耳鳴りでお悩みの方へ|原因・検査・治療法を耳鼻咽喉科専門医がわかりやすく解説

「キーン」「ジー」という耳鳴りは病気のサイン?
「静かな場所で耳鳴りが気になる」
「キーンという高い音がずっと続く」
「最近、片耳だけ耳鳴りがする」
「耳鳴りに加えて聞こえも悪くなった」
このような症状でお困りではありませんか?
耳鳴りは誰でも一度は経験する症状ですが、長く続く場合や難聴・めまいを伴う場合には、耳の病気が隠れていることがあります。実際に日本では、人口の約10~15%が慢性的な耳鳴りを経験しているとされ、加齢とともに増加します。また、生活に支障をきたすほど強い耳鳴りは約2~3%の方にみられると報告されています。耳鳴りは「年齢のせいだから仕方ない」と諦める必要はありません。原因を調べ、適切な治療や対処法を行うことで症状が軽減する方も少なくありません。
耳鳴りとは?
耳鳴りとは、実際には音が出ていないのに音が聞こえる状態です。
代表的には、、、
「キーン」
「ジー」
「シーン」
「ゴー」
「ブーン」
「ピー」
など様々な音として感じます。
耳鳴りには2種類あります
① 自覚的耳鳴り(ほとんどがこれ)
本人だけが聞こえる耳鳴りです。約95%以上を占め、難聴や加齢、ストレスなどが関係しています。
② 他覚的耳鳴り
非常に稀ですが、他者(医師・看護師など)も聴診器などで確認できる耳鳴りです。
原因として、
・血流の異常
・筋肉のけいれん
・血管の病気
などがあります。
特にドクンドクンと脈に一致する耳鳴り(拍動性耳鳴)では、血管疾患が隠れていることがあり、詳しい検査が必要になります。
耳鳴りの原因
耳鳴りは一つの病気ではなく、「症状」です。様々な原因によって起こります。
①加齢による難聴(老人性難聴)
最も多い原因です。
年齢とともに内耳の細胞が減少すると、聞こえにくさとともに耳鳴りを感じやすくなります。
高音域から聞こえにくくなることが特徴です。
② 突発性難聴
ある日突然、下記のような症状が起こります。
「耳が聞こえない」
「耳が詰まる」
「強い耳鳴り」
発症から早期(できれば1週間以内、遅くとも2週間以内)の治療開始が予後を左右するため、緊急性の高い疾患です。自己判断で様子をみないように耳鼻科へ相談しましょう。
③ メニエール病
内耳にリンパ液がたまる病気です。
特徴は、耳鳴り・難聴・めまいを繰り返すことです。
④ 騒音性難聴
ライブ、コンサート、工事現場、工場、イヤホンの大音量などで内耳が障害されることがあり、これらが原因で症状が出てきます。
若い世代でも非常に増えています(ヘッドホン難聴、イヤホン難聴などと言われることもあります)。
⑤ 耳垢栓塞
耳垢が完全に詰まると、耳鳴り・耳閉感・難聴を起こすことがあります。耳垢を除去するだけで改善することもあります。但し、ご自宅での除去は外耳道や鼓膜を傷つける可能性があるため危険ですので、耳鼻科へご相談ください。
⑥ ストレス・睡眠不足
ストレスや疲労が続くと、耳鳴りそのものが悪化するだけではなく、「耳鳴りが気になる脳」の働きが強くなることが知られています。つまり、耳鳴りの音そのものよりも、「脳が耳鳴りを意識し続ける状態」が症状を悪化させます。
⑦ 聴神経腫瘍
片耳だけの難聴や耳鳴りでは、まれに聴神経腫瘍が見つかることがあります。必要に応じてMRI検査を行います。
耳鳴りはなぜ起こるの?

近年では、耳鳴りは耳だけではなく「脳」で感じている症状と考えられています。難聴になると、耳から脳へ送られる音の情報が減少します。すると脳は不足した音(特定の周波数の音)を補おうとして、神経活動を過剰に高めます。その結果、存在しない音を作り出してしまうと考えられています。これを中枢ゲイン仮説(Central Gain Theory)と呼びます。現在、この考え方が耳鳴り研究の中心となっています。
耳鳴りで病院を受診すべき症状
次の場合は早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
・突然耳鳴りが始まった
・聞こえが悪い
・片耳だけの耳鳴り
・めまいがある
・耳が詰まる
・拍動する耳鳴り
・数週間以上続く
・日常生活に支障がある
耳鼻咽喉科で行う検査

