
「子どもが毎晩いびきをかいているけど、大丈夫?」
「寝ているときに口が開いている」
「ときどき呼吸が止まっているように見える」
このようなお子さんの症状について、心配されたことはありませんか?
大人のいびきはよく知られていますが、実は子どものいびきにも注意が必要です。
特に、毎晩のようにいびきをかいている場合には、アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大によって空気の通り道が狭くなり、睡眠中の呼吸に影響している可能性があります。
睡眠中の呼吸障害は、睡眠の質だけでなく、日中の集中力や行動、成長などにも影響することがあります。
今回は、子どものいびきの原因やアデノイド肥大、睡眠時無呼吸症候群について、耳鼻咽喉科専門医の立場からわかりやすく解説します。
結論からいうと、風邪のときだけ一時的にいびきをかく場合と、普段から繰り返しいびきをかく場合では、対応が異なります。
風邪や一時的な鼻づまりによっていびきが出ることは珍しくありません。鼻づまりが改善すると、いびきも自然に治まる場合があります。
一方、風邪をひいていないときにも毎晩のようにいびきをかいている場合は、注意が必要です。
特に次のような症状がある場合には、睡眠中の呼吸障害が隠れている可能性があります。
・週3回以上、習慣的にいびきをかく
・いびきの音が大きい
・寝ているときに呼吸が止まることがある
・息を吸うときに胸やお腹が大きく動く
・寝相が非常に悪い
・寝汗が多い
・いつも口を開けて寝ている
・朝起きにくい、日中の集中力が続かない
ただし、いびきがあるからといって、必ず睡眠時無呼吸症候群というわけではありません。
いびきの原因や睡眠中の呼吸状態を確認することが大切です。
子どものいびきは、鼻から喉にかけての空気の通り道(上気道)が狭くなることで発生します。
代表的な原因には、次のようなものがあります。
① アデノイド肥大
アデノイドとは、鼻の奥にある上咽頭という場所に存在するリンパ組織です。
子どもの成長とともに大きくなり、一般的には3〜7歳頃に比較的大きくなった後、学童期以降に徐々に縮小していき、中学生頃には目立たなくなる傾向があります。
アデノイドが大きくなりすぎると、鼻の奥の空気の通り道が狭くなり、鼻づまりや口呼吸、いびきの原因となります。
また、アデノイド肥大は滲出性中耳炎や耳管機能障害に関係することもあります。
② 口蓋扁桃肥大
口蓋扁桃は、口を開けたときに喉の左右に見えるリンパ組織で、一般的に「扁桃腺」と呼ばれる部分です。
子どもでは口蓋扁桃が大きいことも珍しくありません。
ただし、扁桃が大きいだけで必ず問題になるわけではなく、喉の空気の通り道をどの程度狭くしているかが重要です。
特に、アデノイド肥大と口蓋扁桃肥大が両方ある場合には、睡眠中の呼吸障害を起こしやすくなります。
③ アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎
アレルギー性鼻炎などで鼻粘膜が腫れると、鼻呼吸がしにくくなります。
その結果、口呼吸が増えたり、睡眠中のいびきが悪化したりすることがあります。
アデノイドや扁桃がそれほど大きくなくても、鼻づまりが睡眠に影響している場合があります。
④ その他の原因
肥満、顎の発育や顔面骨格の特徴、先天的な上気道の狭さ、神経筋疾患なども睡眠中の呼吸障害に関係します。
そのため、子どものいびきは扁桃の大きさだけで判断することはできません。
アデノイドと口蓋扁桃は、どちらも免疫に関係するリンパ組織ですが、存在する場所が異なります。
| 比較項目 | アデノイド | 口蓋扁桃 |
| 場所 | 鼻の奥(上咽頭) | 喉の左右 |
| 口を開けて見える? | 通常は見えない | 見える |
| 主な症状 | 鼻づまり、口呼吸、いびき | いびき、睡眠中の呼吸障害、飲み込みにくさ |
| 関連する病気 | 滲出性中耳炎、副鼻腔炎など | 扁桃炎、睡眠時無呼吸など |
| 主な確認方法 | 鼻咽腔内視鏡など | 口腔・咽頭診察 |

特に注意したいのは、アデノイドは口を開けて喉を見ただけでは確認できないという点です。
喉の扁桃があまり大きくなくても、鼻の奥のアデノイドが大きく、鼻呼吸を妨げている場合があります。
