
花粉の季節でもないのに、くしゃみや鼻水、鼻づまりが一年中続いていませんか。
その不調は、単なる風邪ではなく「通年性アレルギー性鼻炎」かもしれません。
通年性アレルギー性鼻炎とは、ダニやハウスダストなどが原因となり、季節を問わずアレルギー症状を引き起こす病気です。
この記事を読めば、ご自身の鼻炎の原因を特定する方法を理解し、症状を和らげるための生活環境の整え方や、自分に合った最適な治療法を選択できます。
通年性アレルギー性鼻炎は、その名の通り、季節に関係なく一年を通じて症状が現れるアレルギー性の鼻炎です。
原因となるアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が、年間を通して身の回りに存在するために起こります。
一方で、スギやヒノキなどの花粉が原因で特定の時期だけに症状が出るものは「季節性アレルギー性鼻炎」、いわゆる花粉症と呼ばれ区別されます。
通年性アレルギー性鼻炎の症状を引き起こす主な原因は、私たちの生活空間に常に存在するアレルゲンです。
特に室内環境に潜んでいることが多く、日々の生活習慣が症状に大きく影響します。
原因を正しく理解し、対策を講じることが症状緩和の第一歩です。

通年性アレルギー性鼻炎の最も多い原因は、室内に生息するダニです。
特にチリダニのフンや死骸がアレルゲンとなりやすく、これらは非常に小さいため空気中に舞い上がり、吸い込んでしまうことでアレルギー反応を引き起こします。
ダニは高温多湿を好み、人のフケやアカをエサにするため、寝具、カーペット、布製のソファ、ぬいぐるみなどに多く潜んでいます。
ハウスダストとは、室内のホコリの中でも特に1mm以下の肉眼では確認しにくい微細な物質を指します。
これは単なるホコリではなく、ダニのフンや死骸、カビ、細菌、人のフケ、ペットの毛やフケ、繊維くずなどが混ざり合ったものです。
これらの様々な物質がアレルギーの原因となり、鼻炎症状を引き起こします。
室内に発生するカビの胞子も、通年性アレルギー性鼻炎の原因となります。
カビは湿気が多く、栄養分となる汚れがある場所を好むため、エアコンの内部、浴室、キッチン、結露しやすい窓際などで繁殖しやすい傾向があります。
カビの胞子は非常に軽いため、エアコンの風などで室内に飛散し、吸い込むことでアレルギー症状が現れます。
犬や猫などのペットを飼っている場合、その毛やフケ、唾液、尿などもアレルギーの原因となり得ます。
アレルゲンは毛そのものだけではなく、皮膚から剥がれ落ちるフケや、乾燥した唾液などに含まれています。
これらが空気中に舞い上がり、吸い込むことで症状が誘発されるため、室内でペットと暮らしている場合は注意が必要です。
一年中続く鼻の不調は、原因が分からず対処に困ることがあります。
ここでは、通年性アレルギー性鼻炎の代表的な症状と、症状が似ている風邪や花粉症との見分け方について解説します。
ご自身の症状と照らし合わせて、原因を探るための参考にしてください。

通年性アレルギー性鼻炎の主な症状は、「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」の三つです。
特に、起床時に連続してくしゃみが出たり、水のようにサラサラとした鼻水が止まらなくなったりすることが特徴です。
また、両方の鼻が交互に、あるいは同時に詰まる鼻づまりにも悩まされます。
これらの症状は、アレルゲンに触れる機会や環境によって症状の強弱があるのが特徴です。
通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)は、アレルギーが原因である点は共通していますが、症状の現れ方に違いがあります。
最大の違いは症状の持続期間です。
花粉症は特定の花粉が飛ぶ季節に限定して症状が悪化しますが、通年性アレルギー性鼻炎は年間を通じて症状が続きます。
また、花粉症は目のかゆみや充血を伴うことが多いのに対し、通年性では鼻症状が中心となる傾向があります。
風邪はウイルス感染によって起こるため、発熱、喉の痛み、全身の倦怠感、関節痛などを伴うことが一般的です。
一方、アレルギー性鼻炎ではこれらの全身症状はほとんど見られません。
また、鼻水の状態も異なります。
アレルギー性鼻炎の鼻水は透明でサラサラしていますが、風邪の場合は初期は透明でも、次第に黄色っぽく粘り気のある鼻水に変化することがあります。
ただし、アレルギー性鼻炎を放置して鼻が弱っていると、風邪をひきやすくなるという悪循環もあるため、症状が長引く場合は自己判断せず受診をおすすめします。
通年性アレルギー性鼻炎は、命に関わる病気ではないため、「いつものこと」と軽視されがちです。
しかし、慢性的な鼻の炎症を放置すると、他の病気を引き起こしたり、日常生活に深刻な影響を及ぼしたりする可能性があります。
ここでは、鼻炎が引き起こす可能性のある代表的な合併症について解説します。
アレルギー性鼻炎と気管支喘息は、どちらも気道のアレルギー性炎症であり、密接な関係があります。
鼻の炎症を放置すると、アレルギー反応が鼻から気管支へと広がり、気管支喘息を発症するリスクが高まることが知られています。
アレルギー性鼻炎の患者さんのうち、20〜30%が喘息を合併しているとの報告もあり、適切な鼻炎治療が喘息の予防にもつながります。逆に、喘息の人の60〜70%がアレルギー性鼻炎を合併しているという報告もあります。(Bousquet J, et al. Allergy. 2008、Leynaert B, et al. J Allergy Clin Immunol. 2000、Ohta K, et al. Allergy. 2011など)
鼻の粘膜の炎症が長期間続くと、鼻の奥にある副鼻腔という空洞にまで炎症が及ぶことがあります。
これにより、副鼻腔に膿がたまる「副鼻腔炎(ちくのう症)」を併発する可能性があります。
副鼻腔炎になると、粘り気のある色のついた鼻水、鼻づまり、頭痛、顔面痛、嗅覚の低下といった症状が現れ、治療がさらに複雑になります。
慢性的な鼻づまりは、睡眠中の鼻呼吸を妨げ、口呼吸の原因となります。
口呼吸で眠ると、喉の奥が狭くなりやすいため、大きないびきをかきやすくなります。
さらに症状が進行すると、睡眠中に呼吸が一時的に止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を引き起こしたり、悪化させたりする危険性があります。
睡眠の質の低下は、日中の強い眠気や集中力欠如につながります。
くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状は、仕事や勉強への集中力を著しく低下させます。
また、鼻づまりによる睡眠不足は、日中の眠気や倦怠感、判断力の低下を招き、日常生活の質を大きく損ないます。
特に学童期の子どもの場合、学業成績に影響を及ぼす可能性も指摘されており、軽視できない問題です。
通年性アレルギー性鼻炎の症状をコントロールするためには、薬による治療と並行して、原因となるアレルゲンを生活環境からできるだけ取り除く「アレルゲン除去」が非常に重要です。
ここでは、日常生活の中で実践できる具体的な対策を、「掃除」「寝室」「室内環境」の3つのポイントに分けて解説します。
ダニやハウスダストを効果的に減らすには、掃除の仕方にコツがあります。
まず、掃除機は週に2回以上、1平方メートルあたり20秒以上かけることを目安に、ゆっくりと動かしましょう。
フローリングの場合は、掃除機をかける前にフロアワイパーでホコリを取り除くと、排気でハウスダストが舞い上がるのを防げます。
カーペットやソファなど、布製品は特に念入りに掃除することが大切です。
人は一日の約3分の1を寝室で過ごすため、寝室環境の整備は特に重要です。
寝具は、ダニが通過できない高密度の繊維で作られた防ダニ仕様のカバーやシーツを選ぶのが効果的です。
シーツや枕カバーは週に1回以上、55℃以上のお湯で洗濯すると、生きているダニを死滅させることができます。
また、布団は定期的に天日干しや布団乾燥機にかけ、湿気を取り除くことを心がけましょう。
ダニやカビは、高温多湿(25〜30℃、60〜80%)の環境で繁殖しやすくなります。
室内の湿度は50%前後を保つように心がけましょう。
加湿器の使いすぎには注意し、除湿機やエアコンのドライ機能を活用して湿度をコントロールします。
また、1日に1〜2回、窓を開けて部屋の換気を行うことも重要です。
空気清浄機の使用も、空気中に浮遊するアレルゲンを除去するのに役立ちます。
セルフケアや市販薬で症状が改善しない場合は、耳鼻咽喉科を受診し、正確な診断に基づいた治療を受けることが大切です。
医療機関では、アレルギーの原因を特定するための検査を行い、日本鼻アレルギー診療ガイドラインなどを参考にしながら、患者さん一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法を提案します。
ここでは、耳鼻咽喉科で行われる代表的な診断と治療について解説します。
まず、問診や鼻の中の診察に加え、何がアレルギーの原因(アレルゲン)になっているかを特定するためのアレルギー検査を行います。
最も一般的なのは血液検査で、ダニ、ハウスダスト、カビ、ペットのフケなど、様々なアレルゲンに対する特異的IgE抗体の量を調べることができます。
これにより、原因アレルゲンを特定し、より効果的な対策を立てることが可能になります。
アレルギー症状があるにもかかわらず、血液検査でアレルギー反応が陰性だったという経験はありませんか。
それは「局所性アレルギー性鼻炎(LAR)」かもしれません。
これは、血液中ではアレルギー反応が検出されないものの、鼻の粘膜局所でアレルギー反応が起きている状態です。
当院では、鼻水を採取してアレルギー反応に関わる細胞(好酸球)の有無を調べる「鼻汁好酸球検査」を行っており、LARの可能性を推察することができます。
検査で陰性でも、諦めずにご相談ください。
アレルギー性鼻炎の治療の基本は、症状を抑える薬物療法です。
主に、くしゃみや鼻水を抑える「抗ヒスタミン薬」や、鼻づまりを改善する「抗ロイコトリエン薬」などの内服薬が用いられます。
また、鼻の粘膜の炎症を強力に抑える「鼻噴霧用ステロイド薬(点鼻薬)」も非常に効果的で、多くのガイドラインで推奨される治療法です。
市販薬もありますが、医師の診断のもとで処方される薬の方が、よりご自身の症状に適した効果が期待できます。
薬を飲んでも鼻づまりが改善しない方には、鼻粘膜焼灼術(レーザー治療)という選択肢があります。
これは、レーザーを使ってアレルギー反応の場である鼻の粘膜(下鼻甲介)を焼灼する治療法です。
粘膜を変性・収縮させることで、鼻の通りを良くし、アレルギー反応が起きにくくする効果が期待できます。
特に鼻づまりが強い方におすすめの治療で、保険適用で受けることができます。
アレルギー症状を抑えるだけでなく、アレルギー体質そのものを改善し、根本的な治癒を目指す治療法が「舌下免疫療法」です。
これは、原因となるアレルゲンのエキスを少量ずつ舌の下に投与し、体をアレルゲンに慣らしていく治療です。日本においては2026年8月現在ではスギ花粉とダニにしか適応はありません。
治療には3年以上の長期間が必要ですが、治療終了後も長期間にわたって効果が持続することが期待でき、アレルギー薬を減らしたり、不要になったりする可能性があります。
ここでは、通年性アレルギー性鼻炎について患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
治療法や他のアレルギーとの関係について正しく理解し、ご自身の症状管理に役立ててください。
舌下免疫療法は、アレルギー体質を改善する根本的な治療法ですが、すべての方が「完治(薬が不要になる)」するわけではありません。
臨床試験では、約2割の方が薬の必要がなくなり、約6割の方が症状改善により薬を減量できたと報告されています。
残念ながら約2割の方には効果が見られませんでしたが、多くの患者さんで症状の軽減や生活の質の向上が期待できる治療です。
はい、併発することは珍しくありません。
ダニやハウスダストを原因とする通年性アレルギー性鼻炎の方が、スギやヒノキなどの花粉にもアレルギー反応を示し、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)を併発するケースは多く見られます。その場合、一年中続く症状が花粉の飛散時期にさらに悪化するという特徴があります。
感作率でみてみると、花粉症の患者さんの成人約半数、小児の約80%が通年性高原(ダニ・ハウスダスト)に感作していたという報告もあります。
(Ohki M, et al. Int J Otolaryngol. 2014、Sakashita M, et al. Allergol Int. 2021などなど)
子どもの場合、慢性的な鼻づまりによる口呼吸が、歯並びや顎の発達に影響を与えることがあります。
また、鼻炎症状による集中力の低下が学業に影響したり、睡眠不足が成長に影響を及ぼしたりする可能性も指摘されています。
気になる症状があれば、「いつものこと」と放置せず、早めに耳鼻咽喉科へ相談することをおすすめします。
通年性アレルギー性鼻炎とは、ダニやハウスダストなどが原因で、季節を問わず一年中くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が続く病気です。
その治療では、原因アレルゲンを特定し、掃除や環境整備でアレルゲンを避ける対策を行うとともに、症状に合わせて薬物療法やレーザー治療、そして根本的な体質改善を目指す舌下免疫療法などを選択することが重要です。
症状を放置せず、専門医に相談して適切な治療を受け、つらい症状から解放されましょう。
「なかの耳鼻科・美容皮ふ科」では、耳鼻咽喉科専門医が通年性アレルギー性鼻炎の正確な診断を行い、患者さん一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法をご提案します。
薬による治療はもちろん、レーザー治療や、アレルギー体質を根本から改善する舌下免疫療法まで、幅広い選択肢に対応しています。
一年中続く鼻の不調でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
当院では、専門的な知識と豊富な経験に基づき、患者さんに寄り添った医療を提供することを目指しています。
特にアレルギー性鼻炎の治療においては、診断から根本治療まで一貫してサポートできる体制を整えています。
日本耳鼻咽喉科学会専門医である院長が、丁寧な診察と的確な検査でアレルギーの原因を特定します。
その上で、抗ヒスタミン薬や点鼻薬などの標準的な薬物治療から、鼻づまりに効果的なレーザー治療、体質改善を目指す舌下免疫療法、重症/最重症のスギ花粉症の方に対しては抗IgE抗体療法(ゾレア)まで、幅広い治療の選択肢の中から、患者さんと相談しながら最適なプランをご提案します。
当院は、アレルギー性鼻炎の根本治療である舌下免疫療法に力を入れています。
今年度は地域でもトップクラスの導入実績があり、多くの患者さんに治療を開始していただいています。
症例数が多いからこそ、初回導入時の丁寧な説明や副作用への配慮、治療を継続するためのサポートなど、安心して治療を始めていただける体制が整っています。
当院は、小さなお子さんからご高齢の方まで、ご家族で安心して受診できる「地域のかかりつけ医」を目指しています。
アレルギー性鼻炎はお子さんにも多い病気であり、ご本人が症状をうまく伝えられない場合もあります。
保護者の方のお話をじっくり伺いながら、お子さん一人ひとりに合わせた優しい治療を心がけています。
どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。
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~若い世代にも増えている「聞こえの老化」を防ぐために~
スマートフォンやタブレットの普及により、イヤホンやヘッドホンで音楽や動画を楽しむことは日常生活の一部になりました。
しかし近年、「ヘッドホン難聴」「イヤホン難聴」と呼ばれる騒音性難聴(Noise-Induced Hearing Loss:NIHL)が世界中で問題となっています。
WHO(世界保健機関)は、世界で約10億人以上の若者(12~35歳)が安全ではない音量で音楽を聴いており、将来的な難聴のリスクがあると警鐘を鳴らしています。
耳鼻咽喉科では、以下のような相談が増えています。
「最近、人の声が聞き取りにくい」
「耳鳴りが治らない」
「ライブの後から聞こえが悪い」
この記事では、耳鼻咽喉科専門医の立場から、騒音性難聴について医学的根拠をもとに詳しく解説します。
〜騒音性難聴とは?〜
騒音性難聴とは、大きな音を長期間、または短時間でも非常に大きな音にさらされることで、内耳の有毛細胞が障害される病気です。