耳鳴りの原因を調べるために、以下の診察・検査を行います。
・耳の診察
耳垢や鼓膜の異常を確認します。
・聴力検査
最も重要な検査です。難聴の有無や種類を評価します。
・ティンパノメトリー
鼓膜と中耳の状態を調べます。
必要に応じて、語音聴力検査、耳音響放射(OAE)、ABR(聴性脳幹反応)、MRI、血液検査などを追加します。クリニックではできない検査もあり、その場合は総合病院をご紹介いたします。
耳鳴りの治療
① 原因疾患の治療
最も重要です。例えば、突発性難聴、中耳炎、耳垢、メニエール病などは原因を治療します。原因が治れば耳鳴りも軽減・消失が期待できます。
② 補聴器
難聴がある患者さんでは、補聴器により耳鳴りが改善することが多く報告されています。音が脳へ十分に入ることで、耳鳴りの感じ方が軽減します。近年は耳鳴り診療ガイドラインでも推奨度の高い治療となっています。
③ TRT(Tinnitus Retraining Therapy; 耳鳴順応療法)
耳鳴りを完全に消すことではなく、「気にならない状態」にする治療です。音響療法とカウンセリングを組み合わせます。
④ 認知行動療法(CBT)
近年最もエビデンスが蓄積されている治療の一つです。耳鳴りに対する不安や恐怖を軽減し、生活への影響を減らします。
⑤ 睡眠・ストレス対策
耳鳴りは、睡眠不足、不安、疲労で悪化します。
十分な睡眠やストレスコントロールは治療の一部です。
自宅でできる耳鳴り対策

以下の方法が症状の軽減につながることがあります。
・静かすぎる環境を避ける
・ヒーリング音楽や自然音を流す
・十分な睡眠
・適度な運動
・カフェイン・アルコールの摂り過ぎに注意
・禁煙
・イヤホンの大音量を避ける
「完全な静寂」は耳鳴りをかえって意識しやすくするため、就寝時に小さな環境音(川のせせらぎや雨音など)を流すことが役立つ場合があります。耳鳴りよりもやや小さめな音にしましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 耳鳴りは治りますか?
原因によります。耳垢や中耳炎など治療可能な原因であれば改善や治癒が期待できます。一方、慢性的な耳鳴りでも適切な治療により「気にならない状態」まで軽減できることは少なくありません。
Q. ストレスだけで耳鳴りになりますか?
ストレスのみが原因というよりも、ストレスが耳鳴りを悪化・持続させる要因となります。睡眠不足や疲労も関与します。
Q. サプリメントは効果がありますか?
ビタミン剤、亜鉛などが用いられることがありますが、現時点では慢性耳鳴りに対する有効性を裏付ける十分なエビデンスはありません。自己判断で継続する前に耳鼻咽喉科で相談しましょう。
Q. 耳鳴りがあると脳の病気でしょうか?
ほとんどは耳や聴覚系の問題ですが、片側のみの耳鳴りや拍動性耳鳴り、神経症状を伴う場合にはMRIなどで精査が必要になることがあります。
まとめ
耳鳴りは多くの方が経験する症状ですが、その背景には難聴、突発性難聴、メニエール病、耳垢、ストレス、まれな腫瘍などさまざまな原因があります。特に、「急に始まった耳鳴り」「片耳だけの耳鳴り」「難聴やめまいを伴う耳鳴り」「脈に合わせて聞こえる耳鳴り」は、早めの受診が重要です。
耳鼻咽喉科では、耳の診察や聴力検査を行い、原因を明らかにしたうえで、一人ひとりに適した治療をご提案します。慢性的な耳鳴りでも、補聴器や耳鳴順応療法(TRT)、認知行動療法(CBT)などを組み合わせることで、生活の質(QOL)の改善が期待できます。
耳鳴りを「年齢のせい」とあきらめず、気になる症状が続く場合は、お早めにお近くの耳鼻咽喉科へご相談ください。
参考文献
耳鳴診療ガイドライン 2019 日本耳鼻咽喉科学会・日本聴覚医学会 編.
American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery. Clinical Practice Guideline: Tinnitus. Otolaryngol Head Neck Surg. 2014.
European Federation of Audiology Societies. European guideline for tinnitus. HNO. 2019.
Pawel J. Jastreboff. Phantom auditory perception (tinnitus): mechanisms and management. Neurosci Res. 1990.
Deborah A. Hall wt al. Lancet.
耳鳴り診療に関するレビュー 2024.
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