耳鼻咽喉科では、必要に応じて細い内視鏡などを用いて鼻の奥の状態を確認します。
睡眠時無呼吸症候群(OSA:閉塞性睡眠時無呼吸)は、眠っている間に上気道が部分的または完全に塞がり、正常な呼吸が妨げられる病気です。
成人では肥満などが重要な原因となりますが、子どもではアデノイド肥大や口蓋扁桃肥大が代表的な原因です。
また、小児では成人と異なり、明らかな無呼吸だけでなく、呼吸が浅くなる低呼吸や、呼吸努力を伴う持続的な上気道狭窄が問題になる場合もあります。
・大人と子どもでは診断基準が違います
睡眠検査では、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示すAHI(無呼吸低呼吸指数)などを用いて評価します。
成人ではAHI 5回/時以上が診断の目安の一つですが、小児ではより少ない呼吸イベントでも異常と判断される場合があります。
一般に、小児ではAHI(または閉塞性AHI)が1回/時を超える場合に異常を疑い、症状や検査所見を組み合わせて診断します。
ただし、使用する指標や年齢、検査方法によって判定基準が異なるため、数値だけで診断するものではありません。
子どもの睡眠時無呼吸は、大人より軽い数値でも注意が必要なのです。
睡眠中の呼吸障害が続くと、睡眠の質が低下し、さまざまな影響が生じる可能性があります。
① 集中力や学習への影響
睡眠の質が悪くなることで、集中力や注意力、学習面に影響することがあります。
② 落ち着きのなさ・多動
大人では日中の眠気が目立つことが多いのに対して、子どもでは落ち着きのなさ、イライラ、多動などとして現れることがあります。
ただし、こうした症状にはさまざまな原因があり、睡眠時無呼吸だけで説明できるものではありません。
③ 成長への影響
重症例では、睡眠障害や呼吸努力の増加、食事摂取への影響などを通じて、体重増加不良や成長障害に関係する場合があります。
④ 心臓や血圧への影響
重症の睡眠時無呼吸が長期間続くと、血圧や心血管系への影響が生じることがあります。
これらの影響がすべてのお子さんに起こるわけではありませんが、習慣的ないびきを軽視しないことが大切です。
耳鼻咽喉科では、症状や年齢に応じて検査を組み合わせます。
① 問診・診察
いびきの頻度、睡眠中の無呼吸、寝相、日中の様子などを確認します。
また、鼻づまりやアレルギー性鼻炎の有無、口蓋扁桃の大きさ、顎や顔面の特徴なども評価します。
② 鼻咽腔内視鏡検査
必要に応じて、細い内視鏡を鼻から挿入し、アデノイドの大きさや鼻の奥の閉塞状態を確認します。
アデノイド肥大を評価するうえで重要な検査の一つです。
③ 睡眠検査
睡眠時無呼吸が疑われる場合には、睡眠中の呼吸状態を調べます。
代表的な検査は次の2つです。
・簡易睡眠検査
自宅で睡眠中の酸素飽和度や呼吸状態などを記録する検査です。使用する機器によって測定項目が異なります。
小児では簡易検査だけで睡眠時無呼吸を正確に診断・除外できない場合があるため、結果の解釈には注意が必要です。
・終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
呼吸、酸素飽和度、脳波、睡眠段階などを総合的に評価する精密検査です。
小児の閉塞性睡眠時無呼吸の診断における標準的な検査とされています。
すべてのお子さんに睡眠検査が必要というわけではなく、診察所見や症状の程度、年齢、基礎疾患などを踏まえて判断します。
なお、保護者の方が撮影した睡眠中の動画も、診察時の参考になることがあります。
アデノイドや口蓋扁桃は、成長とともに相対的に小さくなっていくことがあります。
そのため、症状が軽い場合には経過観察が選択されることもあります。
しかし、「成長すれば小さくなるから」といって、すべてのお子さんが様子を見てよいわけではありません。
睡眠中の無呼吸が明らかな場合や、日中の生活・成長への影響が疑われる場合には、積極的な評価や治療が必要です。
特に、重症の睡眠時無呼吸を自然軽快だけに期待して長期間放置することは勧められません。
治療方法は、原因や重症度によって異なります。
① 鼻炎・鼻づまりの治療
アレルギー性鼻炎などがある場合には、鼻噴霧用ステロイド薬や抗アレルギー薬などを用いて鼻の炎症を改善させます。
鼻づまりが改善することで、口呼吸やいびきが軽減する場合があります。