最も重要なのは、一度障害された有毛細胞は基本的に再生しないということです。
つまり、進行した難聴は元に戻らない可能性があります。
〜ヘッドホン難聴・イヤホン難聴はなぜ起こる?〜
イヤホンは鼓膜のすぐ近くで音を鳴らします。
さらに、周囲がうるさい場所(電車、地下鉄、バス、ジム、カフェなど)では、周囲の騒音に負けないよう無意識に音量を上げてしまうことが最大の問題です。
WHOでも、個人用音響機器(Personal Listening Devices)が若年者の難聴リスクの大きな原因とされています。
<音の大きさ(dB)と危険性>
| 音の大きさ | 例 | 安全性 |
| 40 dB | 図書館 | 安全 |
| 60 dB | 普通の会話 | 安全 |
| 80 dB | 交通量の多い道路 | 長時間では注意 |
| 85 dB | 大きな車内音 | 8時間程度で障害リスク |
| 94 dB | 最大音量近くのイヤホン | 約1時間以内でも危険 |
| 100 dB | ライブ会場 | 15分程度でも危険 |
| 110 dB | ロックコンサート前列 | 数分で障害の可能性 |
※音の大きさはデシベル(dB)で表されます。
NIOSH(アメリカ労働安全衛生研究所)では、3 dB増えるごとに安全曝露時間は半分になるという基準を採用しています。
例えば、、、
・85 dB:8時間
・88 dB:4時間
・91 dB:2時間
・94 dB:1時間
・97 dB:30分
となります。
〜WHOが推奨する安全な聴き方〜

WHOはSafe Listening Initiativeとして「60-60ルール」を推奨しています。
つまり最大音量の60%以下で、連続60分以内という考え方です。
※ヘッドホンや機械の性能により最大音量が異なるため注意が必要な考え方です
さらに、
・1時間聴いたら休憩する
・ノイズキャンセリングを利用する
・周囲がうるさい場所では音量を上げない
ことも推奨されています。
〜騒音性難聴の症状〜
初期には、、、
・耳鳴り
・耳が詰まる感じ
・高い音が聞き取りにくい
・会話は聞こえるが言葉が分かりにくい
・テレビの音量が大きくなる
などがあります。さらに進行すると、、、
・両側の難聴
・会話理解の低下
・聞き返しが増える
・慢性的な耳鳴り
がみられます。
〜聴力検査ではどんな特徴がある?〜
典型例では4,000Hz付近に谷型の難聴(C5 dip)がみられます。
これは騒音性難聴の非常に特徴的な所見です。
しかし、6000Hzにノッチが出現する症例も認めます。
〜「隠れ難聴(Hidden Hearing Loss)」とは?〜
最近注目されている概念です。
通常の聴力検査では正常でも
・騒がしい場所で会話が聞き取りにくい
・人混みで聞き返す
という症状が現れることがあります。
これは内耳と聴神経をつなぐシナプス(synapse)の障害が原因ではないかと考えられています。動物実験では強く支持されていますが、人でのエビデンスはまだ十分ではなく、現在も研究が続いています。
〜一度傷んだ耳は治る?〜
残念ながら現時点では有毛細胞を元に戻す治療はありません(有毛細胞再生の研究は行われていますが…)。
急性の音響外傷では早期のステロイド治療で改善する場合があります。
しかし、慢性的なイヤホン難聴では予防が最も重要な治療になります。
〜ヘッドホンとイヤホンどちらが良いの?〜
2026年現時点までの研究では、「イヤホンだから危険」「ヘッドホンだから安全」とは完全には言い切れません。
過去の報告では、イヤホンとヘッドホンでは差がないという報告、ヘッドホンの方が悪いという報告、イヤホンの方が音量を上げてしまうので悪いのではないかという報告などなど、様々な報告がなされており、まだ医学的に質の高いエビデンスのある研究結果が出ていません。
難聴のリスクは、機器の種類ではなく、実際に耳へ届く音量と聴取時間で決まります。
一方で、ノイズキャンセリング機能付きの機器は、周囲の騒音の影響で音量を上げすぎることを防げるため、耳への負担を減らせる可能性があります。
つまり、ノイズキャンセリング機能付きの機械を用いて、適切な音量・時間で耳を守るようにしましょう!
〜耳鼻咽喉科では何をする?〜
耳鼻咽喉科では以下の検査などを行います。
・耳鏡検査
・純音聴力検査
・語音明瞭度検査
・必要に応じて耳音響放射(OAE)
・必要に応じてABR
以下のような他の原因での難聴ではないか鑑別診断が重要になります。
・突発性難聴
・メニエール病
・遺伝性難聴
などなど
〜今日からできる予防法〜
①耳を酷使しない(音の大きさや時間に注意)
・60-60ルールを守る:音量60%以下、連続60分以内
・80dBを1週間に40時間まで(小児は75dBを1週間に40時間まで)
②ノイズキャンセリングを活用する
周囲が静かになるため音量を必要以上に上げなくて済みます。
③休憩を入れる
耳にも休息が必要です。
「1時間聴いたら、10分耳を休ませましょう」
イヤホンやヘッドホンを長時間使う場合は、1時間ごとに10分程度、静かな環境で耳を休ませることをおすすめします。内耳の有毛細胞は大きな音で疲労するため、定期的に休憩を入れることで耳への負担を減らすことが期待できます。特にライブやゲーム、オンライン会議などで長時間イヤホンを使う方は、意識して休憩を取りましょう。
注意:「10分休めば累積した騒音曝露がリセットされる」というわけではありません。 騒音によるリスクは音量 × 曝露時間の累積で決まるため、休憩に加えて音量を60%以下に抑えることが最も重要です。
④ライブでは耳栓も有効
音楽用耳栓は音質を保ちながら音量だけ下げられます。
⑤耳鳴りが出たら休む
ライブ後に、「キーン」「ジー」という耳鳴りが出たら耳からの危険信号です。
改善しない場合は早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
〜保護者の方へ〜
最近では、小学生 ・中学生 ・高校生 でもイヤホン使用時間が長くなっています。
ゲーム、動画、オンライン授業、SNSなどにより、1日数時間イヤホンを使う子どもも珍しくありません。
子どもの耳は一生使う大切な財産です。音量設定を一緒に確認し、長時間使用を避ける習慣を身につけましょう。
〜まとめ〜
・ヘッドホン難聴・イヤホン難聴は「騒音性難聴」の一種です。
・一度障害された内耳の有毛細胞は基本的に元には戻りません。
・「60%以下の音量」「60分ごとの休憩」を心がけましょう。
・耳鳴りや聞こえにくさを感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
将来も大切な「聞こえ」を守るためには、日頃から安全な聴取習慣を身につけることが何より重要です。
〜参考文献〜
World Health Organization. Current Practices in the Assessment of Recreational Noise-induced Hearing Loss. 2017.
Elmazoska I, et al. J Speech Lang Hear Res. 2024
Beach et al. Int J Audiol. 2022
Ding T, , et al. Br J Hosp Med. 2019
Kurabi A, et al. Hear Res. 2017
Keppler et al. Int J Environ Res Public Health. 2015
Carter L, et al. Ear Hear. 2014
Hodgetts et al. Ear Hear. 2007
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副鼻腔炎による鼻の炎症や鼻づまりは、空気の通り道を狭め、いびきの直接的な原因となります。
いびきは、鼻から喉にかけての狭くなった部分を空気が通る際に、粘膜が振動して発生する音です。
そのため、副鼻腔炎といびきには密接な関係があり、鼻の状態を改善することがいびきの軽減につながります。

