

【耳鼻咽喉科専門医が解説】うがいは本当に効果がある?水・イソジン・アズノールの違いを医学的エビデンスから解説
「うがい」は本当に効果があるのでしょうか?
風邪が流行する季節や、のどの痛みを感じたとき、多くの方が「うがい」を行っていると思います。
また、以下のように疑問に思われる方も少なくありません。
「水で十分?」
「イソジンでうがいした方が効く?」
「アズノールはどんな時に使うの?」
「そもそもうがいって意味があるの?」
耳鼻咽喉科では頻繁に患者さんから質問を受けますが、実はうがいの目的によって適した方法は異なります。
今回は、医学論文に基づいて「うがい」の効果を分かりやすく解説します。
<うがいには2つの目的があります>
「うがい」と一言で言っても、大きく分けると目的は2つあります。
① 風邪や感染症を予防する
② のどの炎症や痛みを和らげる
この2つは全く別の目的であり、それぞれエビデンスも異なります。
① 風邪や感染を予防する
風邪予防には「水うがい」が最もエビデンスがあります
「風邪予防ならイソジンが一番効く」と思われている方は多いのですが、実はそうとは言い切れません。
最も有名な研究は、Satomuraらが2005年に発表したランダム化比較試験です。
健康な成人を以下の3群に分けて約2か月間比較しました。
・「水うがい」群
・「ポビドンヨード(イソジン)うがい」群
・「うがいをしない」群
その結果、水うがいを行ったグループでは上気道感染(風邪)の発症率が有意(約60%)に低下しました。一方で、ポビドンヨードうがいは、水うがい以上の予防効果は認められませんでした。
つまり、「風邪予防」という目的では、水うがいだけでも十分な効果が期待できることが示されたのです。
子どもでも同じような結果が報告されています
2012年には、日本の保育園児約2万人を対象とした大規模研究が報告されました(当院のある福岡市でのデータです❗️)。うがいをすることで、「病欠」「発熱」にどのくらい影響がるかを評価したものになります。
うがいすることで、発熱が起きにくくなったとされています(うがいすると32%減)。
更に詳しく何でうがいしたかを見てみると、水道水(30%減)、機能性水(54%減)、緑茶(68%減)となっていました。
しかし、病欠に関しては、有意差と言えるデータは示せていないようです。
もちろん観察研究であるため因果関係を断定することはできませんが、うがいの有用性を支持するデータと言えるのではないのでしょうか(例え水道水であっとしても)。
なぜ水だけで効果があるのでしょうか?
うがいは「殺菌すること」が目的と思われがちですが、それだけではありません。
口やのどには、
・ウイルス(風邪の原因のほとんど)
・細菌
・花粉
・ホコリ
・炎症性物質
などが一時的に付着しています。水でうがいをすると、これらを物理的に洗い流すことができます。
さらに、唾液には分泌型IgA(s-IgA)という免疫物質が含まれており、病原体が粘膜へ付着することを防ぐ働きをしています。
口やのどの粘膜免疫を保つことも、感染予防には重要なのです。
イソジンうがいは意味がないのでしょうか?
決してそうではありません。
イソジン(ポビドンヨード)は非常に強い殺菌作用・抗ウイルス作用を持っています。試験管内では多くの細菌やウイルスを短時間で不活化できることが知られています。
しかし、「風邪を予防できるか」という臨床試験では、水うがいを上回る効果は証明されていません。
また、ポビドンヨードは長期間・頻回に使用すると、
・ヨウ素の吸収
・甲状腺への影響
・妊娠中・授乳中への注意
などもあるため、予防目的で毎日使い続けることは一般的には勧められていません。
使用する場合は、短期間(数日)にしましょう❗️
② のどの炎症や痛みを和らげる
のどが痛い時のうがいは目的が異なります
ここが最も大切なポイントです。風邪予防と、「のどが痛い」「炎症を抑えたい」は全く違います。
この場合は、抗炎症作用を期待してアズノールなどの含嗽薬を使用することがあります。
アズノールうがいの効果は?