軽症の睡眠時無呼吸では、鼻噴霧用ステロイド薬が治療選択肢となることもありますが、適応や効果には個人差があります。
② アデノイド切除術・口蓋扁桃摘出術
アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大が睡眠時無呼吸の主な原因となっている場合には、手術を検討します。
代表的な手術は、アデノイド切除術と口蓋扁桃摘出術です。
小児の閉塞性睡眠時無呼吸において、アデノイド・口蓋扁桃肥大が認められる場合には、これらの手術が重要な治療選択肢となります。
ただし、扁桃が大きいという理由だけで、必ず手術が必要になるわけではありません。
睡眠中の呼吸障害の程度、年齢、全身状態、日常生活への影響などを総合的に判断します。
また、手術後も睡眠時無呼吸が残る場合があり、特に肥満や基礎疾患のあるお子さんでは術後評価も重要です。
③ CPAP療法など
手術が適さない場合や、手術後も睡眠時無呼吸が残る場合には、専門施設でCPAP療法などを検討することがあります。
小児のCPAP療法は、成人とは異なる専門的な管理が必要です。
次のような症状がある場合には、一度耳鼻咽喉科で相談することをお勧めします。

・風邪をひいていないのに、毎晩いびきをかいている
・睡眠中に呼吸が止まる、息苦しそうにしている
・寝ているときに胸やお腹が大きく動く
・普段から口呼吸をしている
・鼻づまりが長期間続いている
・寝相が悪く、何度も目が覚める
・日中の眠気や集中力の低下が気になる
・扁桃が大きいと指摘されたことがある
特に、呼吸停止を繰り返す、強い呼吸困難がある、顔色が悪くなるといった場合には、早急な医療機関での評価が必要です。
Q.子どものいびきは何歳まで様子を見てもよいですか?
A.年齢だけで判断することはできません。アデノイドは幼児期に大きくなりやすいものの、習慣的ないびきや無呼吸がある場合には、年齢に関係なく評価が必要です。
Q.アデノイド肥大は薬で小さくなりますか?
A.鼻噴霧用ステロイド薬などによって、鼻閉症状やアデノイドの大きさが一時的に改善する場合があります。ただし、すべてのお子さんに効果があるわけではなく、重度の閉塞がある場合には手術が必要となることもあります。
Q.子どもが口を開けて寝ているのは問題ですか?
A.口を開けて寝ているだけで病気とは限りませんが、鼻づまりやアデノイド肥大によって鼻呼吸が妨げられている可能性があります。いびきや日中の口呼吸も伴う場合には、原因を確認することをお勧めします。
Q.扁桃腺が大きいと必ず手術が必要ですか?
A.いいえ。扁桃の大きさだけで手術を決めることはありません。睡眠時無呼吸の程度や症状、成長への影響などを総合的に判断します。
Q.子どもの睡眠時無呼吸は自然に治りますか?
A.成長に伴って改善する場合もありますが、すべてのお子さんが自然に治るわけではありません。特に症状が強い場合や重症例では、適切な治療が重要です。
子どものいびきは、単なる寝息ではなく、鼻や喉の空気の通り道が狭くなっているサインかもしれません。
特に、アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大は、小児の睡眠時無呼吸症候群の代表的な原因です。
大切なのは、いびきの音だけで判断するのではなく、鼻づまりや口呼吸、睡眠中の呼吸状態、日中の様子などを総合的に確認することです。
「子どもだからいびきをかいても大丈夫」「成長すれば自然に治る」と決めつけず、気になる症状がある場合には早めに相談しましょう。
当院では、耳鼻咽喉科専門医・小児耳鼻咽喉科専門医が、子どものいびきや鼻づまり、口呼吸などの症状について診察を行っています。
子どものいびきには、アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大だけでなく、アレルギー性鼻炎など、さまざまな原因が関係します。
鼻や喉の状態を確認し、必要に応じて適切な検査や治療、専門医療機関への紹介を検討します。
福岡市城南区/福岡市中央区/福岡市早良区や周辺地域で、お子さんのいびき、睡眠中の呼吸、口呼吸、鼻づまりなどが気になる方は、お気軽にご相談ください。
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