副鼻腔炎(蓄膿症)やアレルギー性鼻炎になると、鼻の粘膜が腫れたり、粘り気のある鼻水が溜まったりします。
炎症が長引くと、鼻ポリープ(鼻茸)と呼ばれるキノコのようなできものができることもあります。これらが物理的に空気の通り道を塞いでしまうことが、口を閉じていても「グーグー」「ズーズー」といった音が鳴る「鼻いびき」の主な原因です。
鼻がつまると、無意識のうちに口呼吸するようになります。口呼吸で眠ると、喉の筋肉が緩み、舌の付け根が喉の奥に落ち込みやすくなります。その結果、上気道が狭くなり、ガーガーという大きな音を伴う喉いびきが発生します。
副鼻腔炎が原因で口呼吸が習慣化すると、鼻いびきと喉いびきの両方が起こる関係性も考えられます。
いびきは、睡眠中に気道が狭くなっているサインです。
副鼻腔炎による鼻づまりが重症化し、気道の閉塞がひどくなると、睡眠中に呼吸が一時的に止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を引き起こす可能性があります。
睡眠時無呼吸は、日中の強い眠気や集中力の低下だけでなく、高血圧や心疾患などの原因にもなるため、注意が必要です。
耳鼻咽喉科での根本治療と並行して、ご自宅でできるセルフケアを取り入れることで、いびきの症状を和らげることが期待できます。
ここでは、病院に行く前の応急処置としても有効な対策を4つ紹介します。
ただし、これらは対症療法であり、セルフケアを試しても症状が変わらない場合や、根本的にいびきを治したい場合は、早めに耳鼻科へご相談ください。
当院では原因に合わせた適切な治療法をご提案しています。

鼻うがいは、鼻の奥に溜まった膿や鼻水、アレルゲンなどを洗い流し、鼻の通りを良くする効果的な対策です。
体温程度に温めた生理食塩水を使い、市販の専用ボトルで片方の鼻からゆっくり流し込み、もう片方の鼻や口から出します。このとき、強く吸い込んだり、水道水をそのまま使ったりすると耳を痛める原因になるため注意が必要です。
※診療中に、「鼻うがいの容器は何が良いですか?」とご質問を受けることが度々あります。以前、別のブログ記事で鼻うがいの容器の比較を掲載しておりますので、容器購入前にご参照ください。
睡眠中の姿勢を工夫することも、いびき対策に有効です。
仰向けで寝ると、重力で舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道を狭めてしまいます。
一方、横向き寝することで舌の落ち込みを防ぎ、気道が確保されやすくなるため、いびきの軽減が期待できます。
抱き枕などを使うと、自然に横向き寝の姿勢を保ちやすくなります。
市販の鼻腔拡張テープは、鼻づまりによるいびきの対策として手軽に試せる方法の一つです。
テープの反発力を利用して鼻の外側から鼻腔を物理的に広げ、鼻呼吸をサポートします。
効果を最大限に引き出すためには、説明書をよく読み、鼻の適切な位置にしっかりと貼ることが大切です。
皮膚がかぶれやすい方は、使用時間に注意しましょう。
空気が乾燥すると、鼻の粘膜が刺激されて腫れやすくなり、鼻づまりが悪化する原因になります。
特に冬場やエアコンの使用中は、寝室の湿度が下がりがちです。加湿器を使ったり、濡らしたタオルを部屋に干したりして、湿度を50~60%程度に保つ対策を心がけましょう。鼻粘膜の潤いを適切に保つことで、鼻呼吸が楽になります。
セルフケアで改善しない場合や、いびきを根本的に治したい場合は、原因である副鼻腔炎(蓄膿症)そのものを治療することが最も重要です。
耳鼻咽喉科では、症状が急に始まった「急性」か、長引いている「慢性」かなど、病状に合わせて適切な治療法を選択します。

副鼻腔炎の治療の基本は、薬物療法です。
細菌感染が原因と考えられる急性の副鼻腔炎には、抗生物質を処方して原因菌を抑えます。
また、アレルギー性鼻炎を合併している場合には、抗アレルギー薬やステロイド点鼻薬を用いて鼻の粘膜の炎症を鎮めます。
これにより鼻づまりが改善し、いびきの軽減につながります。
耳鼻咽喉科では、クリニックでの処置も行います。
専用の吸引器で鼻の奥に溜まった粘り気のある鼻水を吸い出したり、霧状にした薬剤を鼻の奥まで届けるネブライザー治療を行ったりします。
これらの処置は、鼻づまりを直接的に解消し、薬の効果を高めるため、症状の速やかな改善が期待できる治療です。
薬物療法を長期間続けても改善しない慢性副鼻腔炎や、大きな鼻ポリープがある場合には、手術が検討されます。
現在は「内視鏡下鼻副鼻腔手術」が主流で、鼻の穴から細いカメラと器具を挿入して行うため、顔に傷が残らず、体への負担が少ない治療です。
炎症を起こしている粘膜やポリープを取り除き、鼻の構造を改善することで、空気の通り道を確保します。
副鼻腔炎の治療後もいびきや無呼吸が続く場合は、他に原因がある可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を広げる「CPAP療法」という治療を行います。
また、軽症の場合には、下あごを前方に固定して気道を確保するマウスピースを作成する対策もあります。
なかの耳鼻科・美容皮ふ科では、いびきの原因となる副鼻腔炎の診断・治療はもちろんのこと、その背景に隠れている可能性のある睡眠時無呼吸症候群についても対応しています。
ご自宅で就寝時に指や鼻に簡単なセンサーを取り付けて行う簡易検査を実施しており、入院の必要なく睡眠中の呼吸状態を評価することが可能です。
いびきや無呼吸でお悩みの方は、根本的な原因治療からご相談ください。
ここでは、患者さんからよく寄せられる副鼻腔炎といびきの治し方に関する質問にお答えします。
ご自身の症状と照らし合わせながら、対策や治療の参考にしてください。
後鼻漏はいびきを悪化させる原因の一つです。
粘り気のある鼻水が睡眠中に喉に垂れ落ち、気道を狭めることでいびきの音が大きくなったり、咳き込んで睡眠の質を下げたりする関係があります。
副鼻腔炎の治療で後鼻漏が改善すれば、いびきの軽減も期待できます。
手術によって副鼻腔炎が改善し、鼻の通りが良くなれば、鼻づまりが原因のいびきは大幅に改善する可能性が高いです。
しかし、いびきの原因が肥満や骨格など他にもある場合、完全に治るとは限りません。
手術は鼻づまりを解消する有効な治療ですが、複合的な原因がある場合はいびきが残ることもあります。
「チクナイン」は、副鼻腔炎(蓄膿症)によって溜まった膿を出しやすくする漢方薬で、鼻づまりを和らげる効果が期待できます。
そのため、副鼻腔炎が原因のいびきに対する一時的な対策として症状が緩和される可能性はあります。
ただし、根本的な治療ではないため、症状が続く場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。
副鼻腔炎によるいびきは、鼻の空気の通り道が狭くなることが主な原因です。
自宅でできる対策として、鼻うがい、横向き寝、加湿などがありますが、根本的な改善には耳鼻咽喉科での専門的な治療が不可欠です。
薬物療法やクリニックでの処置、場合によっては内視鏡下鼻副鼻腔手術によって副鼻腔炎を治療することで、いびきの大幅な改善が期待できます。
いびきを放置すると睡眠時無呼吸につながるリスクもあるため、気になる症状があれば自己判断せず、ぜひ一度ご相談ください。
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補聴器を使い始めてから、
「耳垢が増えた気がする」
「補聴器の音が小さくなった」
と感じることはありませんか?
補聴器の使用は、耳垢の詰まりや聞こえのトラブルと密接に関係しています。
放置すると、聞こえが悪化するだけでなく、耳垢が耳の奥で固まってしまう「耳垢栓塞」や補聴器の故障につながることもあります。
この記事では、補聴器で耳垢がたまりやすくなる原因と、ご自宅でできる正しい掃除方法、専門家によるメンテナンスの重要性について解説します。
この記事でわかること
・ 補聴器の使用によって耳垢が詰まりやすくなる仕組み
・ 故障を防ぐための自宅でできる補聴器の清掃・保管方法
・ セルフケアの限界と、耳鼻咽喉科での耳の確認や補聴器相談の重要性
補聴器の使用が耳垢の詰まりを招きやすくなるのには、明確な理由があります。
耳の構造と補聴器の特性が組み合わさることで、耳垢が自然に排出されにくい環境が作られてしまうのです。
主な原因として、「自浄作用の妨げ」「湿気による固着」「加齢の影響」の3つのポイントが挙げられます。
これらの仕組みを理解することが、適切な対策への第一歩となります。