アズノール(アズレンスルホン酸ナトリウム)は、以下の作用を持つ薬です。
・抗炎症作用
・粘膜保護作用
・創傷治癒促進作用
耳鼻咽喉科や歯科口腔外科では昔から広く使用されています。
動物実験では、咽頭の炎症や血管透過性を抑制することが報告されています。
さらに、気管挿管後の咽頭痛を対象としたランダム化比較試験では、アズノールうがいを行った患者さんは、水うがいよりも咽頭痛が有意に少ないことが示されています。
また、抗がん剤治療や放射線治療による口腔粘膜炎に対しても、疼痛や炎症を軽減する報告があります。実際に、私自身が勤務医時代にも頭頸部癌患者さんの癌治療中にも頻繁に用いていました。一方で、一般的な風邪による急性咽頭炎に対して、アズノールの効果を直接証明した質の高い臨床試験はまだ多くありません。つまり、現在は基礎研究や類似病態での臨床研究を背景として使用されている薬と言えます。
尚、当院ではアズノールうがい液のみならずハチアズレ顆粒も処方しております。いずれも、主成分はアズレンスルホン酸ナトリウム水和物で剤形の違いになります。
<水・イソジン・アズノールの使い分け(まとめ)>
それぞれには得意分野及び注意点があります。
| 項目 | 水うがい | アズノールうがい | イソジンうがい |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 感染予防・洗浄 | 炎症・痛み軽減 | 殺菌・消毒 |
| 主な作用 | ウイルス/細菌/花粉/刺激物を物理的に洗い流す | 抗炎症作用 粘膜保護作用 創創治癒促進作用 | 殺菌/抗ウイルス作用 |
| 風邪予防のビデンス | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ | ★★☆☆☆ ※水うがい以上の効果の証明はない |
| のどへの抗炎症効果 | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| のどの鎮痛効果 | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ ※術後咽頭痛などに対して | ★★☆☆☆ |
| 口内炎への効果 | ★☆☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★☆☆☆☆ |
| 殺菌作用 | ☆☆☆☆☆ 物理的洗浄効果のみ | ★☆☆☆☆ 弱い | ★★★★★ 非常に強い |
| うがい時の刺激性 | ほとんど無い | 少ない | ややある |
| 毎日使用 | ◎ | ◯ 咽頭痛などの症状がある間の使用 | △ 長期間の使用は推奨できません |
| 妊娠・授乳中 | ◎ | ◯ | △ 長期間の使用は推奨できません |
| 甲状腺疾患 | ◎ | ◎ | △ ヨウ素の吸入に注意 |
| アレルギー | ほぼなし | まれ | ヨードアレルギーには禁忌 |
| 費用 | 最も安価 | 比較的安価 | 比較的安価 |
| 適している場面 | 帰宅時、風邪予防、花粉除去など | のどの痛み、咽頭炎、口内炎、術後 | 細菌感染が疑われる時のみ、短期間で |
※個人的な見解も含まれておりますのでご了承ください
いずれにしても目的やご自身の体調に合わせて選ぶことが大切です。
<耳鼻咽喉科専門医としてのメッセージ>
うがいは昔から行われている習慣ですが、現在では医学的にも一定の効果が証明されています。
特に、風邪予防には「水うがい」が最もエビデンスがあります。
一方で、のどが痛い時には、アズノールなどの抗炎症作用を持つ含嗽薬が症状緩和に役立つことがあります。
「うがい薬なら何でも同じ」ではなく、目的に応じてうがいを使い分けることが大切です。
| 状況 | オススメ |
|---|---|
| 毎日の風邪予防 | 水うがい◎ |
| 帰宅後・花粉症シーズン | 水うがい◎ |
| 喉が痛い・喉がヒリヒリする | アズノール◎ |
| 口内炎が痛い | アズノール◯ |
| 長期間毎日続ける | 水うがい◎ |
| 細菌感染が疑われる場合 | イソジン◯ |
| 自己判断で毎日イソジン | 推奨されません× |
風邪症状やのどの痛みが続く場合、高熱がある場合、飲み込みにくいほど強い痛みがある場合は、細菌感染(扁桃炎・扁桃周囲膿瘍)などの可能性もあります。自己判断だけで様子を見ず、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
参考文献
・Satomura K, et al. Am J Prev Med. 2005.
・Noda T, et al. J Epidemiol. 2012.
・Brandtzaeg P. J Oral Microbiol. 2013.
・Marcotte H, Lavoie MC. Microbiol Mol Biol Rev. 1998.
・Ogata J, et al. Anesth Analg. 2005.
・Sakai H, Misawa M. Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2005.
最近の投稿はこちら↓




