鼻水が増えてきた」
「9月になると毎年鼻がムズムズする」
「風邪だと思っていたけれど、なかなか鼻水が治らない」
このような症状は、もしかすると「秋の花粉症」かもしれません。
秋にはブタクサやヨモギ、カナムグラなどの花粉が飛散します。特に8月下旬から10月頃は、こうした秋の花粉によるアレルギー性鼻炎が起こりやすい時期です。
今回は、意外と知られていない「秋の花粉症」について、耳鼻咽喉科専門医の立場から分かりやすく解説します。
〜秋にも花粉症があります〜
春の花粉症の代表といえば「スギ」「ヒノキ」ですが、花粉症を引き起こす植物はそれだけではありません。
秋に注意したい代表的な植物には、
・ブタクサ
・ヨモギ
・カナムグラ
・イネ科植物
などがあります。
春はスギやヒノキなどの「樹木」の花粉が中心ですが、秋は道端や河川敷、空き地などに生えている「草・雑草」の花粉が中心となるのが大きな違いです。
福岡では、おおよその目安として、
ヨモギ:8月下旬~10月下旬
ブタクサ:9月中旬~10月下旬
カナムグラ:9月下旬~10月下旬
に花粉がみられます。
また、イネ科の花粉は春から初夏だけでなく、夏から10月上旬頃にもみられるため注意が必要です。
〜秋の花粉症ではどんな症状が出る?〜
基本的な症状は、春のスギ花粉症とよく似ています。
代表的なのは、
・くしゃみ
・透明でサラサラした鼻水
・鼻づまり
・鼻や目のかゆみ
・目の充血
・のどのイガイガ感
などです。
特に、「風邪だと思っていたけれど、熱もないのに鼻水やくしゃみだけが長く続く」という場合は、秋の花粉症も考えてみましょう。
〜「秋風邪」と「秋の花粉症」はどう見分ける?〜

季節の変わり目は風邪も増えるため、患者さんからも「風邪なのか花粉症なのか分からない」というご相談をよく受けます。
一つの目安になるのが、鼻水の性状とかゆみ、症状の持続期間です。
花粉症では、透明でサラサラした鼻水、繰り返すくしゃみ、鼻や目のかゆみが比較的特徴的です。
一方、感染症では発熱、倦怠感、咽頭痛などを伴ったり、経過とともに鼻水が粘っこくなったりすることがあります。
ただし、症状だけでは区別が難しいことも少なくありません。
〜秋の花粉は「近づかない」ことも大切です〜

スギ花粉と秋の花粉では、少し対策が異なります。
スギは高い木から花粉が飛散するため、風に乗って広い範囲まで運ばれます。
一方、ブタクサやヨモギなどは背の低い雑草です。
そのため、「原因となる植物が生えている場所に近づかない」という対策が比較的有効です。
特に、
・河川敷
・空き地
・草むら
・公園
・道路脇
などには注意しましょう。
本格的な秋になると涼しくなり、ウォーキングやジョギングを始める方も増えます。
毎年秋になると鼻炎症状が出る方は、草むらの多いルートを避けるだけでも花粉への曝露を減らせる可能性があります。
〜秋の花粉症では「咳」にも注意〜
秋の花粉症で少し注意していただきたいのが咳やのどの症状です。
ブタクサなどの花粉はスギ花粉より小さく、鼻症状だけではなく、のどの違和感や咳などを伴うことがあります。
特に喘息のある方では、秋の花粉シーズンに咳や喘鳴などの症状が悪化することもあります。
「鼻水だけでなく咳も続いている」
「毎年秋になるとのどがイガイガする」
といった場合には、花粉症が関係している可能性も考えます。
〜メロンやスイカを食べると口がかゆい人は要注意?〜
実は、秋の花粉症と食べ物には意外な関係があります。
花粉症の方の一部では、特定の果物や野菜を食べたときに、
「口の中がかゆい」
「舌がピリピリする」
「のどがイガイガする」
といった症状が出ることがあります。
これを花粉-食物アレルギー症候群(PFAS:Pollen-Food Allergy Syndrome)といいます。
例えば、
ブタクサ→ メロン、スイカ、キュウリ、ズッキーニ、バナナなど
ヨモギ→ セロリ、ニンジン、クミン・コリアンダーなどのスパイス類など
との交差反応が知られています。
「秋に花粉症があり、メロンを食べると口やのどがかゆくなる」
という方は、ぜひ診察時にお伝えください。
〜秋は「ダニアレルギー」にも注意〜
秋に鼻炎症状が悪化する原因は、花粉だけとは限りません。
特に重要なのがダニによる通年性アレルギー性鼻炎です。
ダニは高温多湿な夏に増殖し、秋になるとダニの死骸やフンなどのアレルゲンが室内環境に増えることがあります。
そのため、
「秋になると毎年鼻炎がひどくなる=秋の花粉症」
とは限りません。
ブタクサやヨモギなどの花粉症なのか、ダニによるアレルギー性鼻炎なのか、あるいは両方なのかを確認することが大切です。
〜原因を知るにはアレルギー検査も有効です〜
「自分が何のアレルギーなのか分からない」
という方には、血液検査で原因となるアレルゲンを調べる方法があります。
スギ・ヒノキだけではなく、
・ブタクサ
・ヨモギ
・イネ科
・ダニ
・ハウスダスト
・動物(イヌ、ネコなど)
など、さまざまなアレルゲンについて調べることができます。
毎年同じ時期に症状が出る方では、「いつ症状が出るか」と「何に感作されているか」を組み合わせて考えることが重要です。
当院でもアレルギー検査は可能なのでご希望の方はお気軽にお問い合わせください
〜秋の花粉症の治療は?〜
治療の基本は春の花粉症と同様です。
症状に応じて、
・抗ヒスタミン薬
・抗ロイコトリエン薬
・ステロイド点鼻薬
・点眼薬
などを使用します。
特に鼻づまりが強い方では、内服薬だけでは十分に改善しないこともあり、点鼻薬を適切に組み合わせることが重要です。
また、花粉症は症状が強くなってから治療を開始するより、毎年症状が出る時期が分かっている場合には、症状が出始める頃から早めに治療を開始(初期療法)することで、シーズン中の症状を抑えやすくなることがあります。
〜秋の花粉症を少しでも軽くするために〜
日常生活では、
・草むらや河川敷にむやみに近づかない
・草刈りの直後は特に注意する
・外出時にはマスクを活用する
・帰宅時に衣服についた花粉を落とす
・帰宅後は洗顔・うがいをする
・室内に花粉を持ち込まない
といった対策を心がけましょう。
ブタクサやヨモギは身近な場所に生えているため、原因植物を知って、その植物に近づかないことも大切な花粉対策です。
〜まとめ〜
「花粉症=春」と思われがちですが、秋にも花粉症はあります。
特に8月下旬から10月頃に、
「鼻水・くしゃみが続く」
「鼻や目がかゆい」
「毎年同じ時期に鼻炎になる」
「風邪薬を飲んでもなかなか治らない」
という方は、ブタクサやヨモギなどによる秋の花粉症の可能性があります。
また、この時期はダニによるアレルギー症状も重なるため、症状だけで原因を判断するのが難しいケースもあります。
鼻の中を実際に診察し、必要に応じてアレルギー検査を行うことで、原因を整理することができます。
秋だからといって「花粉症ではないだろう」と思わず、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどが長引く場合には、お気軽に耳鼻咽喉科へご相談ください。
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