私たちの耳には、本来「自浄作用」という優れた仕組みが備わっています。
これは、耳の穴の皮膚が入り口に向かって少しずつ移動し、古い皮膚や耳垢を自然に外へ運び出す働きのことです。
しかし、補聴器を装用すると、耳の穴に物理的な「フタ」をすることになり、この自浄作用による耳垢の排出が妨げられてしまいます。
毎日長時間にわたって補聴器で耳を塞ぐことで、耳垢が外に出られずに内部に蓄積しやすくなるのです。
補聴器で耳の穴を密閉すると、内部の通気性が悪くなり、体温によって温度と湿度が上昇します。
この蒸れた環境は、耳垢に大きな影響を与えます。
耳垢が湿気を吸うことで柔らかくなり、粘り気が出て固まりやすくなるのです。
特に、カサカサした乾性耳垢の方でも、蒸れによって耳垢が湿っぽく感じられることがあります。
元々耳垢がベタベタしている湿性耳垢の方は、この影響をさらに受けやすく、補聴器や耳の穴に耳垢が付着・固着しやすくなります。
補聴器を使用する方の多くは、加齢による難聴を抱えています。
年齢を重ねると、耳の自浄作用そのものが少しずつ低下する傾向があります。
皮膚の新陳代謝が遅くなったり、耳の周りの筋肉や顎を動かす力が弱まったりすることで、耳垢を外へ押し出す力が衰えるのです。
補聴器による物理的な妨げに加えて、こうした加齢に伴う身体的な変化が重なることで、さらに耳垢がたまりやすい状態になると考えられています。
補聴器に付着した耳垢の詰まりを「少しだから大丈夫」と放置してしまうと、聞こえの問題や補聴器本体の故障といった深刻なトラブルにつながる可能性があります。
耳垢は単なる汚れではなく、補聴器の性能を著しく低下させ、最終的には高価な機器の修理や買い替えが必要になる原因にもなり得ます。
ここでは、耳垢詰まりが引き起こす代表的な2つのトラブルについて解説します。
補聴器のトラブルで最も多いのが、耳垢による音の出口の詰まりです。
補聴器の先端部分には、音を出すための非常に小さな穴(音孔)があります。
ここに耳垢が詰まってしまうと、音の通り道が塞がれ、音が小さくこもって聞こえたり、最悪の場合は全く聞こえなくなったりします。
「最近、補聴器の聞こえが悪い」と感じる原因の多くは、この耳垢の詰まりによるものです。
電池を交換しても改善しない場合は、まず音の出口の詰まりを疑う必要があります。
耳垢には水分や油分が含まれており、特に湿性耳垢の場合はその量が多くなります。
この湿気を含んだ耳垢が補聴器の音の出口から内部に侵入すると、レシーバー(音を出す部品)やマイクといった精密な電子部品にダメージを与え、故障を引き起こす原因となります。
湿気はサビや腐食を招き、補聴器の寿命を縮めてしまいます。
一度内部が故障すると簡単な掃除では元に戻らず、高額な修理費用がかかることもあるため、日頃からの対策が重要です。
補聴器の性能を維持し、長く快適に使い続けるためには、毎日の簡単なお手入れが欠かせません。
一日の終わりに使用した補聴器を掃除する習慣をつけることで、耳垢によるトラブルの多くは予防できます。
専門的な知識がなくても、付属の道具を使って誰でも簡単に行える基本的なお手入れ方法を紹介します。

補聴器に付属している専用の小さなブラシを使って、音の出口(音孔)や、耳の蒸れを防ぐための空気穴(ベント)に付着した耳垢を優しくかき出します。
このとき、重要なポイントは、音の出口を下に向けることです。
上向きのまま掃除をすると、取り除いた耳垢が補聴器の内部に入り込んでしまう恐れがあります。
必ず下に向けて、耳垢が自然に落ちるように掃除を行いましょう。
力を入れすぎず、そっと払うようにするのがコツです。
ブラシでの掃除が終わったら、乾いた柔らかい布(メガネ拭きなど)で補聴器の本体全体を優しく拭きます。
補聴器には、耳垢だけでなく、汗や皮脂、整髪料なども付着しています。
これらの汚れを放置すると、本体の変色や劣化、故障の原因になります。
一日の終わりにさっと拭き取るだけで、補聴器を清潔に保つことができます。
アルコール成分を含むウェットティッシュなどは、プラスチック部分を傷める可能性があるため使用は避けてください。
毎日のお手入れの仕上げとして、就寝中は補聴器を専用の乾燥ケースに入れて保管しましょう。
日中の装用で補聴器内部にたまった湿気をしっかりと取り除くことが、故障を防ぐ上で非常に重要です。
乾燥ケースには、乾燥剤を使用するタイプや、電気で温風乾燥と紫外線除菌を同時に行うタイプなどがあります。
この一手間を加えることで、湿気による内部部品のサビや腐食を防ぎ、補聴器の寿命を延ばすことにつながります。
補聴器の掃除とあわせて、ご自身の耳の掃除も気になるかもしれません。
しかし、良かれと思って行っている耳掃除が、かえって耳垢を奥に押し込み、耳垢栓塞(じこうせんそく)というトラブルを引き起こす原因になることがあります。
耳の健康を守るためには、安全なセルフケアの範囲を知り、やりすぎないことが大切です。
ここでは、耳掃除に関する注意点を解説します。
綿棒や耳かきを耳の奥まで入れて掃除すると、耳垢をきれいに取り除いているように感じられるかもしれません。
実際には多くの耳垢を鼓膜の方向へと押し込んでしまう危険性があります。
これを繰り返すことで、耳垢が奥で固まり、耳の穴を完全に塞いでしまう「耳垢栓塞」という状態を招くことがあります。
耳垢栓塞になると、難聴や耳の詰まり感、耳鳴りなどの症状が現れ、自分で取り除くことは困難になります。
ご自宅で安全に耳のケアを行う場合は、耳の奥には触れないことが原則です。
お風呂上がりなどに、湿らせたガーゼやタオルで耳の入り口から見える範囲の汚れを優しく拭き取る程度にとどめましょう。
耳の穴の中は非常にデリケートな皮膚で覆われており、少しの刺激でも傷がつき、外耳炎などの炎症を引き起こす可能性があります。
無理に奥まできれいにしようとせず、自然に出てくる耳垢を拭うだけで十分です。
日々のセルフケアは非常に重要ですが、それだけでは万全とは言えません。
耳の中の状態や耳垢の詰まり、聞こえの変化が気になる場合は、耳鼻咽喉科で耳の状態を確認することが大切です。
また、補聴器についても、試聴や調整、装用後のフォローを受けながら、聞こえの状態に応じて見直していくことが快適な使用につながります。
耳の奥まで詰まった耳垢は、ご自身で取り除こうとすると危険なため、医療機関でのケアが必要です。
耳鼻咽喉科では、専門の器具と顕微鏡や内視鏡を使い、耳の奥の皮膚や鼓膜を傷つけることなく安全に耳垢を取り除くことができます。
特に耳垢が固まってしまった耳垢栓塞の場合は、必ず耳鼻咽喉科を受診してください。
また、定期的に受診することで、耳垢の除去だけでなく、外耳炎や中耳炎といった耳の病気がないかどうかのチェックも受けられます。
補聴器は、ご自宅でのお手入れに加えて、必要に応じて点検や調整を受けることが大切です。
なかの耳鼻科の補聴器外来では、聴力検査から補聴器の試聴・相談、装用後の調整やフォローまで行っており、補聴器に耳垢が詰まっていないかなどのメンテナンスのためにも、定期的な受診をおすすめしております。
聞こえ方や使い心地は時間とともに変わることがあるため、その都度状態を確認しながら見直していくことが快適な使用につながります。
補聴器の悩みは、聞こえの問題だけでなく、耳垢や耳の炎症など、医学的なケアが必要な場合も少なくありません。
当院では補聴器外来を行っており、聴力検査、補聴器の試聴・相談、装用後の調整やフォローまで、専門スタッフと連携しながらサポートしています。
聞こえの状態を確認しながら、耳垢が詰まっていないか、耳の中にトラブルがないかも含めて定期的に見ていくことが大切です。
耳と補聴器の両面から相談しやすいのが、耳鼻咽喉科の強みのひとつです。
補聴器と耳垢について、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
補聴器で耳の中が密閉され、蒸れやすくなるためです。
耳の穴の温度と湿度が上がることで、乾燥していた耳垢も水分を含み、湿った質感に変化することがあります。
特に異常ではありませんが、湿った耳垢は補聴器に付着しやすくなるため、毎日のお手入れがより重要になります。
毎日の装用後に行うのが理想的です。
一日の終わり、補聴器を外した際に、ブラシで音の出口の耳垢を払い、乾いた布で全体を拭く習慣をつけましょう。
これにより、耳垢が固着して取れにくくなるのを防ぎ、故障のリスクを大幅に減らすことができます。
まず補聴器の音の出口を確認し、ブラシで優しく掃除をしてください。
それでも改善しない場合は、耳の奥に耳垢が詰まっている「耳垢栓塞」の可能性があります。
無理に自分で取ろうとせず、耳鼻咽喉科を受診して、安全に耳垢を取り除いてもらいましょう。
補聴器を使用すると、耳の自浄作用が妨げられたり、耳の中が蒸れたりすることで、耳垢がたまりやすくなります。
この耳垢を放置すると、聞こえの悪化や補聴器の故障につながるため、毎日のお手入れが欠かせません。
自宅での簡単なお手入れを習慣にするとともに、耳の中の状態や聞こえの変化が気になる場合は、耳鼻咽喉科で定期的に相談することが大切です。
特に、ご自身での耳掃除は耳垢を奥に押し込むリスクがあるため、耳の入り口を拭う程度にとどめ、奥の掃除は専門医に任せましょう。
当院では、耳の状態の確認、聴力検査、補聴器の試聴・相談、装用後の調整やフォローを行っています。補聴器の聞こえ方や耳垢の詰まりが気になる場合は、お気軽にご相談ください。
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家から外へ出たときや、エアコンの効いた部屋と外を行き来したときなど、気温がガラリと変わるタイミングで、鼻がムズムズしたり、かゆみを感じたりすることはありませんか。
それは花粉症や風邪ではなく、「寒暖差アレルギー」かもしれません。
この症状は医学的には血管運動性鼻炎と呼ばれ、急激な温度変化によって自律神経が乱れ、鼻の粘膜が刺激されることで起こります。
この記事では、寒暖差アレルギーによる鼻のかゆみやムズムズの原因、花粉症との見分け方、そして薬の使用も含めた具体的な対策について解説します。
この記事でわかること
・ 寒暖差アレルギーの症状と花粉症・風邪との違い
・ 寒暖差を和らげ自律神経を整えるセルフケアの方法
・ 市販薬の使い方と耳鼻咽喉科で受けられる治療法
急な鼻のかゆみやムズムズ感に悩まされている場合、まずは自分の症状がどのタイプに当てはまるのかを確認することが大切です。
寒暖差アレルギーは、花粉症や風邪と症状が似ていますが、原因や特徴に違いがあります。
アレルゲンが原因ではないため、一般的なアレルギー検査では異常が見つからないことも特徴の一つです。
以下の項目を参考に、ご自身の症状をチェックしてみましょう。
寒暖差アレルギーの正式名称は「血管運動性鼻炎」です。
主な症状は、アレルギー性鼻炎とよく似ていますが、いくつかの特徴があります。
まず、透明でサラサラとした鼻水が急に出ることが挙げられます。
また、鼻づまりやくしゃみが主な症状で、鼻の内部にかゆみやムズムズとした違和感を伴うことも少なくありません。
一方で、花粉症でよく見られる目のかゆみや充血、涙といった症状はほとんど起こらないのが大きな違いです。
発熱や喉の痛み、全身の倦怠感といった風邪のような症状も見られません。
寒暖差アレルギー、花粉症、風邪の症状は似ているため、見分けるのが難しいことがあります。
それぞれの特徴を比較して、自分の症状の原因を判断する参考にしてください。

寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)
主な原因は急激な温度差です。
症状としては、透明で水っぽい鼻水、くしゃみ、鼻づまりが中心で、目のかゆみや発熱は伴いません。
スギやヒノキなどの花粉がアレルゲンとなって発症します。
寒暖差アレルギーと同様の鼻症状に加え、強い目のかゆみや充血が特徴です。
風邪(ウイルス感染)
ウイルス感染が原因で、鼻水は初期は透明ですが次第に黄色っぽく粘り気が出ることがあります。
発熱や喉の痛み、咳、全身の倦怠感などを伴うのが特徴です。
寒暖差によって鼻がかゆくなる主な原因は、体温調節を担う自律神経のバランスが乱れることにあります。
私たちの体は、自律神経の働きによって外部の環境変化に対応していますが、その変化が急激すぎると、鼻の粘膜にある血管や神経が過敏に反応してしまいます。
これにより、鼻水やくしゃみだけでなく、かゆみといった不快な症状が引き起こされるのです。
一般的に、7度以上の急激な気温差にさらされると、自律神経のバランスが乱れやすいと言われています。
自律神経は、体を活動的にする交感神経と、リラックスさせる副交感神経から成り立っています。
急な温度変化に対応しようと自律神経が過剰に働くと、鼻の粘膜にある血管が拡張し、粘膜が腫れてしまいます。
さらに、鼻の知覚神経が刺激されることで、アレルギー反応ではないにもかかわらず、鼻水やくしゃみ、ムズムズとしたかゆみといった症状が引き起こされるのです。
これは、体を守るための防御反応が過剰に働いてしまった状態と言えます。
寒暖差による刺激は、鼻の粘膜だけでなく皮膚にも影響を及ぼすことがあります。
急に冷たい空気に触れたり、冷たい水に触れたりした後に、肌に赤みやみみず腫れ、強いかゆみを伴う蕁麻疹が出ることがあります。
これは「寒冷蕁麻疹」と呼ばれ、寒暖差アレルギーと同様に、温度差という物理的な刺激が原因で起こる反応です。
鼻のかゆみと同時に肌の症状が現れる場合は、体が温度変化に敏感に反応しているサインかもしれません。
寒暖差アレルギーによる鼻のかゆみは、日常生活の少しの工夫で和らげることが可能です。
治療の基本は、症状を引き起こす原因である「急激な温度差」を避けることです。
また、自律神経のバランスを整える生活習慣を心がけることで、症状が出にくい体づくりを目指せます。
ここでは、今日からすぐに実践できる具体的な対策を紹介します。

急激な温度変化は、冬の寒さだけでなく夏場の冷房も身体に大きな負担をかけます。症状を抑えるためには、季節を問わず体温調節がしやすい服装を心がけることが大切です。
特に、冬に暖かい屋内から冷え込んだ屋外へ出る際や、夏場に猛暑の屋外から冷房の効いた室内へ入る際など、激しい温度差にさらされる場面では注意が必要です。
カーディガンや薄手のストール、パーカーなどは、冬の防寒としてはもちろん、夏場の強い冷房から身を守る対策としても役立つ万能なアイテムです。常に一枚用意しておき、環境に合わせて着脱しましょう。
また、首、手首、足首といった「首」がつく部位は、太い血管が皮膚の近くを通っているため、ここを温度変化から守ることが非常に重要です。ここをガードすることで、効率的に体温を一定に保つ助けになります。
冬場はマフラーや厚手の靴下、夏場は薄手のネックウォーマーやレッグウォーマーなどを活用し、一年を通して「首」の温度を安定させる工夫を取り入れましょう。
マスクの着用は、寒暖差アレルギーの症状緩和に非常に有効です。
マスクをすることで、冷たく乾燥した外気が直接鼻の粘膜に触れるのを防ぐことができます。
自分の呼気に含まれる湿気によって、マスク内は適度な温度と湿度に保たれるため、鼻粘膜への刺激が和らぎます。
これにより、鼻のかゆみやくしゃみ、鼻水といった症状を抑える効果が期待できます。
特に、屋外と屋内の温度差が激しい時期や、エアコンが強く効いた乾燥した室内で長時間過ごす際には、意識的にマスクを着用するとよいでしょう。
自律神経のバランスを整えるためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。
入浴時には、42度以上の熱いお湯は交感神経を刺激してしまうため、38~40度程度のぬるめのお湯にゆっくりと浸かるのがおすすめです。
リラックス効果のある副交感神経が優位になり、心身の緊張がほぐれます。
また、ウォーキングやストレッチなどの適度な運動は、全身の血行を促進し、自律神経の働きを整える助けになります。
無理のない範囲で、継続的に体を動かす習慣を取り入れましょう。
日々の食事を通じて体温を一定に保つ力を養うことも、寒暖差アレルギーの根本的な対策につながります。
特定の食材に偏るのではなく、タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取し、エネルギー代謝をスムーズにすることが重要です。これにより、外気温の変化に左右されにくい安定した体調を維持しやすくなります。
また、冷たい飲食物の摂りすぎは内臓を冷やし、自律神経を乱す原因となるため、季節を問わず常温以上のものを意識して選ぶのがおすすめです。
また、朝食を抜くと体温が上がりにくくなるため、一日三食、栄養バランスの取れた食事を規則正しく摂ることを心がけましょう。
食生活を整えることは、自律神経の安定にもつながります。
セルフケアだけでは症状が改善しない場合や、日常生活に支障をきたすほどつらい場合には、医療機関での治療を検討することが大切です。
寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)の治療は、主に薬を用いて症状を抑える対症療法が中心となります。
原因がアレルギーではないため、花粉症の治療とは異なるアプローチが必要になることもあります。
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寒暖差アレルギーの症状緩和には、市販の薬が有効な場合があります。
くしゃみや鼻水には、抗ヒスタミン薬の内服薬が効果を示すことがあります。
鼻づまりがひどい場合には、ステロイド点鼻薬も選択肢の一つです。
ただし、血管収縮剤が含まれる点鼻薬の長期的な使用は、かえって症状を悪化させる「薬剤性鼻炎」を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
連用は1週間程度にとどめましょう。
また、体を温め、鼻水の症状を和らげる効果が期待できる漢方薬(小青竜湯など)が体質に合う場合もあります。
どの薬を選べばよいか分からない場合は、薬剤師や医師に相談してください。
市販の薬を使用しても症状が改善しない、または症状を繰り返す場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
専門医による診察で、寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)なのか、あるいはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など他の病気が隠れていないかを正確に診断することが重要です。
治療としては、症状に合わせて処方薬(抗コリン薬の点鼻薬や抗アレルギー薬など)が用いられます。
また、鼻の粘膜をレーザーで焼灼し、アレルギー反応を起こしにくくする治療法が有効な場合もあります。
つらい症状を我慢せず、専門医に相談してください。
当クリニックでは、つらい鼻の症状に対して、日本耳鼻咽喉科学会専門医が診察を行い、一人ひとりの症状や原因に合わせた適切な治療法をご提案します。
寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)が疑われる場合でも、まずはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など、他の疾患の可能性を丁寧に見極めることが大切です。
必要に応じてアレルギー検査や内視鏡検査を行い、診断を確定します。
指先からのわずかな採血で41項目のアレルゲンを調べられる検査や、鼻水を採取してアレルギー反応の有無を確認する鼻汁好酸球検査などを実施しており、患者さんの負担を考慮しながら、正確な診断につなげます。
治療は、抗ヒスタミン薬や点鼻薬などの薬物療法を基本としますが、症状が改善しない場合には、鼻の粘膜をレーザーで焼灼する「鼻粘膜焼灼術」も選択肢となります。
この治療は、鼻の通りを良くしたり、アレルギー反応を起きにくくしたりする効果が期待できます。
寒暖差アレルギーについて、患者さんから寄せられることの多い質問にお答えします。
鼻のかゆみだけでなく、他の症状や薬の使い方について正しく理解することで、適切な対処につながります。
疑問や不安な点があれば、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。
急激な温度変化という物理的な刺激が、鼻の粘膜だけでなく皮膚にも影響を与えるためです。
体が冷えることで皮膚の血管が反応し、かゆみの原因物質であるヒスタミンが放出されると、寒冷蕁麻疹として肌にかゆみや赤みが出ることがあります。
鼻と肌の症状が同時に出るのは、体が温度変化に敏感に反応しているサインと考えられます。
一時的に使用することは可能ですが、注意が必要です。
特に血管収縮剤を含む点鼻薬は、即効性がある一方で、長期間使用すると「薬剤性鼻炎」という、かえって鼻づまりが悪化する状態を招く危険があります。
使用は短期間にとどめ、症状が続く場合は自己判断で薬を使い続けず、耳鼻咽喉科を受診してください。
はい、子どもでも発症する可能性があります。
子どもの自律神経はまだ発達途中であり、大人よりも気温の変化に影響を受けやすいためです。
季節の変わり目などに鼻水やくしゃみが続く場合は、寒暖差アレルギーの可能性も考えられます。
風邪やアレルギーとの鑑別が重要ですので、症状が気になる場合は小児科や耳鼻咽喉科にご相談ください。
家から外へ出たときや、エアコンの効いた部屋と外を行き来したときなど、気温がガラリと変わるタイミングで起こる鼻のかゆみやムズムズ感は、花粉症や風邪ではなく、温度変化による「寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)」の可能性があります。
その主な原因は自律神経の乱れにあり、体を冷やさない服装の工夫や、バランスの取れた生活習慣を心がけることで症状を和らげることが期待できます。しかし、セルフケアや市販薬で改善しない場合や、症状が長引く場合は、他の病気が隠れている可能性も考えられます。
つらい症状を我慢せず、耳鼻咽喉科で正確な診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。
気になる症状があれば、お気軽に当クリニックにご相談ください。
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副鼻腔炎になると、鼻水や鼻詰まりだけでなく、しつこい喉の痛みや違和感に悩まされることがあります。
風邪が治った後も続く喉の不調は、鼻から喉へ流れ込む鼻水(後鼻漏)が原因かもしれません。
この記事では、副鼻腔炎で喉が痛くなるメカニズムから、すぐに試せるセルフケア、耳鼻咽喉科での専門的な治療法まで詳しく解説します。
症状を和らげるための具体的な対処法を知り、つらい喉の痛みを解消しましょう。
この記事でわかること
・ 副鼻腔炎で喉が痛くなる根本的なメカニズム
・ 痛みを和らげるために自宅でできる具体的な対処法
・ 症状が改善しない場合の専門的な治療の選択肢
・ 放置せず病院へ行くべき症状の見極め方
副鼻腔炎で喉が痛くなるのは、単なる偶然ではありません。
鼻の奥にある副鼻腔で起きた炎症が、喉に直接的・間接的に影響を及ぼすことで痛みが発生します。
主な原因は、膿を含んだ鼻水が喉に流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」と、鼻詰まりによる「口呼吸」の2つです。
これらのメカニズムを理解することで、なぜ鼻の治療が喉の痛みの改善につながるのかが明確になります。

副鼻腔炎になると、細菌やウイルスと戦った白血球の死骸などを含む、黄色く粘り気のある鼻水が大量に作られます。
この膿のような鼻水が鼻の前から出るだけでなく、喉の奥へと流れ落ちる現象を「後鼻漏」と呼びます。
喉に鼻水が絶えず流れ落ちることで、喉の粘膜が刺激され、炎症(咽頭炎や上咽頭炎など)が引き起こされます。
これが、ヒリヒリとした痛みやイガイガ感、何かが張り付いているような違和感の正体です。
特に就寝中に鼻水が溜まりやすく、朝起きた時に症状が強くなる傾向があります。
副鼻腔の炎症によって鼻の粘膜が腫れると、鼻の通り道が狭くなり、つらい鼻詰まりを引き起こします。
鼻での呼吸が困難になると、無意識のうちに口呼吸するようになります。
鼻には吸い込んだ空気を加湿・加温する機能がありますが、口にはその機能がありません。
そのため、口呼吸を続けると、乾燥した冷たい空気が直接喉の粘膜に当たり、喉が乾燥してしまいます。
乾燥した粘膜はバリア機能が低下し、炎症を起こしやすくなるため、痛みの原因となります。
副鼻腔炎による喉の痛みは、一般的な風邪による喉の痛みとは少し異なる特徴があります。
喉の奥が痛い感覚に加え、特定の時間帯に症状が強くなったり、痰や咳払いが続いたりします。
もし風邪薬を飲んでも改善しない喉の不快感が続く場合は、その原因が鼻にある可能性を疑う必要があります。
以下に挙げる症状に心当たりがないか確認してみましょう。
副鼻腔炎による喉の痛みの大きな特徴は、朝、起床した時に最も症状が強くなることです。
これは、就寝中に後鼻漏が悪化し、膿を含んだ粘り気のある鼻水が喉に長時間溜まってしまうためです。
また、鼻詰まりによる口呼吸で一晩中喉が乾燥にさらされることも、朝の痛みを増強させる一因となります。
日中活動しているうちに、自然と鼻水が排出されたり水分を補給したりすることで、症状が少し和らぐ傾向にあります。
喉に流れ落ちてきた粘り気の強い鼻水は、不快なだけでなく、気道を塞ぎそうになることもあります。
体はこれを異物とみなし、排出しようと防御反応を起こします。
その結果、痰が喉に絡みついたような感覚が生じ、それを解消するために頻繁に咳払いをしたり、湿った咳が出たりします。
特に横になっている時に咳が出やすい場合は、後鼻漏からの刺激が原因である可能性が高いと考えられます。
喉が痛いと、まずは市販の風邪薬や喉の痛みを抑える薬に頼ることが多いかもしれません。
しかし、副鼻腔炎が原因の場合、痛みの根本は鼻の奥にある副鼻腔の炎症です。
そのため、喉の炎症を一時的に抑える薬を服用しても、原因である後鼻漏や鼻詰まりが解決されない限り、症状はなかなか改善しません。
「薬を飲んでいるのに、喉のイガイガや痰の絡みだけがしつこく残る」という場合は、副鼻腔炎を疑い、適切な治療に切り替える必要があります。
副鼻腔炎による喉の痛みは、原因である鼻の状態をケアすることで症状を和らげることが可能です。
病院に行く時間がない場合や、専門的な治療と並行して自宅でできる対処法を知っておくことは、つらい症状の緩和に役立ちます。
ここでは、後鼻漏や喉の乾燥といった根本原因にアプローチする、4つの効果的なセルフケアを紹介します。
これらの対処法を実践し、不快な喉の痛みを少しでも軽減させましょう。

喉の痛みの直接的な原因である後鼻漏を改善するために、鼻うがいは非常に効果的です。
体液に近い濃度の生理食塩水を使い、鼻の奥や副鼻腔に溜まった膿、アレルギー物質を物理的に洗い流します。
これにより、喉に鼻水が流れ落ちる量を減らし、喉の粘膜への刺激を直接的に軽減できます。
市販の鼻うがい専用キットを使えば、誰でも安全かつ簡単に行えます。
特に朝起きた時や就寝前に行うと、日中や睡眠中の不快感を和らげるのに役立ちます。
鼻詰まりによる口呼吸は喉の乾燥を招き、痛みを悪化させます。
特に空気が乾燥しやすい冬場や、エアコンを使用する環境では、意識的に湿度を保つことが重要です。
加湿器を使用して部屋の湿度を50~60%程度に保ちましょう。
また、就寝時にマスクを着用するのも効果的です。
自分の呼気に含まれる湿気によって、マスク内が保湿され、喉の粘膜の乾燥を防ぐことができます。
日中の外出時もマスクをつけることで、喉を乾燥やホコリから守れます。
喉の粘膜が乾燥すると、痛みを感じやすくなります。
こまめに水分を補給することで、喉を内側から潤し、粘膜のバリア機能をサポートします。
水やお茶など、温かい飲み物は喉の血行を促進し、痛みを和らげる効果も期待できます。
また、水分を十分に摂ることは、喉に絡みついた粘り気の強い痰を柔らかくし、排出しやすくする助けにもなります。
一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ頻繁に口に含むように心がけましょう。
喉の痛みが強く、仕事や日常生活に支障をきたす場合は、一時的な対処として市販の鎮痛薬を使用するのも一つの方法です。
ロキソプロフェンやイブプロフェンといった成分を含む薬は、喉の炎症に伴う痛みを効果的に和らげます。
ただし、これらはあくまで対症療法であり、副鼻腔炎そのものを治療するものではありません。
市販薬を使用しても症状が改善しない、または長引く場合は、根本的な原因を治療するために医療機関を受診することが必要です。
セルフケアを続けても喉の痛みが改善しない、あるいは症状が悪化する場合は、耳鼻咽喉科での専門的な治療が必要です。
医療機関では、原因となっている副鼻腔炎そのものにアプローチし、鼻と喉の両方の症状を根本から改善することを目指します。
薬の処方から専門的な処置まで、症状の程度に応じたさまざまな治療法が選択されます。
細菌感染による急性副鼻腔炎が疑われる場合、原因菌を叩くための抗生剤が処方されます。
適切な抗生剤を服用することで、副鼻腔内の細菌の増殖を抑え、膿の産生を減らします。
これにより、後鼻漏が改善し、喉の痛みも和らいでいきます。
また、鼻水の粘り気を和らげて排出しやすくする去痰薬や、アレルギーが関与している場合の抗アレルギー薬、鼻粘膜の炎症を抑える点鼻薬など、症状に合わせて複数の薬が組み合わせて処方されることもあります。
耳鼻咽喉科では、鼻の奥が痛い原因となっている副鼻腔に溜まった膿や鼻水を、専用の吸引器を使って直接吸い出す処置を行います。当院では一般的な吸引以外にも、鼻の奥の方まで吸い出すように心がけております。
これにより、鼻の通りが良くなるだけでなく、後鼻漏の原因となる鼻水を物理的に取り除くため、喉への負担がすぐに軽減されます。
また、抗生剤やステロイドなどの薬剤を霧状にして鼻や喉の奥に直接届けるネブライザー治療も効果的です。
薬剤が患部に直接作用するため、効率的に炎症を鎮めることができます。
(Pediatrics, 2004、J Pediatr, 1993などで報告あり)
後鼻漏によって鼻の突き当たりにある「上咽頭」という部分の炎症が長引き、慢性化してしまった場合、Bスポット療法(EAT)という治療が有効なことがあります。
これは、塩化亜鉛という薬剤を染み込ませた綿棒で上咽頭を直接擦過する治療法です。
強い炎症を鎮静化させ、しつこい喉の痛みや違和感、後鼻漏の改善が期待できます。
週に1回程度の通院が必要になりますが、他の治療で改善しなかった慢性的な症状に効果を発揮することがあります。
症状が改善しない場合は、お早めにご相談ください。
副鼻腔炎による喉の痛みは、セルフケアで様子を見られる場合もありますが、中には専門的な治療をすぐに開始すべきケースもあります。
放置することで症状が慢性化したり、重症化したりする可能性もあるため、受診のタイミングを見極めることが重要です。
以下のような症状が見られる場合は、自己判断で済ませず、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

「鼻うがい」や加湿、市販薬の使用といったセルフケアを1週間以上続けても改善しない、あるいは悪化している場合は、炎症が根深いか、原因が他にある可能性があります。
専門医による正確な診断と、症状に応じた適切な治療を受けるため、一度医療機関で診てもらうことを推奨します。
喉の痛みに加えて、顔面痛・頭痛・歯の痛みを伴う、頭が重い感じがする、上の歯が痛むといった症状は、急性副鼻腔炎の典型的なサインです。
副鼻腔内に膿が溜まり、内圧が高まっていることでこれらの症状が引き起こされます。
症状が強い場合は早急な治療が必要となるため、我慢せずに受診してください。
黄色や緑色の鼻水は、白血球がウイルスや細菌と戦っているサインです。必ずしも細菌感染のみを意味するわけではありませんが、こうした鼻水が長引く場合は細菌感染が定着している可能性が高く、放置すると慢性副鼻腔炎へ移行するリスクがあります。
鼻水の色が濃くなったまま改善が見られない場合や、他の症状を伴う場合は、自己判断せず早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断を受けることが大切です。
喉の痛みや鼻症状とともに38度以上の高熱を伴う場合、体内で強い炎症が起きていることを示しています。
副鼻腔炎が悪化している可能性があり、適切な診断のもとで抗生剤の投与や解熱剤の使用が必要になります。
特に顔面の腫れや激しい頭痛を伴う場合は、緊急性が高いケースもあるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
当クリニックでは、日本耳鼻咽喉科学会専門医が、副鼻腔炎に伴う喉の痛みや後鼻漏といった複雑な症状の原因を的確に診断します。
必要に応じてファイバースコープを用いて鼻の中を詳細に観察します。ファイバースコープでは、口を開けただけでは見えない鼻の奥や上咽頭、喉頭、声帯の状態を詳細に観察できます。
更に、当院では副鼻腔の状態を立体的に評価できるCT検査を完備しており、診断の精度を高めています。
薬物治療はもちろん、鼻処置やネブライザー治療、慢性的な上咽頭炎に対するBスポット療法(EAT)にも対応し、一人ひとりの症状に合わせた最適な治療法を提案します。
ここでは、副鼻腔炎と喉の痛みに関して、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
耳鼻咽喉科の受診を推奨します。
鼻と喉はつながっており、両方を専門的に診察できるのが耳鼻咽喉科です。
ファイバースコープを用いて、内科では見ることが難しい鼻の奥や喉の状態を直接観察できるため、より正確な診断と原因に沿った治療が可能です。
軽症のウイルス性副鼻腔炎であれば、体の免疫力で自然に治癒し、それに伴い喉の痛みも解消されることがあります。
しかし、細菌感染を伴う場合や症状が長引く場合は、治療しないと慢性化するリスクがあります。
根本原因である副鼻腔炎をしっかり治すことが重要です。
後鼻漏の原因である副鼻腔炎に対応する市販薬の活用が有効です。
膿を出しやすくする「辛夷清肺湯」などの漢方薬や、痰を切れやすくする去痰薬(カルボシステインなど)が症状緩和に役立ちます。
痛みが強い場合は、鎮痛薬の併用も可能です。
ただし、これらは対症療法のため、症状が続く場合は受診が必要です。
副鼻腔炎による喉の痛みは、膿を含んだ鼻水が喉に流れる「後鼻漏」と、鼻詰まりによる「口呼吸」が主な原因です。
セルフケアとしては、鼻うがいによる洗浄や部屋の加湿、こまめな水分補給が有効です。
しかし、顔面痛・頭痛・歯の痛みを伴う場合や38度以上の高熱、1週間以上セルフケアを続けても改善しない場合は、耳鼻咽喉科での専門的な治療が必要です。
原因となる副鼻腔炎を適切に治療することで、つらい喉の症状を根本から改善することが期待できます。
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「のどを見たら白い塊がついていた」
「咳をしたら臭い玉が出てきた」
「口臭の原因が膿栓ではないか心配」
このような相談は耳鼻咽喉科でも少なくありません。
膿栓(のうせん)は「臭い玉」とも呼ばれ、多くは病気ではありません。しかし、口臭やのどの違和感の原因となることがあり、繰り返しできることで悩まれている方もいらっしゃいます。
今回は、膿栓の原因・治療・予防法について、最新の知見も交えながら分かりやすく解説します。
膿栓(臭い玉)とは?
膿栓とは、口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)のくぼみにできる黄白色の小さな塊です。
「膿」という名前がついていますが、実際には膿そのものではありません。
膿栓は、食べ物の細かな残り・細菌・はがれた粘膜・白血球・唾液中の成分などが集まり、固まってできたものです。多くは数mm程度ですが、大きくなることもあります。
膿栓が長期間扁桃内に留まると、カルシウム・リン酸カルシウム・炭酸カルシウムなどのミネラルが沈着し、石灰化が起こります。これが「扁桃石」です。
なぜ膿栓ができるの?

口蓋扁桃は細菌やウイルスから体を守る免疫器官です。表面には「陰窩(いんか)」と呼ばれる細かな溝やくぼみが多数あります。
このくぼみに
食べ物・細菌・白血球・はがれた粘膜などが入り込み
↓
時間とともに固まり
↓
膿栓になります
つまり、膿栓は扁桃の構造上、ある程度自然にできるものと考えられています。
臭いの原因は?
膿栓は時として大きくなり強い臭いを発することがあります。
これは、膿栓の中で増殖した嫌気性菌が、硫化水素・メチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物(VSC)を産生するためです。これらは口臭の代表的な原因物質でもあります。
そのため、「朝だけ口臭が気になる」「咳をすると臭い玉が出る」という症状が現れることがあります。
膿栓ができやすい人
次のような方では膿栓ができやすい傾向があります。
・慢性扁桃炎
・扁桃のくぼみが深い
・後鼻漏(鼻水がのどへ流れる)
・鼻づまり・口呼吸
・ドライマウス
・喫煙
耳鼻咽喉科では、膿栓だけではなく、その背景にある鼻やのどの病気を評価することが重要です。
症状
膿栓で多い症状は、
・白い塊が見える
・口臭
・のどの違和感
・異物感
・咳払い
・飲み込む時の違和感
などです。
一方で、痛みや発熱がないことがほとんどです。
もし強い痛みや高熱を伴う場合には、急性扁桃炎など別の病気を考えます。
自分で取ってもいい?
「綿棒で取っています」
「ピンセットで取っています」
という方もいますが、
基本的にはおすすめできません。
無理に取ろうとすると、出血・粘膜損傷・扁桃炎・奥へ押し込んでしまうなどの可能性があやまもと。
小さな膿栓は自然に取れたり、飲み込んだりしていることも多く、健康上問題になることはほとんどありません。
耳鼻咽喉科ではどんな治療をする?
症状が軽い場合には治療を行わず経過観察となることもあります。
口臭や異物感が強い場合には、
・膿栓の除去
・慢性扁桃炎の治療
・鼻炎、副鼻腔炎の治療
・口呼吸の改善
などを行います。
膿栓だけを繰り返し取っても根本治療にはならないため、原因となる病気の治療が重要です。
手術は必要?
膿栓だけを理由に扁桃摘出術を行うことは一般的ではありません。
ただし、年に何度も扁桃炎を繰り返す場合などには、扁桃摘出術が検討されることがあります。
膿栓を予防する方法
残念ながら、膿栓を完全に予防する方法は確立されていません。
しかし、次のような習慣は再発予防につながると考えられています。
① 毎日の口腔ケア
・歯磨き
・デンタルフロス
・舌清掃
口腔内細菌を減らすことが基本です。
② 水分を十分に摂る
唾液には細菌を洗い流す働きがあります。
口の乾燥を防ぐことが重要です。
③ 鼻づまりを治療する
鼻づまりがあると口呼吸になり、口腔内が乾燥して細菌が増えやすくなります。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療は膿栓予防にもつながります。
④ 禁煙
喫煙は口腔内細菌叢や口臭に悪影響を与えます。
⑤ 慢性扁桃炎を適切に治療する
繰り返す扁桃炎がある方では、耳鼻咽喉科での評価が大切です。
最新の研究では何が分かっている?
近年の研究では、以下のことが指摘されています。
・膿栓は扁桃のくぼみに細菌や食物残渣が蓄積して形成される
・小さい膿栓は無症状が多い
・保存的治療が第一選択
・放線菌(Actinomyces)だけが原因ではなく、さまざまな細菌が関与する
・慢性副鼻腔炎との関連も報告されている
つまり、「臭い玉だけを取る」のではなく、鼻やのどの状態も含めて診察・治療することが再発予防につながると考えられています。
このような症状は耳鼻咽喉科へ
次のような場合には受診をおすすめします。
・強い口臭で困っている
・のどの違和感が続く
・何度も膿栓ができる
・発熱や強い痛みを伴う
・飲み込みにくい
・片側だけ大きく腫れている
まとめ
膿栓(臭い玉)は、多くの場合、口蓋扁桃のくぼみに細菌や食べ物の残りなどがたまってできる良性の変化です。
口臭やのどの違和感の原因になることがありますが、ほとんどは心配のいらないものです。
一方で、繰り返す膿栓の背景には、慢性扁桃炎やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、口呼吸などが隠れていることがあります。
気になる症状が続く場合は、自己処置を繰り返すのではなく、一度耳鼻咽喉科で相談することをおすすめします。
参考文献
Smith KL, et al. Am Fam Physician. 2023.
Arvisais-Anhalt S, et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2020.
Kaleemullah S, et al. Indian J Otolaryngol Head Neck Surg. 2024.
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帯状疱疹は「皮膚だけ」の病気ではありません

最近、CMで「帯状疱疹ワクチン」という言葉を聞く機会が増えていると思います。
「帯状疱疹」と聞くと、皆さんは帯状の皮膚の赤い発疹・水疱や痛みを想像すると思います。耳鼻科領域では、顔面の感覚神経である三叉神経領域の障害や顔面神経麻痺などで受診され、治療を行うことがあります。子供の頃にかかったウイルスが潜んでおり、免疫の低下・加齢などで再活性化することで、顔面領域の皮膚症状や顔面神経麻痺などを引き起こします。治療は基本的に抗ウイルス薬やステロイド、痛み止めを中心に治療を行います。
皆さんは帯状疱疹と聞くと、その後の痛みのみが印象的だと思いますが、実は脳梗塞の危険性も高くなることはご存知でしょうか。
〜実は脳梗塞のリスクが高まることがあります〜
「帯状疱疹は皮膚の病気」と思われている方は多いのではないでしょうか。
確かに帯状疱疹は、赤い発疹や水ぶくれ、強い痛みを伴う皮膚の病気です。しかし近年の研究では、帯状疱疹は皮膚だけでなく血管にも影響を及ぼし、一時的に脳梗塞のリスクを高める可能性があることが明らかになってきました。
今回は、帯状疱疹と脳梗塞の関係について、耳鼻咽喉科専門医の立場から分かりやすく解説します。
帯状疱疹とは?
帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)の原因である水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus:VZV)が原因です。子どもの頃にかかった水ぼうそうが治った後も、このウイルスは完全には体からいなくなりません。
神経節という神経の根元に何十年も潜伏し、加齢・疲労・ストレス・睡眠不足・病気などによる免疫力低下が引き金となり再び活動し始めてしまいます。
その結果、神経に沿って、「ピリピリした痛み」「発疹」「水ぶくれ」が帯状に現れます。
なぜ帯状疱疹で脳梗塞が起こるのでしょうか?
帯状疱疹ウイルスは神経に沿って広がるだけではありません。
近年の研究では、神経から血管へ広がり、血管の壁に炎症(血管炎)を起こすことが分かっています。

血管に炎症が起こる
→血管が狭くなる
→血液が流れにくくなる
→血栓(血の塊)ができやすくなる
という経過で脳の血流が妨げられ、脳梗塞が起こることがあります。
この病態はVZV血管症(Varicella-zoster vasculopathy)と呼ばれています。
頭頸部、とくに顔面や耳の帯状疱疹では脳へ向かう血管に近い場所で炎症が起こるため、より注意が必要と考えられています。
発症後1か月は特に注意
帯状疱疹による脳梗塞は、いつでも起こるわけではありません。

世界中の多くの研究では、帯状疱疹を発症してから最初の数週間〜1か月が最も危険な時期であることが示されています。
その後は徐々にリスクは低下しますが、約6か月〜1年程度は通常より高い状態が続くという報告もあります。
特に耳鼻科も密接に関わる領域である、
・顔の帯状疱疹
・目の周囲の帯状疱疹(眼部帯状疱疹)
では脳梗塞のリスクがさらに高くなることが報告されています。
どれくらいリスクは高くなるの?
研究によって数値は多少異なりますが、帯状疱疹発症後1か月以内では脳梗塞の発症リスクがおよそ1.5〜2倍になることが報告されています。
また、眼部帯状疱疹では、それ以上にリスクが高くなる可能性が示されています。もちろん、帯状疱疹になった方すべてが脳梗塞になるわけではありません。しかし、「皮膚だけの病気ではない」という認識を持つことが大切です。
特に注意したい方
次のような方では、もともとの脳梗塞リスクに帯状疱疹の影響が加わるため、より注意が必要です。
・65歳以上
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・喫煙
・心臓病(不整脈など)
・顔や耳、目の周囲に帯状疱疹ができた方
これらに当てはまる方は、帯状疱疹をきっかけに脳梗塞を起こさないよう、体調の変化に十分注意しましょう。
こんな症状があればすぐ救急受診
帯状疱疹の治療中でも、以下の症状が現れた場合は脳梗塞の可能性があります。
・顔がゆがむ
・手足に力が入らない
・手足がしびれる
・ろれつが回らない
・言葉が出ない
・急に片目が見えにくくなった
・強いめまいや歩けない
脳梗塞は時間との勝負です。症状に気づいたら様子を見ずに、119番通報または救急病院を受診してください。
但し、脳梗塞ではなく顔面神経麻痺のみであれば耳鼻科受診をお勧めします。麻痺の程度により追加の検査や治療が必要になることがあります。
〜帯状疱疹になったら大切なこと〜
①できるだけ早く治療を開始する
帯状疱疹は、発症から72時間以内に抗ウイルス薬を開始することで、以下のことが期待できます。
・症状を軽くする
・発疹を早く治す
・帯状疱疹後神経痛(PHN)を減らす
痛みが強い場合には鎮痛薬を併用することもあります。
②生活習慣病をしっかり管理する
帯状疱疹そのものだけでなく、血圧 ・血糖値 ・コレステロール を適切に管理することも、脳梗塞予防につながります。
また、禁煙 ・十分な睡眠 ・バランスの良い食事も重要です。
〜ワクチンは重い合併症の予防にも期待〜
現在、日本では帯状疱疹ワクチンが接種できます。
ワクチンには以下の効果が確認されています。
・帯状疱疹そのものを予防する
・帯状疱疹後神経痛を減らす
さらに近年では、帯状疱疹を予防することで、結果的に帯状疱疹後の脳梗塞リスクも減少する可能性が報告されています。特に50歳以上の方や、免疫力が低下しやすい方は、ワクチン接種を検討するとよいでしょう。
※当院では不活化ワクチンのみ接種可能です。ご希望の方は電話にてお問い合わせください。
〜耳鼻咽喉科で注意していること〜
耳鼻咽喉科では、耳や顔面の帯状疱疹を診療する機会が多くあります。
代表的なものとして、以下のものが挙げられます
・ラムゼイ・ハント症候群(耳性帯状疱疹)
・三叉神経領域の帯状疱疹
・眼部帯状疱疹
これらは顔面神経麻痺や難聴、めまいなどを引き起こすだけでなく、まれに脳の血管へ影響を及ぼす可能性もあるため、神経症状や脳梗塞を疑う症状がないか慎重に診察しています。
〜まとめ〜
帯状疱疹は、単なる皮膚の病気ではありません。
ウイルスが血管に炎症を起こすことで、一時的に脳梗塞のリスクが高まることがあります。特に発症後1か月は注意が必要で、顔や耳、目の周囲の帯状疱疹ではより慎重な経過観察が望まれます。
帯状疱疹を疑う症状があれば、できるだけ早く耳鼻咽喉科や皮膚科を受診し、適切な治療を開始しましょう。また、50歳以上の方やリスクの高い方は、帯状疱疹ワクチンも有効な予防手段の一つです。
皮膚症状だけでなく、「ろれつが回らない」「手足が動かしにくい」「顔がゆがむ」などの症状があれば、迷わず救急受診することが大切です。
参考文献
Langan SM, et al. Clin Infect Dis. 2014;58:1497-1503.
Breuer J, et al. Neurology. 2014;82:206-212.
Gilden D, et al. Lancet Neurol. 2009;8:731-740.
Cohen JI. N Engl J Med. 2013;369:255-263.
日本皮膚科学会. 帯状疱疹診療ガイドライン 2025.
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「耳掃除は毎日したほうが清潔」
「耳あかは全部取ったほうがいい」
そう思って、毎日のように耳掃除をしている方も少なくありません。
しかし近年、頻回な耳掃除(耳かき)が、外耳道癌との関連を示唆する研究が報告(頭頸部癌 43(1):76-78,2017)されています。もちろん、「耳掃除をすると外耳道癌になる」と証明されたわけではありませんが、必要以上の耳かきは避けた方が良いと考えられています。
外耳道癌とは?
~治らない外耳炎の中に隠れていることもある、まれながん~
外耳道癌は、耳の入り口から鼓膜まで続く「外耳道」に発生する悪性腫瘍です。頭頸部がんの中でも非常にまれな病気ですが、初期症状が外耳炎とよく似ているため、診断が遅れることがあります。
耳の痛みや耳だれ、耳のかゆみが続き、「外耳炎だから大丈夫」と思っていたら、実は外耳道癌だったというケースもあります。そのため、治療しても改善しない外耳炎では、詳しい検査が重要になります。
外耳道癌の原因は?
はっきりした原因はまだ分かっていませんが、
・慢性的な外耳炎
・長期間続く耳だれ
・放射線治療の既往
・慢性的な炎症や刺激
などが関係すると考えられています。
「頻回な耳掃除」にも注意
近年、日本から興味深い研究が報告されています。東京大学の研究では、50歳未満の外耳道癌患者さんでは、「1日に1回以上の耳掃除」や「竹製などの硬い耳かき」を使う習慣が、健康な方よりも多いことが報告されました。また、右利きの方では右耳に外耳道癌が多いことも報告(Laryngoscope. 2017)されており、日常的な耳かきによる慢性的な刺激が関係している可能性が示唆されています。
もちろん、耳掃除をしたから必ず外耳道癌になるわけではありません。しかし、毎日のような耳掃除は外耳道の皮膚を傷つけるため、必要以上の耳掃除は控えることがすすめられています。

こんな症状は要注意
次のような症状が続く場合は、一度耳鼻咽喉科を受診しましょう。
・耳だれがなかなか治らない
・血が混じった耳だれ
・強い耳の痛み
・耳のかゆみが長く続く
・外耳炎を何度も繰り返す
・聞こえが悪くなった
・顔の動きが悪くなった
特に「外耳炎の治療をしているのに改善しない」という場合には、生検(組織検査)が必要になることがあります。
九州大学耳鼻咽喉科や九州がんセンター頭頸科から世界へ発信している研究
外耳道癌・側頭骨癌は非常にまれな病気であるため、世界的にも治療に関するデータは限られています。
そのような中で、九州大学耳鼻咽喉科と九州がんセンター頭頸科は世界でも有数の症例数を有し、以下のように多くの研究成果を世界に向けて発表しています。これらの研究は、現在の診療方針にも大きく貢献しています。
・早期発見及び完全切除が重要
・血液検査から「治療の見通し」を予測できる可能性
・がんを攻撃する「免疫」の働きの解明
・外耳道癌の遺伝子異常を世界に先駆けて解析
・外耳道癌の手術方法をさらに進歩
Japanese Journal of Head and Neck Cancer. 2020;46(1):11-17.
Cancer Science. 2020;111: 3010 – 3019
Laryngoscope. 2021;131(8): 1782 – 1789
Laryngoscope. 2021;131(12): 2674 – 2683.
Cancers. 2023;15:4289
Otology & Neurotology. 2025;46:972-977
Cancer Research Communications. 2026;6(2):260-272.
外耳道癌がどのような遺伝子異常によって発生・進行するのかが明らかになりつつあり、将来的には分子標的治療や個別化医療につながることが期待されています。
外耳道癌は非常にまれな病気ですが、その診断や治療は日々進歩しています。私自身も、九州大学耳鼻咽喉科・九州がんセンターで行われた外耳道癌に関する研究の一部に携わることができたことを、大変誇りに思っています。これからも最新の知見を日々の診療に生かし、地域の皆さまへ質の高い医療を提供できるよう努めてまいります。
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